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シリアのアサド政権が崩壊 ―— 要衝にあるシリアにロシアが介入 / 「安保に地理的概念はない」―—「飛び火」に注意

「中東シリアのアサド独裁政権が崩壊しましたね」

女性

「長期政権だったと聞きましたけど……」

「アサド大統領の父親が空軍司令官だったのですが、1970年にクーデターで政権を手に入れます」

女性

「その政権を息子が引き継いだのですね」

「親子2代にわたる統治が54年間続いたことになります」

女性

「そのことが日本にどのような影響を与えると思いますか?」

「日本には直接影響はありませんが、ロシアが一番影響を受けると思います。ウクライナ戦争にも影響を与えると思います」

女性

「そうなんですね。ただ、実は私はシリアがどこにあるかということさえ分かっていません」

「下に地図を出しておきましたので、確認して下さい」

女性

「ありがとうございます。地中海の奥のところに位置しているのですね」

「周辺国を見ると、イスラエル、レバノン、トルコ、イラクですからね。要衝の地にあることが分かります」

女性

「イスラム国家ですよね」

「イスラム教には様々な分派グループがあります。クルド人グループもあり、それぞれ対立し合っているような状況です。シリアはそれらが原因で、ずっと内戦続きでした」

女性

「ここからが、本論です ↓ 表紙写真は「You Tube/日テレNEWS」です」

 力のバランスが崩れ、一挙に政権崩壊に

国際社会は一種の緊張関係、言葉を換えればパワーバランスの上に成り立っています。そのバランスが崩れた時、一気に事態が進展するということが現実に起きましたシリアのアレッポが陥落したのが今年の1月です。アレッポには、アサド大統領の宮殿があり北部にあるシリア第二の都市です。日本で言えば、大阪のようなものです。そこから南進を続け、1年足らずで首都ダマスカスが陥落。アサド大統領は親族全員を連れてロシアに亡命、政権は簡単に崩壊してしまいました。

シリアは東半分がイスラム過激派(HTS)、西半分が政府軍の支配下にあり、中央地域に過激派組織「イスラム国」(IS)の拠点がいくつか点在し、さらにクルド人勢力が存在するという状態でした。2016年にロシアとトルコが間に入って停戦合意となったのですが、その前年にHTSはロシアの激しい空爆にさらされ、軍事的安定・政治的安定を築いた上での合意でした。そして、その状態を維持するために、ロシアとイランがアサド政権を支援したのです。

ロシアはウクライナに対する侵略戦争で多大な損害と被害を被っているようで、シリア政府を守る軍事的な余力がなかったということです。イランはイスラエルに敵対するパレスチナの「ハマス」やレバノンのシーア派組織「ヒズボラ」に対して軍事的な支援をしてきましたが、両組織はイスラエルの攻撃もあり、かなりの痛手を被った模様です。イランもシリアを支援する余裕はなかったということです。その結果、力のバランスが崩れ、一挙に政権崩壊に向かったのです。

(「Yahoo!ニュース-Yahoo! JAPAN」)

 要衝にあるシリアにロシアが介入

ロシアがシリア内戦に介入した上で支援をしてきたのは、シリアが要衝にあるからです。アラビア半島の入り口にあたる場所にあり、地中海に面しています。サウジアラビアなどアラブ諸国から見れば、ヨーロッパに向かう途中に位置する格好になっています。彼らからすれば、「邪魔」なところにある国です。シリアは中東にもヨーロッパにも睨みがきく場所にあります。ロシアは地政学上重要な場所にあるシリアと「関係」を持ちたいため、内戦を利用して近づいたのです。

シリアのアサド大統領にとって、ロシアは窮地を助けてくれた恩人です。さらに後ろ盾になってくれると言う。その見返りとしてシリア国内で海軍と空軍の基地を49年間租借することで合意をします。現在、ロシアはラタキアに空軍基地、タレトスに海軍基地を有しています。両基地とも地中海に面していますので、ちょうどEU諸国を睨むようなかたちになっています

ロシアとシリアは最短距離でも700km以上離れています。隣国のトルコが介入するのとは訳が違います。特に介入しなくても、自国にとって殆んど影響がありません。半ば強引に介入したのは、2014年のクリミア半島併合があったためです。黒海と地中海は繋がっていますので、地中海のクリミア半島を安定的に支配する上でシリアの2つの基地を租借できたのは、大きな意味があったのです。

(「東京大学」)

 「安保に地理的概念はない」―—「飛び火」に注意

問題なのは、今後の展開です。シリアの政権がどうなるかです。長年独裁政権に苦しんできた国なので、今までよりは、ましな政府が誕生するとは思います。それを察して、難を逃れるために周辺諸国で難民として暮らしていた人たちが、シリアに帰り始めているそうです。新しく誕生する政府は反ロシアであり、反イランであることは明らかです。ロシアがシリア内に有している2つの基地を失うことになるのは確実だと思います。

地中海の拠点を失い、クリミア半島も安泰とは言えない状況下で、ロシアのプーチンは次の手をどう打つかです。「安保に地理的概念はない」と言われています。つまり、中東でのバランスの崩れが、極東地域に出てくることもあるということです。現に、北朝鮮は自国の武器と兵士をウクライナに供与しています。その逆があってもおかしくないということです。ましてや韓国が大統領が戒厳令を誤って布告をしたため、国が混乱しかかっています。混乱に乗じて親北勢力が動くかもしれません。

というように、世界情勢はジグゾーパズルのように国境を越えて動きます。そして、飛び火が国内に転火すると、そこからドミノ現象のように燃え広がります。シリアのことは遠く離れた中東で起きた日本に関係のない出来事ではなく、その火種が日本周辺に飛んでくる可能性もある事案として注視する必要があるのです

(「日本経済新聞」)

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