「103万円の壁が、ウチの会社のパートさんの間で話題になっています」
「国民民主党はそれを公約にして大躍進しましたからね」
「玉木代表の不倫騒動もあって、さらにその問題が多くの人に認識されるようになったと思います」
「先日のニュースで103万円の壁があるため、11月、12月は人手不足になりがちという居酒屋の店主の話がありました」
「年末は居酒屋は売り上げが伸びる時期ですからね」
「人手が欲しいけれど、働き過ぎて多く給料を支払うと、税金が課せられて、負担が増えてしまうということです」
「何かおかしな話ですよね」
「あなたの会社の中では、そういうことは起きていないのですか?」
「月による業務の変動が少ないので、年末だからということでの人手不足はありません。年度の始めにパートのシフトを粗方組んでしまうのです」
「ただ、中にはもう少し働いても良いかなと思っている人はいるでしょうね」
「それはいると思います。最低賃金も上がりましたし、それに見合ったかたちで引き上げが必要だと思います」
「私もそう思います」
「ここからが本論です ↓ 表紙写真は「東京スター銀行」提供です」
「103万円の壁」の引き上げは経済効果をもたらす
現在話題になっている「103万円の壁」というのは、そこを超えると扶養控除がなくなるため、「壁」という表現をしているのです。2人の会話で話題になった学生やフリーターなど家族の扶養に入っている人が年間で103万円を超えた瞬間に親の扶養から離れます。家族構成によって払う税額は違いますが、仮に親の年収が250万~850万円の場合は税金が7~17万円増えます。
配偶者控除も原則的に103万円となっています。その範囲内なら納税義務は発生しません。ただ、配偶者の場合は、その金額を仮に超えたとしても、配偶者特別控除を150万円まで使うことが出来ます。特別控除は配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除ができます。
「103万円の壁」を実態に合わせて上げるとなると、場合によって配偶者特別控除を上げる必要があります。財務省の試算では年間7~8兆円の減収だそうです。ただ、それは所得税の減収の意味です。壁が取り払われることによって今まで以上に働く人が増え、絶対的な労働時間が増加しますので、法人税の増加が見込めます。減収分をカバ―出来るかどうかは定かではありませんが、7~8兆円が単純に減る訳ではありませんし、国民に広く減税効果が及ぶので経済循環に繋がると思います。
(「ユウクリ」)
35年間でわずか3万円の増額
選挙の大きな争点になる程に話題になった「103万円の壁」ですが、学生アルバイトが年末になって労働調整をしなければいけない位に、たやすく乗り越えられる額になっています。「壁」になっていない実態が出始めたということです。
実際に計算してみることにします。103÷12=約8万6千円です。それを最低賃金の1,100円で割ると80時間でオーバーします。週に5時間を4回でクリアーします。注意をしていないと、結構、簡単に乗り越えられる金額であることは確かです。実際に103万円を超えると本人に所得税がかかり、親の扶養控除が無くなるので、所得税が増えることになります。その一家にとって重大な問題です。
この103万円がいつから設定されたのかを調べてみました。1989年に100万円に設定され、1995年に103万円にしています。1989年から見ると、35年間でわずか3万円の増枠をしただけということが分かりました。物価上昇率や最低賃金の引き上げ額を考えれば、上げる時期に来ていることは確かでしょう。
(「PR TIMES」)
「103万円」以外にもいくつかの「壁」あり――すべて連動する
減収になるし、減収を埋め合わせする財源がないという理屈をかざして財務省は乗り気ではありません。控除額を変えるというのは、すべてのものに連動する一大作業です。事務量が増えるのが目に見えているからです。
「103万円」に注目が集まっていますが、その他の「壁」がいくつかあります。「106万円の壁」:社会保険に加入する義務が発生するラインです。「130万円の壁」:配偶者の社会保険の扶養にとどまれるかどうかのラインです。「150万円の壁」:配偶者特別控除が適用されるラインです。「201万円の壁」:これを超えると配偶者特別控除が適用されなくなるというラインです。
というように、多くの「壁」があり、「103万円」だけを引き上げれば良いという問題ではありません。ドミノ倒しのように、すべて連動して考える必要があるからです。国民民主は「103万円」を178万円にという公約を掲げていましたが、いきなりそこまでは無理だと思われます。本来は少なくとも10年単位で見直しをしてこなければいけなかったのに、35年間何もしてこなかったツケが今に至っています。178万円が実態に近い数字だとしても、現実には無理です。10~15万程度の引き上げが妥当なところだと思います。そして、これを機に、学生特別控除といったものを考えたらどうでしょうか。
(「三菱UFJ銀行」)
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