「さあ、これからはインドの時代かもしれませんよ」
「本当ですか? それでインド?」
「ダジャレのレベルをもう少し上げないとダメでしょうね」
「これでインド」
「しつこいのは嫌われます。今日はあなたのインド観を変えさせようと思って来たのです。カレーライスしか思い浮かばないようではダメですよ」
「失礼な。インドとくれば仏教、お釈迦様の国ですよね」
「インドと言っても、北インドですね。生誕地のルンビニは現在はネパール内にあります」
「それで、前から疑問だったのですが、お釈迦様が説いた仏教はどこへ行っちゃったのですか? インドはヒンズー教の国ですよね」
「そうですね。インド人の8割はヒンズー教徒だと言われています。仏教の説く平等の教えが、階級社会の壁に阻まれて、流布しなかったというのが一般的な回答です」
「ヒンズー教が広まったということは、そういう平等の教えはなかったということですか?」
「ヒンズー教とバラモン教はほぼ同意で、バラモンというのはカースト制度の一番上の階級のことです」
「一番上の階級の人たちの宗教なんですね。信者は今、何人位いるのですか?」
「インドの人口が16億人で、それの8割なので、少なくとも10億人はいるということですね」
「教祖はいるのですか?」
「教祖はいません。日本の神道と同じような感覚で捉えて良いと思います。宗教の条件は開祖がいることですが、それがいません。ただ、法典はあります。マヌ法典と言うのですがね」
「ここからが本論です ↓ 表紙はインドの経済都市ムンバイの夜景です。提供は「GNV」です」
先進国でインドに最初に手を差し延べたのは日本だった
インドはイギリスの植民地だった国です。そんなこともあって、政治の舞台では常に用心深く行動してきた国だと思います。インドの悩みの種は中国です。国境紛争が年中行事のようにあります。山岳地帯を争っているのですが、つい最近の武力衝突では死者も出ています。
中国と距離を置きたい。かと言って、欧米諸国と肚を割って話せるような段階ではない。そんな状況の中で、ロシアに近づいたのです。ロシアから原油をはじめエネルギー資源を購入し、武器も調達できます。インドにとっては都合の良い国だったのです。
その様なインドを見て、手を差し延べたのが亡き安倍元首相だったのです。当時は「2つの海の交わり」という言葉を使って、太平洋とインド洋の2つの地域を自由と繁栄の海にしようと、インドの国会で演説をしたのが2007年8月のことです。
(「You Tube」)
「自由で開かれたインド太平洋」構想は安倍氏の功績
安倍氏の頭の中には、中国がやがて海洋進出をしてくるだろうという読みがあったことは確かだと思います。2007年頃は、南シナ海で構造物を作る動きを見せる頃ですが、中国は日本に対しても友好的でしたし、アメリカは中国に無警戒の時代です。
2016年8月、第6回アフリカ開発会議(TICADVI)にて、安倍氏はその基調演説において、太平洋とインド洋、さらにはアフリカを含めた自由で開かれた地域の構想を出します。「自由で開かれたインド太平洋」構想誕生の瞬間だったのです。
インドのモディ首相との間で信頼関係を築き、日米豪印(クアッド)に漕ぎつけたのは安倍氏の功績です。モディ首相は安倍氏の弔問のため日本に来て、「私の大事な友人がいなくなってしまった」と発言していたそうです。
(「NHK」)
ロシアとの縁切りをしたインド
クアッドを作った後も、モディ首相は非常に慎重でした。ウクライナへの軍事侵攻があったからと言って、すぐにロシアを離れることはしませんでした。ロシアへのウクライナ侵攻が始まり、国連の緊急特別会合が開かれ、ロシアに対して撤退を求める決議採択の時にインドは棄権をしています(賛成は141か国/191か国)。欧米と一線を画す態度でいたのです。つい最近まで。
つい先日の6月22日、インドのモディ首相がアメリカの国賓待遇で招待されました。米議会の上下両院合同会議で複数回演説を許されることとなったのです。ちなみに、安倍氏(2015)と岸田首相も上下両院合同会議で演説をしていますが1回です。
昨年、ロシアの撤退決議に棄権をした国の指導者が、いきなり国賓待遇で迎え入れられ、しかも上下両院合同会議で複数回演説。複数回演説は過去に3人しかいません(チャーチル、マンデラ、ゼレンスキー)。実は、これがアメリカの合理主義です。日本人とは違う感覚だということが分かると思います。日本人なら、まず1回から始めるべきだと思うかもしれません。無くても良いのではと思う人が結構いると思います。
インドがアメリカにこれ程迄に厚遇されているのは、何故なのか。2つ理由があります。1つは、ロシアと手を切ったこと。もう1つは、将来性です。14億人という巨大人口を抱え、GDPは現在5位で伸びしろが充分ある国。アメリカ企業が仮に中国を追い出されても、充分受け皿になり得る。国民の知的レベルが結構高く、ヒンズー教徒が多く自制がきく人が多い。さらには、反中国の国民性が強く、「インド・太平洋」を守るために最重要な国というのがアメリカの認識なのです。
扱われ方を見ると、日本よりインドの方が重要とアメリカは言っています。それが、アメリカの本音です。政治家は細かい動きの中から、その国の指導者の本音を見抜く力を持つ必要があるのです。
(「日本経済新聞」)
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