「バイデン氏が正式にアメリカ大統領に就任しましたが、どのように見ておられますか」
「共和党政権から、民主党政権に変わったわけですが、根本的な政策の部分において大きな変更は今のところないようなので、少しホッとしています」
「心配していたのですね?」
「特に中国政策を気にしていました。トランプ氏と違って、柔軟な姿勢に転化してしまうのではないかと思っていましたが、ここまでのところは、そういう兆しはありません」
「バイデン親子と中国との関係が噂になっていましたからね」
「よく、ご存じで……。ただ、バイデン氏より息子のハンター氏の疑惑ですよね」
「聞いた感じでは、息子はクロで、バイデン氏は灰色かなというのが私の印象です」
「まあ、その辺りを議論しても余り意味がないので、戦略的な話題に移りたいと思いますが、よくいろいろなことを知っていますね」
「今は、コロナで巣ごもりの時間が長いでしょ。だから、SNSを通して様々な情報を手に入れています。菅総理と電話会談をして、「ヨシ」、「ジョー」と呼び合うようになったことも知っています」
「ただ、それは彼らにしてみれば普通の感覚なので、余り取り上げる価値はありません。そんなことより、電話会談の相手として何番目に選ばれてかが重要なのです」
「隣国カナダに次いで2番目です」
「日本人はその順位を聞いただけで喜ぶところがありますが、心配で仕方がないというという意味もそこにあるのかもしれないのですよ」
「尖閣も安保の適用があるということで、一安心ですね」
「そこで安心しないで、尖閣を実効支配することを考えなければいけないのです。言質をアメリカからとって、日本が動かないのを見て、向こうは必ず動こうとします。実効支配されたら、ほぼ終わります。アメリカ軍といえども容易に手出しができなくなります」
「ここからが本論です ↓」
習近平国家主席、ダボス会議で言いたい放題
習近平主席は今年の1月25日、オンライン上で開かれたダボス会議で演説しました。習氏はそこで「世界は4つの課題に直面している」として、次のように述べています。
第1はマクロ経済政策を調整し、世界経済の強力でバランスのとれた包括的な成長を目指す。…第2はイデオロギー的な先入観を捨て、平和共存、互恵、ウインウインの協力の道を歩む。…第3は先進国と途上国の格差を解消し、すべての国に成長と繁栄をもたらす。…そして、第4に地球規模の課題に取り組み、人類のより良い未来をともに作ること、というものです
第1は別にして、第2から第4までは、耳を疑うような内容と思った方も多いと思いますが、それは「日本人の耳」で聞いているからです。中には、その詳細を取り上げて一つひとつ批判をしている方もいますが、無駄な努力だと思います。
日本の戦後外交、特に近隣諸国との外交がことごとく失敗しているのは何故かと言うと、まともに聞くからです。彼らは、言葉を一つの武器として考えています。つまり、本当のことを言うつもりは全くなく、その時点で一番有効的な言葉を選んで使っているだけです。
そもそも、日本人と中国人は育てられ方が違います。近年、道徳心・公共心が薄らいできたと言っても、一応日本人は「他人にウソをついてはいけない」「正直でなければいけない」と教えられます。
中国から日本に帰化した石平氏は、「私は子供時代に外でウソをついたら駄目だよと教えられた記憶がありません。むしろ、外で本当のことを言ったら駄目だよと言われた」(『 WILL 9月号別冊』2020.9.3)と告白しています。
だから、「中国フィルター」を使って習近平主席の言ったことを読み替えれば、すべて納得できると思います。
ダボス会議とは、スイス・ジュネーブに本拠を置く非営利財団、世界経済フォーラムが1971年以来、毎年1月にスイス東部の保養地ダボスで開催する年次総会です。会議には毎年、世界を代表する政治家や実業家が一堂に会し、世界経済や環境問題など幅広いテーマで討議しますので、それなりに各界から注目され、世界に強い影響力を持った会議なのです。
中国のことを発信するには、もってこいの会議だと思ったでしょう。本当のことを言おうとは思っていません。中国はいかに鷹揚な国であるかということをアピールして、中国に投資をしようと考える企業が増えたら儲けもの程度の認識だと思います。
中国の本音は、行動や個別的な案件の時に表れる
全体が集まった会議で本音など言うはずがありません。そこでは、当面の政敵を意識して、同調者を増やすような話をします――「私たちは閉鎖性や排他性ではなく、開放性と包摂性にコミットすべきだ。小さなサークルを作ったり、新たな冷戦を始めたり、他者を拒否し、脅して威嚇する、分断(デカップリング)を強制したり、供給を途絶する、制裁を課す、孤立と疎外を創るのは、世界に分断と対立をもたらすだけだ……」。アメリカを意識しながら、巧みに批判をしています。まさに、モノは言いようという感じです。
攻撃は最大の防御です。悪いのは、とにかくアメリカと言っておけば、それを聞いた人の中には、中国は良いことを行おうとしているのだと思ってくれる人が出てくるかもしれません。日本外交はすぐに言い負けて謝ってしまいますが、謝ってしまったら、日本悪い国というレッテルが世界中で一人歩きをすることになります。
大陸の人たちは、言葉のもつ怖さを肌てせ感じているのでしょう。本音で言っているのではなく、この言葉につられて中国の陣営の軍門に入ってくれる国や団体がいれば良いと思っているだけです。
全体には、耳障りの良い話をしておいて、日本、インド、フィリピン、オーストラリア、ベトナムといった周辺諸国に対しては、個別的に厳しく対応するのです。
尖閣諸島の実効支配を急ぐ必要あり
日本に対しては、尖閣諸島への連日連夜に及ぶ恒常的な領海侵犯を含む出没があります。その日本と同じように、島の領有権を主張し、それを認めないフィリピンに対して様々なプレッシャーを掛けています。尖閣を実効支配された場合の日本の姿が、現在のフィリピンの姿になるでしょう。もう、そうなったら、主席の来日や外相の来日はありません。日本に用無しと思うからです。
舞台になっているのは、南シナ海の中沙諸島の一部とされるスカボロー礁です。海底の山が水面に露出した形となっていて、中国側では黄岩島と呼んでいる島です。フィリピンと中国は台湾(中華民国)もからんで、長年、このスカボロー礁の領有権を争ってきました。
(提供 毎日新聞)
中国側はこの海域に「海南省三沙市」の設立を一方的に宣言し、フィリピンに対して軍事行動の構えを見せたのです。そして現在では、中国がスカボロー礁一帯を軍事制圧した形となっているのです。このためフィリピン政府は2013年1月、紛争解決への裁定を国際海洋法裁判所に仰ぐ措置を正式に取ったのですが、それ以来、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議や東アジア首脳会議(EAS)では、中国はフィリピン孤立化戦術を進めているのです。
王毅外相は東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟の各国を何度も歴訪したのですが、フィリピンだけは訪れていません。東南アジア諸国からフィリピンを離反させるという露骨な戦術なのです。
もともと中華思想がある国が、共産主義によって理論的武装をしてしまった。その国を「暴れん坊将軍」にしたのは、アメリカです。そして、その将軍に栄養を与え続けたのが日本です。育ててみたら手に負えなくなったので、アメリカはこれを抑えにかかっているのですが、日本はいまだに踏ん切りがつかずに、迷っているというのが今の姿なのです。
(アンサイクロペディア com)
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