「ああ だから今夜だけは 君を抱いていたい 明日の今頃は僕は汽車の中…」。旅情を誘うようなフレーズで始まるこの歌は、1973年に発売されたフォークソンググループ、チューリップの「心の旅」である。(続きを聞きたい方は、YouTubeまで)。
先日、汽車の箇所を「新幹線」に替えてカラオケで字余りで歌ったところウケたのだが、飲み仲間の一人がその後私の所に来て「新幹線の走る姿を見ても感動しないですが、煙を吐きながら走るSLの姿を見ると、感動というか涙が出ますよ」と言った。
(中日新聞プラス)
成る程、そう言われればそうだ。実際に新幹線を待ち構えて写真を撮る人は余りいないと思うが、SLフアンという言葉があるように、その勇姿を撮るために全国から人が集まって来る。
そのように人を惹きつけるものは、一体何だろうか。
私なりに分析をすると、それは2つあり、1つは投影であろう。
日本人の多くは自己肯定感が低い。
新幹線に自己を投影する人は余りいないが、SLの蒸気を吐いて一生懸命走る姿に自分の生き方を重ね合わせて見る人が多いのではないだろうか。
(フォートラベル)
もう1つは、SLの車内空間で他者と共有した時間の長さであろう。
鈍行列車の旅の中で、車窓から眺める景色を楽しみながら、友と語り、友と笑い合った想い出がSLの車内に滲み込んでいるように思えるのだろう。
そのようなノスタルジアは、分からないでもない。
ただ、古いノスタルジアに留まっていたのでは進歩はない。
リニア新幹線の工事がすでに着工されている。
今こそ新幹線を20世紀のノスタルジアにするために、知恵を絞りだす時だと思う。
このままでは、今の「こだま」、「ひかり」、「のぞみ」は単なる歴史の通過点の車両名となってしまう。
(東洋経済オンライン)
新幹線の車内という空間を考えた場合、現在は余りにもインパクトがなさ過ぎる。
少なくとも富士山が見え始めた時には、気のきいた車内放送――「頭を雲の上に出し、……富士は日本一の山」の歌をバックに流しながら
「皆様、ただいま富士山の横を走り抜けようとしています。
本日の富士山はいつになく綺麗です。
お見逃しのないようにお願いします」
というアナウンスをいろいろな国の言葉で流したらどうだろうか。
観光立国と政府が言っているのだから、その程度の配慮は欲しいところだろう。
(フォト蔵)
新幹線の車内空間を意識してもらうためには、各種イベントが効果的であろう。
走行車両の中にイベント車両を間に入れて、乗客参加型のイベントを行う。
例えば、外国の人と友達になろうということで、外国の人の中には日本人の友達を探している人もいるかもしれない。
日本人の中には、外国の人と話をしたり、交流したいと思っている人がいるかもしれない。
そういう両者をマッチングさせるイベントである。
(マダムリリー)
日本が抱えている問題は、少子高齢化、健康寿命をいかに伸ばすかなので、それに焦点を合わせて、婚活イベント、健康体操イベントはいかがであろうか。
半分遊び心で提案しているが、新幹線車内という同じ空間を共有している仲間同士、ただ単に同じ方向に向いて移動しているだけの時間となっている。
何かもったいない気がしたので、ふと思った次第である。
今日も最後まで読んで頂き、有難うございました。