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変革の時代のモノの見方と考え方 ―—ノーベル賞受賞者(江崎玲於奈氏)から学ぶ / 個人の創造性を伸ばすには ?

「一昨日の日曜日に高円寺(北口)の古本市に行ってきました。どれも1冊100円ということで大勢の客で賑わっていました」

女性

「何か掘り出し物がありましたか?」

「収穫はありました。41冊買い込みました」

女性

「そんなに買ったのですか!  持ち運ぶのに大変だったでしょ?」

「車で行きましたので、大丈夫でしたよ」

女性

「私は古本をブックオフで買ったことがありますが、厳密に言うと新古本を扱っているお店ですよね」

「線が引いてある、本が少し汚れている、日焼けがあるというだけで買取りを拒否されますからね」

女性

「かなり買い叩かれるというイメージが強いのですが……」

「向こうも商売ですからね、仕方がないと思います。殆ど新品の本をお値打ちで手に入る店というコンセプトで運営されていると思います」

女性

「昨日の古本市は本当の古本なんですね」

「そうですね、ここ10年位の間に出た本は、私が見た限りなかったですね」

女性

「素朴な疑問ですが、20年、30年前の本でも読む価値があるのですか?」

「本によりますけど、生命力のある本をいかに見分けるか、ある程度の眼力が必要だと思います」

女性

「それでは今日はその中の1冊ということで紹介をして下さい。ここからが本論です ↓ 表紙写真は「コカネット」提供です」

 ノーベル賞を受賞した江崎氏の著書―— 『創造力の育て方・鍛え方』

江崎玲於奈(れおな)氏の『創造力の育て方・鍛え方』(講談社、1997)を紹介します。江崎玲於奈氏はご承知の通り、トンネルダイオードを発明・発見した功績によって1973年ノーベル物理学賞を受賞された方です。この本が出版された時は、筑波大学の学長の職にあり、1997年の2月に出版され、8月には6刷なので、当時はそれなりに話題になった本だと思います。

彼は1925(大正14)年生まれですが、当時としては珍しい名前だったと思います。その当時は一郎、義夫というように数字を付けるか、「夫」、「郎」、「男」を付けるのが定番だったからです。大正デモクラシーの時代、世界に通じる人間になるようにとの願いが込められてのネーミングだったそうです。

小学校ではトップの成績だったそうですが、京都府立一中は不合格だったそうです。当時は軍事色が強まる時代、ひ弱な感じの体格と吃音癖のため、口頭試験ではねられてしまったと書かれています。挫折を味わった後、1年浪人して同志社から東大、そして企業で研究に従事し、その後1960年に渡米、ニューヨークのIBM中央研究所に勤務している時にノーベル賞を受賞しています。

(「Computer Science Agency」)

 変革の時代のモノの見方と考え方

現代は激しい変革の時代にあることは間違いありません。21世紀のそのような時代を予見して、江崎氏はどのような考え方で過ごすことが大事かを述べています。

まず、大切なことは、現在の延長で将来を考えないと言っています――「変革の時代には今までにない革新的なものが誕生し、それによって将来は創られるということを知らねばなりません」(同上)。そのことを彼は自身の研究から導き出しています。現在の産業のコメは半導体ですが、かつては真空管でした。真空管が電気通信事業の発展を促したのですが、時代の流れの中で、今度はそれが発展を阻害する側にまわってしまったのです。

真空管に代わって出てきたのがトランジスターですが、真空管にこだわっていたならば、新たな飛躍は生まれなかったのです。一つの成功体験にこだわり過ぎて、次の新らしきものにチャレンジしようとしない傾向が日本人には強くあります。これは日本人の元来持っている農耕民族のDNAのなせる業だと思っています。向坂隆氏(東大学長)との対談の中で「日本人の子どもは教師の言うことを素直によく聞いてよく勉強する点では第1位だけれども、何をやってもよいといわれると戸惑ってしまう」とアメリカ人教師のコメントを紹介しています。「定点」で活動するというのが、日本人の特徴なのです。それが良い方向で作用する場合もありますし、別の方向に作用することがあります。要は、自分たちの特徴を自ら知るということです。

(「You Tube」)

 個人の創造性を伸ばすためのシステムを作ることが重要

日本の年間研究費が少なく、そのために成果が出ないという話が出ています。7月1日の『朝日』の報道によりますと、「日本の科学研究力の低下に歯止めをかけようと、国の科学研究費助成事業を現状の2倍に増額」するために関連学会が働きかけをするとのことです。研究費と成果は正比例しないというのが江崎氏の見解です。データを調べてみました。2019-21年の「国別の注目度の高い論文数順位」、日本は13位です。トップは中国、2位はアメリカ、3位はイギリスですが、イギリスの年間研究費は約6兆円しかありません(下のグラフ参照)。日本は約15兆円です。これを見ると、確かに研究費に比例して研究成果が上がる訳ではないことが分かります。最近では、イランに抜かれています。根本的な原因があるのです。

研究費と成果について、普通に考えれば分かります。研究費を増やせば、それに比例して国の創造力が増し、研究成果が生まれる。そんなことがあり得るはずがありません。個人の創造性を伸ばすことを考えなければ、研究成果が生まれないと言います。アインシュタインが相対性理論を発表した時は、特許局の職員です。自室のアパートの机の上で理論を組み立てたのです。研究費は殆どゼロです。どうすればそのような創造性を伸ばすことができるのか

日本の社会全体、学校教育のシステムを変える必要があると江崎氏は言います。日本の社会は現在も形式的平等が蔓延る社会です。そのため、才能ある者が日の目を見ない社会になっています。個人の能力を正しく評価し、才能ある人材を発掘するシステムをつくる必要がある。そのためには、「初等・中等の英才教育も必要でしょうし、大学も改革せねばならない」(江崎玲於奈『創造力の育て方・鍛え方』)と言っています。

彼が日本の大学で問題だと言っているのは、文系、理系の区分けです。このブログでも話題にしましたが、文系、理系の「区分け教育」は戦前の名残りですが、大学の4年間は自然科学、社会科学の区分けをせずに広く学ばせて、その中で自分の興味・関心がどこにあるのかを見つめさせ、大学院で専門の研究をさせれば良いと彼は言うのです。

(「科学技術指標2023・html版/科学技術・学術政策研究所(NISTEP)」)

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