
「ギフテッド教育が日本でも行われていたことが分かったそうです」

「それは、いつですか?」

「『日経』(2025.7.29日付)の記事によると、戦時中に全国4か所に特別科学学級がつくられ、そこで始められていたようです」

「科学に特化した学校ですか?」

「優秀な科学者が欲しかったと思います。「科学に関して高度の天分を有する学徒」ということで、文部省が募集をかけています」

「集まったのですか?」

「生徒は兵役が免除されたようです。勉強が好きな子には魅力的でしょう。集まったようですね」

「寄宿舎とかは用意されたのですか?」

「資料が残っていないので、詳しいことは分かりませんが、多分用意されていたと思います」

「それが結局中止になったのは、敗戦のためですか?」

「GHQが米国の教育使節団を招聘(しょうへい)しますが、その使節団が反対の意向を示したようです。そんなこともあり、1948年までにはギフテッド学級はすべて打ち切られます」

「ここからが本論です↓ 表紙写真は「ギフテッド2E育児」提供です」
戦時下に始まった日本初の英才教育
戦時中の1945年、政府の「戦時英才教育機関設置に関する建議」に基づいて、特別科学学級が全国4か所、東京、金沢、京都、広島に設置されます。そこを拠点に全国から集められた精鋭たちが特別なカリキュラムのもと、理数系科目を中心に学んだ歴史があることが分かりました。
このように科学に特化した英才教育、今でいうところのギフテッド教育は日本では初めてのことで、他に前例はないそうです。授業は月曜日から土曜日まで毎日行われ、日曜日も隔週で開講されるなど、徹底した教育が行われていました。ある生徒は、中学1年の数学の最初の授業は「剰余定理」だったと日記に書き残していました。現在の高校2年生の内容です。「テイラー展開」など、大学数学のレベルの課題に触れていた形跡もあるそうです。
座学に加え、ものづくりの時間や探究的な学習も採り入れられていたようです。当時の国の狙いは、新兵器開発が可能な科学者集団の育成です。しかし、終戦後に警戒心を抱いたGHQによって計画は中止となりました。
(「日本経済新聞」)
現代日本におけるギフテッド教育の模索
それから80年経ちましたが、ようやく日本でもギフテッド教育の必要性が説かれるようになりました。中央教育審議会は2021年の答申の中で「特異な才能をどう伸ばすかという議論が十分でない」と指摘しています。そういった答申を受けて、文科省は2024年4月に、特別なカリキュラムを認める方針を示しました。しかし、現時点では具体的な制度設計や実施には至っていません。
近年は不登校も増え、その中には一斉授業そのもののレベルが低すぎて、居心地の悪さを感じ、学校から自然に足が遠のいてしまったという子もいると思われます。これまで重視されてきた全体的な学力底上げから、才能発掘と適切な育成への転換が求められています。
単なる学力試験だけでなく、教師の観察や推薦を活用し、多様な分野の才能を見出す仕組みづくりが急務です。
(「朝日新聞」)
海外に見る先進的な取り組み
ギフテッド教育に注力している国としては、アメリカ、韓国、シンガポール、イラン、香港といったところです。比較的このアジア地域の国々が熱心に取り組んでいる状況があります。選抜方法やカリキュラムも高度化しています。シンガポールではPrimary 3(小学校3年生)の時に2段階の選抜テストを実施します。最初に「スクリーニングテスト(英語+数学)」を受験し、その結果上位約10%が選ばれて、次の「セレクションテスト(英語+数学+General Ability)」へ進み、そこで上位1%の生徒をGEP(ギフテッドEducation Program)に招待するのです。
韓国では2000年に「英才教育振興法」を制定し、NRCGTE(国立ギフテッド教育研究センター)が2002年に設立され、全国25以上の大学でギフテッド教育の研究・実践が行われています。科学系の英才高校として1983年に設立されたGyeonggi Science High Schoolが有名です。その他、全国に4校くらい英才高校があります。そして、当初は理数中心でしたが、現在では情報科学、芸術、創造的文章、人文・社会科学などへのカバーが拡大しています。2008年には国立ギフテッド芸術研究所も創設されています。
ギフテッド教育を担当する教員には、基礎研修(60時間)、上級研修(120時間)、海外研修(60時間)など、専門的なトレーニングが義務づけられており、専門教員の質向上が図られています。韓国では、着々とシステムを作って成果を出しつつあります。こうした海外の動きに比べ、日本の文科省は制度化や実行面で大きく遅れを取っており、早急な対応が必要です。
(「日本経済新聞)
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