「切り札理論」の最大で典型的なものは、共産主義思想です。マルクスが生きた時代は、イギリスで産業革命が起こり、資本主義社会が成立をする頃です。「海」(資本主義国)があるので、「湖」(社会主義国)もあると考えたのでしょう。そこから演繹法的に遡って革命理論を作ったのだと思われます。
革命の対象となる社会は、封建的な階級社会に限られています。階級的な対立が矛盾を呼び、前衛によって指導された大衆が、新しい社会建設に向けて立ち上がることになります。矛盾があれば、次の段階にアウフヘーベン(止揚)できるというヘーゲル弁証法を使うことができます。ヘーゲル哲学の権威を借りながら、それを利用しています。
ただ、革命の前提は階級社会であるということ。となれば、その社会は封建社会でなければなりません。ロシアで世界最初の社会主義革命が起きたのは、ある意味で必然的であったと言えるでしょう。
マルクスは資本主義が発展すればするほど階級的矛盾が激化すると考えました。だから、革命が起きるとすればイギリスからと予言していたのですが、当たりませんでした。
彼が生きた時代のイギリスは、封建領主の没落、産業資本家層の勃興、都市化の進展に伴う賃金労働者層の増大という社会状況が現在進行形で起きていた時代です。市民革命があったので、階級があるはずがないのですが、階層を階級と認識してしまったのでしょう。そのような読み間違えのため、予言が外れたと思われます。マルクスの革命理論は、階級社会であるという前提の限定理論だったのです。言葉を変えると、賞味期限付きだったということです。
先に、資本主義社会を海に例えたのは、海には波がつきものだということを言いたいがためです。つまり、波ができる社会は正常というメッセージをそこに込めています。脈や脳波は波があります。波がなく、フラットになるということは、生命体の死を意味しています。
社会主義・共産主義の発想は、その波を人工的に抑えるという発想です。本当にコントロールできるならば、国家社会主義ということも有り得ると思っていますが、不可能だと思います。理由は簡単です。規模が余りにも大きくなり過ぎているからです。その経済規模の大きさを理解してもらうために数字を出します。アメリカの代表的なハイテク上位5社の株式の総額は今や5兆ドルに達しています。ピンと来ないかもしれませんが、日本の上場会社が発行した株式の総額の8割位の金額になっています。
自然の波や津波を抑えることができないように、人の欲望と物流が起こす経済の波をコントロールすることはもう不可能です。仮にコントロールできた時は、経済活動の死を意味します。死人に口なし、死人に脈なしですが、それでは意味がありません。そのような死に絶えた社会を目標にすることは出来ません。
搾取という言葉を共産党は綱領で使っていますが、この言葉は現代社会では死語です。ロシアの農奴制社会においては、搾取という言葉がまさにぴったり当てはまります。搾取の意味は、不当に絞り取られるという意味だからです。
ただ現代の企業などの組織体で働いている労働者に対して、搾取という表現は当てはまりません。働く中で様々な経験をし、人と関わる中で、自己の能力を高めることができます。時には、経営者と協力して会社の発展のためにその能力を生かすこともあるでしょう。会社の発展は、自身の生活の安定につながることもありますし、中にはそれを生きがいと感じる人もあるでしょう。そのことを、搾取とは言いません。働く人たちの意識や感覚と離れた言葉になっています。
かつてジョンソン大統領顧問をつとめたこともある政治学者のブレジンスキー(1928~2017)は「(共産主義は)20世紀のもっとも異常な政治・思想上の脱線現象として記憶されるにすぎないだろう」という言葉を残しています。
日本共産党の本音がズバリ書かれたポスターがネット社会で流れています。ブログで紹介されているのですが、そのポスターを見て欲しいと思います。
(ブログ:日本よ、侍国家たれ。様より URL:http://hs34728.hatenablog.com/entry/2016/07/24/001927)
見事に、日本共産党の本音が書かれています。彼らは潜在的改憲論者なので、政権を掌握すれば「共和国憲法」を制定して、一党独裁体制を行うでしょう。そして、その際に天皇制を廃止するというのが彼らのシナリオです。
共産主義者は革命至上主義の考え方をもっています。つまり、革命のためならば、多少の嘘、偽りは許されると考えるので、国民世論を考えて時には本音を隠して有権者にとって耳触りのよいことを言います。このような「共産主義、共産党を考え、批判することは、日本の民主主義を考え、高めることなのです」(『日本共産党の正体』)と福冨健一氏は言います。
ただ、もう多くの国民に見透かされているので、上のポスターに書かれている自分たちの主張を堂々と有権者に示して、選挙戦を戦うことをお勧めします。
読んで頂きありがとうございました