「国連総会の一般討論演説が9月末に行われ、米中首脳がそれぞれ演説を行いました」
「およそ、1週間前ですよね。米中でやり合ったという報道があったということは知っています」
「やり合ったというか、お互いの主張をぶつけたということです。ビデオ演説ということもあり、お互い言いっ放しで議論がかみ合っていません」
「ああ言えば、こういうみたいな内容になっているということですか」
「習近平主席の発言内容は詭弁のオンパレード状態です」
「それは例えば、彼のどのような発言について、そう思ったのですか」
「驚いた言葉は、「中国は一貫して多国間主義の実践者」、「国際法を基盤とする国際秩序を守る」です」
「多国間という言葉は、明らかにトランプ大統領の「米国第一(アメリカンファースト)を意識していますよね」
「その辺りが上手いところだと思います。普通に聞いていると、トランプ大統領が自国のことしか考えておらず、習近平主席は多くの国のことを考えているかのように思えてしまいます」
「共産主義者は、本当に感心する位、弁が立ちますよね」
「古代ギリシアの哲人、ソクラテスが最も嫌った弁論術ですね。対話には2種類あると。私たちの対話は一つの真理に向かって話を進めようとしているのですが、彼らの話は相手をやり込めるための戦術になっています」
「要するに、これを延々と繰り返したとしても、何も明らかにならないのですね」
「もともと、そういう考えがありませんので、時間の無駄というやつです」
「じゃあ、何の意義もなかった国連演説ということですか?」
「いや、そうは言いません。世界は中国という国を、平気でウソをつく国だと改めて認識できたと思います」
「ここからが本論です ↓」
21世紀の不安定で流動的な時代を生きる
「すべてのものが流動的であって、不安定」というのがウィリアム・ドラッカー(1909-2005)の時代認識です。不安定だからこそ面白いということがあるかもしれません。流れが速いので、この早い流れについていくために、普段から頭を慣らしておく必要があります。常識が非常識に、逆に非常識が常識になるかもしれません。国際法の常識である「属地主義」が、もしかしたら米中の2大勢力の伸長の中で、変更になるかもしれません。
属地主義というのは法が適用される範囲に関する原則を謳った考え方ですが、国には主権がありますので、その人の国籍や人種といったことは一切関係なく、その人が生活しているもしくは滞在していた国の法が適用されるという考え方です。そんなのは当たり前と言われそうですが、当たり前ではないような事態が起きる可能性が出てきたのです。
中国が今年の6月に「香港国家安全維持法」を制定しました。国家安全維持法の第38条は次のように規定しています。「香港特別行政区に永住権を有しておらず、香港特別行政区外の者が香港特別行政区に対して罪を犯した者も、本法律に基づいて処罰される」。
つまり、日本人が日本で香港の国家安全維持法に違反したようなことがあった場合、例えば「香港は独立すべき」といった言動をした、もしくは中国共産党の批判や害するような言動をした場合は、その人が香港の管轄権に入った時に、同法違反ということで逮捕される場合があるということです。これを国内法の域外適用と言います。
属地主義ではなく、大国主義の時代になる可能性もある
実は、属地主義というのは、国家対等(平等)の原則から導き出される国際法の原則であり、人権配慮という面から見ても、合理的な考え方なのです。つまり、その人が関わっている地域または国の法の体系を知った上で行動すれば良いからです。
ところが、法の適用が国境を越えて、その人に対して行われれば、場合によっては防ぎようがありませんし、いくらでも悪用が可能です。
例えば、罰したい人間をあらかじめピンポイントで定めておいて、身辺調査をして、データを集め、ある程度揃ったところで誘い出して身体拘束をして、あとは適当な罪名を覆いかぶせて社会的に抹殺すれば良いのです。
日本は危機感が薄いのですが、ヨーロッパやアメリカの大学では、中国の脅威を感じ、対策を具体的に始めているところがあります。中国からの留学生に対して、彼らの身を護るために匿名での課題提出、課題発表をするようにし始めているとのことです。そうしなければ、不用意に発言したり書いたりしたことが中国共産党の当局に知られることとなり、帰国した途端に罰せられるということがあるかもしれないからです。
日本の中国の研究者が、中国本土に足を踏み入れた瞬間に、当局に身柄を拘束され、知らないうちに裁判にかけられたというケースが数件報告されています。充分に気を付けて下さい。
「国際的拉致警察」(仮称)というのが、全世界の治安を担うことになるかもしれない
本当に危ないと感じたならば、今は中国に行かなければ良いのです。しかし、このまま中国が経済的にも、軍事的にも、科学技術の上でも世界をリードし始めた場合は、中国の警察もしくは軍隊が国境を越えて、当該の人物を捕らえにくるようになるかもしれません。
簡単に言えば、合法的拉致ということです。白昼堂々と連れていかれ、中国の法に則って裁かれ、中国の刑務所に服役することになります。
先日、米ワシントン大の研究者たちが80年後の世界についての予測を発表しました。それによると、2100年に中国はインドに抜かれるようですが、その間はアメリカと中国は1位、2位争いをして、途中で中国が1位になる時代もあるそうです。
今から3年前、習近平主席はトランプ大統領に、太平洋をアメリカと中国で2つに分けて統治をすることを提案しました。2つの大国による世界の分割支配、もしかしたらあるかもしれません。安心材料としては、アメリカが現在それを望んでいないということです。
ただ、アメリカ自身もこのままでは、経済的にも軍事的にも、科学技術の面においても中国に抜かれてしまうのではないかという危機感を今はもっています。AI(人工知能)、量子コンピューターや5Gといった分野で中国は世界をリードしようとしています。アメリカがそれをさせないように、サプライチェーンの寸断を今図っているところです。上手くいかなかった場合は、中国共産党による世界支配ということもあり得ます。
世界中に張り巡らされた監視カメラとインターネット網やアプリを通して得られる情報、世界中のすべての人が監視下に置かれる世界が実現するかもしれません。実は、理論的にも技術的にも可能なのです。巨大な大国のもとに世界は支配されますので、犯罪や戦争は確実に少なくなるでしょう。しかし、思想信条の自由と表現の自由はなくなるでしょう。居住、移転の自由がなくなるかもしれません。人々はロボットのような生活を強いられるかもしれません。簡単に言えば、中世の絶対王政の世界版です。それが、共産社会であり、地上の楽園だと信じ込まされ、奴隷のように生きることになるのかもしれません。
読んでいただき、ありがとうございました。
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