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「人的資本」時代の課題と可能性  ―― 労働力からアイデンティティ重視の働き方へ / 人をフローに導くためには、アイデンティティが重要

女性

「子どもがテストで良い成績を取った時に、御褒美(ごほうび)ということでお小遣いをあげているのですが、余り良くないと言われてしまいました。どう、思われますか?」

「いくらあげているのですか?」

女性

「大した金額じゃあないですよ。小学生ですからね。100円とか、200円といった程度です」

「目くじら立てるようなことではないと思いますけど……。微笑ましい感じがしますが、良くないと言っているその理由は何ですか?」

女性

「私のしている行為は「成果主義」というらしいのですが、成果主義は行き詰るというのです」

「それは会社の話でしょ。子供の教育と関係がないと思いますけど……」

女性

「私もそう思って言ったのですが、いや、同じだ、と言い張るのです」

「それで……。その理由は……。」

女性

「要するに、お小遣いにつられて勉強するか、勉強しないかを決めてしまう子になってしまうと言うのです」

「なる程、それはそれで理屈が通っていますが、頑張ったご褒美だと考えれば、良いと思いますけどね……」

女性

「分かりました。自然体で子どもと接したいと思います。ここからが本論です ↓表紙写真は「スキルノート」提供です」

 労働力から人的資本へ

職場を活気づけるには何が必要なのか。その問題意識の中から、近年は従来の「労働力」に代わって「人的資本」という言葉が用いられるようになりました。労働力というのは、人間を単に労働する主体として捉えた言葉です。しかし近年、人間の能力こそが付加価値の高い成果を生み出すということが、改めて認識されるようになりました。その流れの中で「人的資本」という言葉が生まれ、その考え方が注目されてきたのです。

ただし、これは同時に企業にとって「迷い」の始まりでもありました。人的資本に関する企業の情報開示は、2023年3月期決算から始まっています。大手企業約4,000社に対し、人的資本に関する情報を社内外に公表することが義務化されたのです。

具体的に開示されているのは、「平均勤続年数」「女性管理職人数・比率」「育児休業取得率」「男女賃金格差」などです。こうした情報開示は、単なる義務への対応という守りの姿勢にとどまるのか、自社の魅力を積極的にPRし採用力を高める攻めの戦略と位置づけるのかで意味が変わってきます。実際、積極的に受け止めて取り組む企業もありますが、全体的にはまだ手探りの段階です。とはいえ、この分野に前向きに取り組む企業が今後増加していくことは確実でしょう。

(「インソース」)

 人的資本の計測は一筋縄ではいかない

かつての労働力中心の時代は、労働者が何人いて、一日あたりどれだけの製品を生産したかで企業の収益力をある程度把握できました。製造業が中心だった時代には、それで十分だったのです。そして、2人の会話にあるように、特に成果を上げた人には一時金を支給したり、昇進させたりといった対応が有効に機能していました。

しかし現在は、産業の重心が製造業からサービス業へ完全に移ったこともあり、多くの付加価値が人間の能力や発想によって生み出されるようになっています。その結果、人的資本をどのように評価し活用すべきか、各社は暗中模索の「迷い」の中にあるのです。

要するに、人の気持ちに火を点け、一人ひとりをやる気にさせ、職場を活性化するには何をすればよいのかということです。個々人の能力は過去の実績から推測できますが、実際のパフォーマンスはそのときの心身の状態やモチベーションに大きく左右されます。ここに人的資本評価の難しさがあるのです。

(「ビズクロ」)

 人をフローに導くためには、アイデンティティが重要

近年注目されているのが「フロー率」という概念です。アメリカの心理学者チクセントミハイ教授が提唱したもので、人が集中し、時間の経過や自己の存在を忘れてしまうような心理状態を指します日本語でいえば「夢中」に近い概念で、敢えて表現すれば「夢中度」と言えるでしょう。能力の水準とチャレンジ精神の度合いが共に高い人ほど「フロー率」が高く、創造性を発揮する可能性も高まることが分かっています。能力とチャレンジ精神は相互に影響し合いながら高め合うものであり、重要なのはチャレンジ精神をいかに引き出すかという点です。そのためには「自分が本当にやりたい仕事をしているのか」という、アイデンティティに根ざした問いかけが欠かせません。

調査によれば、「日々の仕事に喜びや楽しみを感じますか」という問いに「はい」と答えた日本人の割合は73.9%にとどまり、世界138か国中104位でした(米ギャラップ社調査、2023~24年)。下のグラフはHRzineの意識調査ですが、この調査でも3年連続最下位という結果が出ています。これは、日本の教育や進路指導において、個人のアイデンティティに基づく指導が十分に尊重されていない可能性があります。実際には偏差値や大学名、企業ブランドを基準に進路が決まる傾向が強いのですが、本来であれば、その人自身の価値観や生き方に根差した進路指導が望まれます。

貴重な人生の時間をどう使うかは人それぞれ異なります。付和雷同的に大学や就職先を選ぶのではなく、自分らしい人生を見据えて意思決定を行うことが一人ひとりに求められる時代ですし、それを踏まえた教育のあり方を考える時代なのです。デジタル機器の導入を考える前に、そういった根本的な問題に取り組むのが文科省の役割だと思っていますが、常にピントがづれています。

【参考記事】西條都夫「仕事は『苦役』ではない」(『日本経済新聞』2025.9.22日付)

(「HRzine」)

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