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マイナス金利を解除 ―— 積極財政、終焉の時代 / 経済を成長させるものは経済政策にあらず

女性

「一昨日はマイナス金利を日銀が解除したというニュースが紙面を賑わしました。マイナス金利って何かなとずっと思っていたのですが、私たち預金者には直接関係ないことなんですね」

「日銀と市中銀行との間において、預金を日銀に預けた場合は金利をとりますよということです」

女性

「金利がとられる位なら、低金利でも誰か必要なところに貸した方が良いという銀行の動きを期待していたのですよね」

「その通りです。その位の圧力をかけなければならない程、資金の借り手がいなかったということです」

女性

「今回、マイナス金利をやめたということは、経済的にプラス評価と考えて良いのですか」

「難しい質問をしますね。経済と一口に言いますが、それぞれの置かれた立場があり、どこから見るかによって景色が変わります」

女性

「一概には言えないということですか。それでは、日本経済全体から見た場合は、どうでしょうか」

「それは今後の動きを見定める必要があります。現時点では何とも言えません。ただ、海外が今回の解除をどのように見ているか、簡単に分かる方法があります」

女性

「それは何ですか?」

「外国為替相場です。私はそこに着目していたのですが、解除になったのに円安に振れましたよね」

女性

「金利が高くなるので、普通は円高に動くはずですよね」

「逆に動いたということは、日本経済の力はそれ程強くない、と海外も含めて多くの人が見ているということです」

女性

「日経平均は上がっていますが、それとは逆の見方をしているということですか?」

「そうですね。その辺りについては、以下の本論で話をしたいと思います ↓ 表紙写真は「日本テレビ」提供です」

 世界的な金利上昇のトレンドに合わせただけ

欧米では低物価・低金利の終焉が言われるようになり、主要先進国・地域の中央銀行の政策金利は2023年8月時点で4.32% (SMBC日興証券調べによる) です。この数値は、16年ぶりの高水準です。

国境を越えて資金・資本が流れるというグローバル時代なので、ひとり日本だけが低金利政策を続けるという訳にもいかなかったのでしょう。今回のマイナス金利解除の措置は、世界的な金利上昇のトレンドに合わせた措置だとも言えます。

ある種異常な状態から、正常な状態に戻したということで、ここからが日本経済の実力が試される、試練の時代に入ったと見るべきです。

(「トウシル」)

 積極財政、終焉の時代

国会はキックバック問題で揺れ動いています。何でもかんでもカネで決着がつくと思っている心理状況がこういった問題を生み出したと思っています

2月6日X(旧ツイッター)で「月500円弱」という言葉が飛び交いました。少子化対策の財源として、2026年度から徴収する「支援金」が一人500円の負担であるとの話題から出たものです。

首相の説明によれば、社会保障支出費を圧縮して保険料を下げた上で支援金をとるので、追加負担はないとのこと。要するに、上手くやり繰りするので、理解をして欲しいということですが、そもそも少子化対策をカネで解決すると思っているところが問題です。どのような原因と流れの中で少子化が起きたのか、全く分析せずに単に予算を付ければ何とかなるという考えの浅さを感じます

長期債務残高は1285兆円であり、GDPの2.5倍です。屁理屈を並べて「大丈夫論」を説く識者もいますが、データを見て世界の国や企業は判断し、動きます。この数値で積極財政を行う国に対して、世界は厳しい視線を向けることになります。要するに、国際信用の問題です。そういう状況下で、何でもカネという発想を止める時代です。

(「ねくとスワップ投資」)

 経済を成長させるものは経済政策にあらず

2022年の日本経済学会春季大会のパネル討論で、松元崇氏(元内閣府事務次官、KKR理事長)は日本は「衰退途上国」になったと報告しています。そして、何故そうなったのかということに対して、経済成長をもたらすのは人間の成長力だが、その視点が欠落していたためと言います。

相も変わらず現在言われているのは、賃金の上昇と物価の値上がりの好循環という言葉です。賃金を上昇させれば、経済は好転するという考えの下、政府と経済界が一体となって賃上げに向けて努力をしてきたのは確かです。そして春闘では、満額回答の企業が続出したのです。方向として間違っているとは言いません。ただ、それだけでは経済の好循環は生まれません

経済が成長するためには、新たな付加価値が入った商品やサービスが市場の中で受け入れられることが必要です。あるいは、今までにない分野において市場が形成された時に経済成長します。アメリカの現在の経済成長は、IT分野という新たな市場を開拓した部分に負うところが大きいのです。

そういったものを産み出す原動力は人間の創造力だとかつてエコノミストの下村治氏が指摘をしていました。実はケインズも『雇用・利子および貨幣の一般理論』(1936年)の中で人間の「アニマル・スピリット」が価値を生み出していくことを指摘しています2人に共通していることは、経済を発展させるのは経済政策ではなく、人間の力だと言っているのです。つまり、いかに人間を育てるかが問題なのです。次回は、その辺りのことについて語りたいと思います。

(ケインズ/「翻訳の探究」)

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