
「国家公務員のノンキャリアと言われる一般職の問題について話をしたいと思います」

「私の兄が地方公務員で役所勤めをしていますので、多少興味があります」

「地方公務員も総合職と一般職に分かれていますが、国家公務員と意味的に同じです」

「兄は一般職です。総合職試験はむつかしいと言って、最初からあきらめていましたが、いろんな部署を経験できると言っています」

「地方公務員は2~4年位で異動をさせますからね。そういう意味で、刺激があるとは思います」

「今の部署は第三希望だったとか言っていましたが、そういうこともあるのですね」

「どの社会でも、自分の希望通りにはいかないと思った方が良いと思いますよ」

「私の会社なんかは全くと言って良いほど異動がありません」

「そういう会社もあるでしょうね。とにかく、公務員の採用と昇進のシステムは国の将来に大きな影響を与えます。そういう観点から、見ていくことにしたいと思います」

「分かりました。ここからが本論です ↓表紙写真は「NHKニュース」提供です」
ノンキャリアこそ視野を広げる機会が必要
日本の中央官庁における人事は、いまだに「省庁内完結型」が基本となっています。特にノンキャリア(一般職)層については、他省庁との人事交流は極めて限定的で、職員の能力や希望が配置に反映される仕組みが整っていません。毎年の異動も、基本的には「人員の穴埋め」が優先され、本人の意志や適性はほとんど考慮されないのが現実です。
このような慣行は、戦前の中央集権官僚制が構築された頃からあるものです。明治期に始まった省庁別の採用・昇進制度は、縦割り組織の文化を強化し、「人材は育てるもの」ではなく「囲い込むもの」とする風土を生んでしまいました。そのため、他省庁や外部組織に人材を移すことは組織内部では“リスク”とみなされ、積極的に異動を希望する職員も少なくなっています。
しかし、このような“閉じた人事”を続けていては、霞が関全体の活力も創造力も育ちません。特にノンキャリア層こそ、多様な経験を通じて視野を広げる機会が必要です。にもかかわらず、現在の制度は彼らを固定化し、成長の道を狭めています。この状況を変えるには、「人を活かす」という視点に立った抜本的な制度改革が求められます。
(IWJ Independent Web journal)
AIとデータが切り拓く“希望人事”の可能性
現代は、AIやビッグデータの進化により、人事管理の可能性が大きく広がっています。職員の業務経験やスキル、勤務地条件や希望分野などをデータベース化し、AIが最適な異動候補を即時に提案する仕組みは、すでに技術的には実現可能です。にもかかわらず、霞が関ではいまだに「人間の勘と慣習」によって人事が決まっているのが実情です。
AIを用いた人事マッチングが導入されれば、「適材適所」と「本人の希望」が同時に満たされる新しい人事のかたちが実現します。たとえば、ある職員が「子育て支援に携わりたい」と希望すれば、厚労省だけでなく、内閣府や地方自治体とのマッチングも可能になります。従来の「所属省庁ありき」の配置ではなく、「職員の意思」を出発点とする柔軟な異動が、霞が関全体に新しい風を吹き込むでしょう。
さらに重要なのは、このような人事制度改革が「人権」や「尊厳」といった観点からも意味を持つということです。公務員である前に、ひとりの人間として、自分のやりたい仕事を選べること。それは単なる効率化ではなく、「働くことの尊さ」を再認識するための第一歩でもあるのです。
(「ITトレンド」)
ノンキャリア人材こそ、日本の行政の未来を担う
これまで霞が関の人事制度改革といえば、幹部人事やキャリア官僚の統制に焦点が当てられてきました。しかし、本当に重要なのは、圧倒的多数を占めるノンキャリア層の人材をどう育て、どう活かすかです。日々の行政を実際に回しているのは、現場で汗を流す一般職の職員たちだからです。彼らの可能性を閉ざすような制度は、もはや時代遅れと言わざるを得ません。
ノンキャリア職員にも、省庁横断での経験や、異なる政策分野への挑戦を可能にする仕組みが必要です。その実現には、制度の整備と同時に、「出戻りにならない評価体系」の再構築が欠かせません。異動しても正当に評価され、昇進に不利益が生じない体制を作ることで、職員の挑戦意欲が引き出されます。
また、若手職員の志や創意工夫が発揮される職場こそが、本当に強い行政組織です。ノンキャリア層が「与えられた仕事をこなす人」から「社会の課題を解決する人」へと変わるには、組織の側がまず信頼を示し、自律的なキャリア形成を支援することが不可欠です。横断的で流動性のある人事制度こそ、日本の行政を活性化させる鍵なのです。
(「資格広場」)
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