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権限移譲のない地方創生は空振りに終わる ―― 東京圏への人口集中は国際的には異常 / 地方分権を具体的に進めるしか道はない

「石破首相が新年の看板政策ということで、「令和の日本列島改造」を掲げました」

女性

「日本列島改造は、田中角栄元首相ですよね。学校で習いましたが、余り良い印象を持っていません」

「角栄氏の列島改造は、公共事業で日本を豊かにしようという考えに基づくものです」

女性

「今回の日本列島改造の目的は、何ですか?」

「一言で言うと、地方創生です」

女性

「どのように列島改造をすれば、地方創生に結びつくと考えているのですか?」

「「政府機関の地方移転」と「政府職員の2拠点活動」の2つです」

女性

「列島改造というネーミングと中身が合っていないと思いますけど……」

「列島改造というインパクトがある言葉を使って、世間の耳目を集めたいという思惑もあると思います」

女性

「石破さんは、元々言葉遊びが好きな方ですからね。ところで、その2つの政策の狙いは何ですか?」

「彼の言葉を借りると、一極集中の緩和でしょうか?」

女性

「実際に効果が出ると思いますか?」

「無理だと思います。前にもこのブログで書きましたが、地方創生は地方分権を視野に入れて行わなければ意味がありません」

女性

「政府機関を地方に移転した程度ではダメということですね」

「横の移動を何回やっても社会の構造は変わりません。大事なのは、縦の移動、つまり権限を委譲するということです。それをしない改革は必ず不発に終わります。これは歴史の教訓です」

女性

「ここからが本論です ↓ 表紙写真は「ジチタイワークス」提供です」

 権限を委譲しない改革は不発に終わる

「令和の日本列島改造と位置づけ『地方創生2.0』を強力に推し進める。一極集中を見直し、多様性を未来の力にしていく」――石破首相の年頭の記者会見の言葉です。国民向けに耳障りの良い言葉を並べていますが、小手先を変える程度の政策では、何も変わりません。実際に何の成果も上げられないでしょう。

なぜ東京一極集中が進むのか。理由は簡単です。中央集権国家の首都だからです。権力があるところに人とカネが集まる性質があります。そう考えれば、東京一極集中というのは自然な流れと言えます。

1月13日に東京女子医大の元理事長が背任の疑いで逮捕されましたが、彼女は女子医大の理事会に約10年君臨しました。女プーチンとも言われていたそうですが、自宅に置いてあった金塊と現金合わせて約4億円が家宅捜索で見つかったそうです。権力あるところにカネとヒトが寄ってくる、見本みたいな事件です。彼女から権力を取れば、カネも人も寄ってきません。国家組織も理屈は同じです。東京一極集中を解消したいのなら、権力を地方に委譲するしかありません。

(「You Tube」)

 東京圏への人口集中は国際的には異常

主要先進国の首都圏人口の対全国シェアのデータを国際比較してみると、東京圏への人口集中が「異常」だということが分かります。イギリス、フランス、アメリカといった首都圏の人口比は1950年から現在まで殆んど変化がありませんが、日本では年々その割合が増えています。

先にあげた国の中で首都圏人口の割合が一番高い国がフランスで、パリ周辺に約15%の国民が集まっています。東京圏はその倍の約30%の国民が集まっていて今後もその集中は続くと思われます。そういう中での今回の石破総理の発言だと思います。危機感を持っていらっしゃることは分かりますが、政策内容が余りにお粗末です。

この様に東京圏への人口集中が進んだ理由について、林宜嗣氏は「国を単位とした中央集権的な意思決定システムを維持し続けたことがこの結果をもたらした大きな要因」(『分権型地域再生のすすめ』有斐閣、2009)と指摘しています。

(「ニッセイ基礎研究所」)

 地方分権を具体的に進めるしか道はない

地域間の所得格差は、縮小するのか、増大するのかという問題があります。自由経済の下では縮小するというのが新古典派経済学の立場です。いや、むしろ増大させると説いたのがミュルダール(1898-1987)です。スウェーデンの経済学者で1974年にノーベル経済学賞を受賞しています。

産業の集積した地域が他地域に比べて生産面で優位である条件によって発展した地域は、他地域の犠牲のもとに発展を加速するというものです。要するに、早くに発展した地域というのは、そこには何らかの必然的な条件があったはずなので、それが保持されている限りは差は埋まらないし、むしろ格差は拡大するというものです。日本の場合は、こちらの説明が合っていると思われます。

実は高度経済成長期に地域間格差が狭まる傾向がありました。これは、当時の列島改造計画によって地方に公共投資の資金が流れたことによります。そういうことを知る石破氏が今回「列島改造」という言葉を使ったのだと思います。ただ、政府機関を地方に移転した程度の措置で地方再生など出来るはずがありません。先に紹介した林氏は「地方の再生は経済だけでなく、トータルな魅力を増すことによってのみ実現する」(同上)と述べています。彼も言っているように、地方分権を具体的に進めるしかありませんし、それを進めれば様々な抵抗勢力が現れます。石破総理には、その先頭に立つくらいの気力をもって取り組んで欲しいと思っています。

(「日本アプライドリサーチ研究所」)

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