「今日は専守防衛について勉強しましょう」
「選手宣誓なら知っていますが、そちらは苦手です」
「選手宣誓を笑顔で元気よく出来るためには、防衛問題は重要です。」
「それでは、気を取り直して質問します。専守というのは、専ら守るという意味なのに、最近になってそのあり方を変えて、敵を攻撃できるようにしたのですよね?」
「細かいようですが、敵への攻撃ではなく、敵基地への攻撃です。そこに攻撃しないと、日本に大きな被害が出てしまうからです」
「ただ、それは専守防衛にならないように思いますけど……」
「厳密に言うと、そうでしょうね。専守というのは、専ら守る訳ですから、攻撃できるというのは、論理矛盾だと思います」
「矛盾することを何故決めるのですか?」
「今の軍事状況では、厳密な専守防衛では、国を守れないからです。大きな被害が出てから、動くことにした場合、国民生活への影響が各所に及んでしまうので、それを避けたいということです」
「相手の攻撃の兆候が、正確に分かるものなんですか?」
「今の軍事技術である程度可能みたいです」
「仮に実際にそういうことがあった場合、そこから戦争に発展することはありませんか?」
「無いとはいえないでしょうね。だからこそ、見極めが大事だと思います」
「かなり際どい判断が必要な気がします。あと、素朴な疑問ですが、専守防衛の原則は守らなければいけないのですか?」
「9条から先人たちが導いた大事な原則だとは思いますが、絶対的な原則ではありせんので、時代に合わなくなれば変える、または放棄するということだと思います」
「ただ、それを真正面から言ったら、凄いことになるでしょうね」
「だから岸田首相は専守防衛を堅持すると言っているのだと思います」
「ここからが本論です ↓ 表紙写真提供は「NHK」です」
専守防衛——自衛隊発足当時からのもの
専守防衛という言葉が国会で最初に使われたのは1955年です。当時はまだ防衛庁ですがその杉原長官が前年(1954)に発足したばかりの自衛隊について、専守防衛という言葉を使って説明したのが最初です。
当時の政府は専守防衛を3つの観点から説明していました。1.防衛力を行使できるのは、相手から攻撃を受けた時。2.その行使は必要最低限度のものとする。3.保持する防衛力は必要最小限度とする。そして、必要最小限度の目安ということでGNP(当時)の1%という基準が設けられたのです。憲法9条がありましたので、その考えの趣旨に沿っての原則でした。
21世紀になって北朝鮮の軍事行動が活発化します。それがわが国の防衛論議に火を付けるきっかけとなりました。
その当時の政府の立場は、敵基地攻撃能力は持っていないし、それをするつもりはない、仮に相手が東京を火の海にすると言ってミサイルに液体燃料を注入し始めた場合は、相手を攻撃するのはアメリカであると言っていました。つまり、日米安保条約を機軸に、自衛隊が盾、米軍が槍の役割をするという認識だったのです。
(「TOKYO MX」)
専守防衛では自国を守れなくなっている
敵基地攻撃の話が出始めたのは、21世紀に入ってからです。実際に2005年の『防衛白書』には「相手から攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための最小限度にとどめ、……」とあります。それで日本を守ることが出来れば、何も変える必要はないと思います。
専守防衛では守れないのではないかと思わせるような状況が、いろいろ出て来るようになったのです。1998(平成10) 年に北朝鮮のテポドン・ミサイル発射によって、 日本全域を 射程内におさめる長射程のミサイル保有が明らかになったのに加え、2003年に北朝鮮が核不拡散条約 (NPT) からの脱退を表明したのです。同ミサイルに核弾頭搭載の可能性が指摘され、 我が国への核ミサイル攻撃の現実的脅威が認識されるようになったのです。
(「THE HEALINE」)
ロシアの軍事侵攻、中国の連日にわたる尖閣周辺への侵犯
専守防衛という言葉が生まれてすでに65年位経っています。在日米軍もいるので、その考え方で充分日本列島を守れるだろうと当初は誰もが思ったものでした。
1年前のロシアのウクライナに対する侵略戦争の状況を表わす映像が連日のように日本にも届けられるようになりました。21世紀になって、まさかこのような映像を見るとは誰もが思わなかったでしょう。ただ、現実を直視して、そこから物事を考える必要があります。
そのロシアと中国は盟友関係ですし、北朝鮮とも近しい関係です。この3国はすべて日本の隣国です。3国が共同して攻撃する可能性がない訳ではありません。そう考えると、日本と3国の軍事バランスを考えた時、完全に崩れています。何しろ、中国の軍事力は日本の防衛力の3倍強です。米日韓の3国で何とかバランスが取れているような状況です。
(「NHKニュース」)
軍事均衡を図るしか平和状態を保つことは出来ない
軍拡競争と言って批判する人がいますが、相手に合わせて軍事バランスを取ることが現代社会では平和状態を構築する上で最も有効な手段です。
戦後、米ソは核兵器を量産して軍拡競争をしました。いわゆる冷戦です。結局、冷戦で睨み合った45年間、小さな紛争はありましたが、世界は平和でした。今回、ロシアの軍事侵攻がウクライナに対しておきました。何故、起きたのか。ウクライナはロシアの口車に乗って核を放棄し、軍備を縮小したのです。バランスが崩れ、結局そこから侵略戦争が始まりました。ウクライナは専守防衛を貫いたとも言えます。現代のような殺傷能力が高い兵器が飛び交う時代において、専守防衛では国を守れなくなっています。
日本には人命だけでなく、守らなければいけない自然遺産、文化遺産が多くあります。ミサイル1発たりとも本土に落下させないためには、抑止力を強化し、軍事バランスを保つしか方法がないのです。軍事侵攻されれば、国民生活は破壊され多大な被害が出ます。ミサイル1発でも着弾すれば大変なことになります。それを他人事と考えないで、そういうことをさせないための費用、防衛費を真っ先に考えるということだと思います。
(「東洋経済オンライン」)
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