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「学歴社会」終焉の時代――「ブランド」に頼る時代は終わる / 新しい大学の在り方を模索する時代

  • 2021年1月2日
  • 2021年1月3日
  • 教育論
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女性

「年が明けて、大学入試シーズンになりました。高校2年生の私のいとこですが、進路が定まらず少し困っていると年末に相談を受けたのですが、話を聞いてもらえますか」

「まあ、よくある悩みです。私の経験から言うと、結構真面目な女子学生に多い悩みです」

女性

「実は、そうなんです。一応、文系ということだけ決まっているのですが、そこから先が何も決まっていないと言っているのです」

「なして、その理由は?」

女性

「急に方言使わないで下さい。彼女が言うには、法学、経済学、文学など様々な学部に興味があり、志望学部も定まらず、志望校も決まっていません、というものです」

「将来の進路は、どんなことを考えているのですか?」

女性

「公務員になるのもいいし、一般企業に就職するのもいいなと言っています」

「要するに、何も決まっていないということですね」

女性

「まあ、あと1年くらいありますので、オープンキャンパスに行ったりして決めればよいと思いますが、彼女の性格からすると何か心配で、つい話題にしました」

「志望校が決まらない生徒のパターンとして大きく分けて2通りあります。何をやって良いか分からないというタイプと好奇心旺盛で何事にも意欲的で何でも学びたいというタイプです。彼女は後者のタイプですね」

女性

「そういう意味では、見込みがあるということですね」

「まあ、そうですが、大学は基本的には、学問・研究をするところですからね。単位をとって就職するところではありません」

女性

「学問にも、就職にも関心があるみたいなのです」

「その2つは両立しませんので、決める必要があるでしょうね。ただ、意欲があるということは大事なことなので、その気持ちを忘れずに前に進んで欲しいと思います」

女性

「そうですね、ありがとうございます」

「とにかく自分の興味・関心がどこにあるのか、それを探すということだと思います。ただ、志望する学部によって受験科目や配点が変わってくるので、早めに決めた方が有利でしょうね」

女性

「それも含めて本人に伝えます。ここからが本論です ↓」

 「学歴社会」終焉の時代

21世紀は今まで以上に競争が激しくなります。これまでは有名ブランド大学に入学して、その名前で1部上場企業に就職して、定年まで勤めて年金生活に入るという「お決まりコース」みたいなものがありましたが、これからは確実になくなります。大学入学はあくまでも出発点という認識が定着していくでしょう。

東大では長年、合格の際の名物の胴上げが行われていました。しばしばニュースでも取り上げられましたが、危ないという理由で中止となりましたが、本来はおかしな話です。東大であろうとどこであろうと、入学、あるいは入社からが重要なので、胴上げをしてしまったならば錯覚を植えつけることにもなりかねません。

プロ野球と同じです。プロ球団に指名され、入団したからといって将来が保障された訳ではありません。また、プロ球団は、その選手の出身校を見て入団させている訳ではありません。当たり前ですが、それと同じことが会社の就職においても起きるということです。

まず、企業が大学のブランドそのものを認めなくなると思います。大学の「優秀」という判断と、企業戦士として「優秀」とは、イコールではないからです。その動きはすでに始まっていて、トヨタは大学の推薦をやめることを決めました。トヨタ自動車は2020年11月20日に、総合職にあたる「事技職」社員の新卒採用のうち、技術系で大学・大学院からの推薦枠を廃止し、事務系と同じ自由応募に統一することを明らかにしたのです。2022年春以降に入社する学生が対象とのことです(「中日新聞」11.21日付配信ニュースより)。

こういった動きは、今後も広がるでしょう。さらに、4月一括採用ではなく、年に3回、4回というように途中採用が常態化してくると思います。ジョブ型雇用の広がりとともに、転職も今以上に出てくるでしょう。

 

 大学淘汰の時代に突入した

大学を設置する場合は、設置者は認可申請を文科省に出して、その認可を得ることになります。申請されると、「大学設置・学校法人審議会」で形式的な審査が行われます。形式的というのは、あらかじめ提示されている設置基準(カリキュラム、教員の組織、校地、校舎など)に基づいて審査されるということです。設置基準に合致している場合は許可されますので、結果的に多くの大学が乱立する状況が生まれました。

日本の大学の数は781大学で、その約8割が私大です。大学志望者数67.5万人、入学者数61.3万人で実質倍率が1.17倍、定員割れの大学が全体の約4割です。大学への助成金は、そういった人気のない大学も含めて支給されています。

ただ、義務教育でもない教育機関にまんべんなく補助金を支給するのは、いかがなものかと思います。さらに、少子化が分かっているのに、私立大学の定員がこの10年間で3.5万人増やしています。それを文科省が認めたということですが、そういった安易な措置が、大学の質的低下を招くことになっています。例えば、3年連続して定員割れをしたところには、補助金を支給しないといった厳しい措置も検討して欲しいと思います。そもそも、大学の運営費は、大学がそれぞれの工夫において調達する時代です。寄付金を募ることは前々から行っていたと思いますが、その他企業とタイアップする、市民向けの講座を用意する、社会人のための集中講義を用意する、大学の持っている施設を有効活用して何か事業を考えるなど、工夫をする時代だと思います。

 

 新しい大学の在り方を模索する時代

私立大学の中には、コロナを口実にしていまだに対面授業を実施していない大学もあるとのこと飲食業やサービス業とは違うので、原則的に大学は対面式の講義を工夫して行うべきです。クラスターが発生してしまったならば、その都度対応するということだと思います。コロナが心配で講義を休むのは学生の自由ですが、あくまでも選択権は学生側にあります。コロナがある限り講義をしないと言っていたら、へたをすると、2、3年間対面式の講義が出来ないことになってしまいます。

日本の大学の問題点は、25歳以上の入学者が極端に少ないことですOECD(経済協力開発機構)の各国の平均は21.1%です入学者の5人に1人が25歳以上、つまり社会に出て自分自身の再教育のために大学に入り直しているのです。ちなみに、日本は2.0%です。再教育のための入学者は殆どいないと思いますこれからの時代は急速に技術や専門内容が先鋭化します。大学は一度卒業したら終わりではなく、再教育の場としての位置付けがこれからは出てくると思います。

日本の大学もそのような世界の流れに合わせて、カリキュラムの内容を含めて制度、機構を変えていく必要があると思われます。

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