「日本経済新聞の本社コメンテーターの秋田浩之氏が『世界秩序の変化に、日本は最も鈍い主要国の1つだろう』(『日経』2022.6.28日付)と言っています。全く同感です」
「その方は、その原因はどこにあると言っておられますか?」
「侵略されたら米国に守ってもらえるという、際だった『特権』に包まれているからと理由を述べておられます」
「要するに、変化に敏感にならなくても平穏な生活が維持できると思っているからでしょうね」
「もともと農耕民族のDNAを受け継いでいますので、狩猟民族よりもその辺りの変化については鈍感だと思います」
「農耕をする上で気温や水量など様々なことに敏感にならなければいけないのではないでしょうか。自然に対する感じ方は、日本人は鋭敏なものがあると思っています」
「それは自然に対する感覚ですよね。私が問題にしているのは、変化する国際社会の中で、どう対応していくのかという適応力です」
「島国で育っているので、その辺りのハンデがあるかもしれませんよね」
「確かに、それはあるでしょう。地域の人たちとの交流さえ上手く出来れば、生活できるような環境ですからね」
「大陸の人たちは、そういう訳にはいかなかったでしょうからね」
「DNAで受け継いだものはともかくとして、今後は、国際社会の変化に鋭敏になる必要があるでしょうね」
「これからは変化の激しい国際社会になるからですか?」
「それもありますし、日本は地政学上かなり難しいところに位置した国になってきたからです。これまでのように、アメリカとの同盟を堅持さえしていれば何とかなるという時代ではなくなりつつあります」
「中国やロシアとの関係ですよね」
「そこに北朝鮮、韓国との外交問題が絡みます」
「ここからが本論です ↓」
世界は2極に分かれ始めている
文明が高度化されれば、それに比例して変化も激しくなります。そして、その変化の中心地が変わることは当然あります。今まで無風地帯であったところが、紛争の中心地になるということも出てきます。
ある一人の人間の野望が、ウクライナからフィンランドを縦に繋ぐラインをロシアとEU・ヨーロッパ諸国との緊張ラインに作り変えてしまいました。
そして、それと同時に世界の国々が表面的に三つに割れてしまいました。1つは、ロシア、中国といった独裁国家グループ、もう一つは西側の民主主義国グループ、そしてその両者の間に入って態度を決めかねているグループです。
最後のグループは特に主義主張がある訳ではなく、国益を重んじる立場からどちらに付こうか、あるいは中立的な立場を貫くのかなど、態度を決めかねている国々です。ですから、これからの世界は2極に分かれて推移していくことになると思います。
(「学研キッズネット」)
盟主国の弱体が世界の騒乱を生み出す
このような状況になった直接の原因は、アメリカの絶対的な力が弱まったからです。冷戦終結となりグローバル時代と呼ばれる時代に入ります。グローバル時代というのは、言葉を変えれば、パックスアメリカーナ(アメリカによる平和)の時代です。世界の多くの人々は、世界平和の夢がいよいよ現実になると思った一瞬だったのです。
ところが、落とし穴がいくつかありました。一つは、ロシアです。社会主義国ソ連が崩壊して、新政ロシアとなり、民主的な選挙によって大統領が選ばれるような国としてスタートを切ったので、ともに平和を語る仲間の国として歩んでくれるとどの国も思ったことでしょう。
完全にプーチンに裏切られました。ロシアがウクライナを攻める意味は何もありません。単なる破壊・殺戮行為です。
もう一つは、中国です。ここは完全な独裁国家です。ただ、この国を目覚めさせたのがアメリカです。日本は、そのアシストをしたのです。
米ソ冷戦を有利に進めるためニクソン大統領が中国に行き、当時の指導者の毛沢東と握手をしたのです。米中関係は対立から和解に一挙に変わった瞬間だったのです。そのことについては、日本にも知らされておらず、余りにも衝撃的だったので「ニクソン・ショック」と呼ばれるようになったのです。
(「Down load million images for free」)
フランケンシュタインを蘇らせたのは米日
日本は後を追うように、中国と日中平和友好条約(1978)を結びます。その頃の日本は、高度経済成長が終わり、円高不況という言葉が生まれた時代です。日本は加工貿易国、つまり輸出立国として高度成長を成し遂げた国なので、当時の円高は完全な「逆風」だったのです。
そこに中国との国交回復が飛び込んできたのです。日本の企業は渡りに船とばかりに中国に経済進出をしたのです。中国には、安上がりの労働力が豊富にありますし、10数億人の市場もあります。現地で生産したものを現地で売っても良いし、日本に逆輸入しても利益を得ることができます。猫も杓子もという感じで企業は競うように中国へ進出したのです。
ただ日本企業の収益が上がれば上がる程、中国政府にお金が転がり込むことになります。結局、それが中国の経済力と軍事力を強くして、回り回ってアメリカや日本が苦しめられているという皮肉な巡り合わせになっているのです。
ニクソン大統領は中国との国交手続きが一段落した後、周りの人にポツンと「私はフランケンシュタインを蘇らせたのかもしれない」と言ったそうです。まさに、そのつぶやきの通りのことが現代において起こっているということです。
その現代のフランケンシュタインの行状については、次回にまわしたいと思います。
(「ダ・ビンチ」)
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