「タイで数万人規模の反政府デモのことを今日のテレビで放映していましたが、初めて知りました」
「この1か月間タイは揺れ動いています。日本の新聞は、なぜか殆ど報道していませんね」
「何か、緘口令(かんこうれい)が敷かれているのでしょうか?」
「それはないと思いますけど、タイの地政学上の位置と、中国との関係などを考えると、非常にデリケートな問題が絡んでいることは確かだとは思います」
「書き方が難しいということですか?」
「そんなところではないかなと思いますが、あくまでも私の予測ですよ」
「あとタイと日本は戦前から親交があったのですよね」
「そうですね、タイは仏教国ですし、王室もあり、戦前からの独立国です。そんなこともあり、1887(明治20)年に正式な外交関係を樹立していますので、今年が133年目にあたります」
「そんなに古いのですか?」
「そうなんです。日本とは古くから繋がりがある国なのです。スペイン艦隊の侵攻を止めたのが山田長政という日本人だったという話を知っていますか?」
「いえ、その名前を今、聞きました」
「私の頃は教科書で紹介していたのですが、今は名前すら載せていません。17世紀の人です。スペイン艦隊のアユタヤ侵攻を2度にわたって退け、アユタヤ王朝の国王から信任を得たという話です」
「その国王の行状が問題になっていると聞きました」
「昨年新しく即位した国王ですね。一番の問題は、タイに住まないで、殆どドイツで暮らしているとのこと。王室は常に国民とともに歩まないといけないと思います」
「苦楽をともにして、分かりあえることがあるということですね」
「何か、最近は言うことが前とは違っていますね」
「ありがとうございます。ここからが本論です ↓」
目次
東南アジアで戦前から唯一独立を守ったタイ(旧国名/シャム)
タイは東南アジアに位置する国なので、西欧列強の植民地競争の標的になった国です。フランスはカンボジア、ベトナムを植民地とし、東からプレッシャーをかけてきます。イギリスはマレー半島やビルマを植民地化して、西から迫ってきます。さらに、国内では、不平等条約によって領事裁判権を認めていたため、フランスやイギリスのアジア系保護民が治安を乱したとしても、国内の裁判権が及ばず、その対応に苦慮していたのです。
日本も不平等条約に悩まされていて、立場が同じで親近感をもったのか、タイ側がアプローチをして、それに日本が応じるというかたちで関係が進展していきます。
日本は天皇から権力委任を受けた明治政府が近代化のための政策を遂行していきますが、タイは国王が先頭に立って近代化のために奔走します。
タイのチュラーロンコーン国王の即位は1868年で、明治天皇と同じ年の即位だったのです。国王は多くの外国人顧問を雇い、留学生を西欧に派遣して、ヨーロッパ文化や思想、法制度などを学ばせたのです。タイの国王が行った近代化政策が、タイの政治・経済発展の礎(いしずえ)を築き、独立を守ることになります。
タイの女子教育のために働いた日本人女性、安井てつ
ところで、日本の先人の活躍を意識的に封印しようとする動きがあります。左翼学者による日本弱体化プログラムの一環だと思っていますが、実は戦前タイの女子教育の発展のために日本から派遣された日本人の女性教師が3人います。彼女たちは皇后女学校と呼ばれるところに勤務します。その中の主任が安井てつ (1870~1945)です。3年の任期が終わって帰国しようとする時に、生徒達からタイに残って欲しいとの希望が出るほどだったと言います。
この話には後日談があって、1939(昭和14)年に皇后女学校の第一期生が来日をします。「先生方にお会いしたくて、一生懸命貯金をして日本に来ました」という彼女たちの言葉を聞いて、安井は感極まって言葉にならなく、無言のまま手を握り続けたそうです。安井てつは、その後東京女子大学の創立に参画し、女子教育に一生を捧げます。ちなみに、皇后女学校は現在もなお、タイの名門校として存続しているとのことです。
タイの反政府、王政改革の要求は至極当たり前の要求
そのように国レベル、個人レベルの両面でタイとは様々な繋がりがあるのです。そのタイでこの1か月間反政府、王室改革デモが続いています。新聞各社はもう少し、詳しく報道したらどうかと思っています。
現在の国王は、ワチラロンコン国王(ラーマ10世)です。実は、日本では2019年の5月1日から令和が始まりましたが、タイはその年の5月4日から3日間は新国王の即位にちなんだ行事でお祝いムード一色だったのです。前の国王はプミポン国王です。1946年に即位し、崩御は2016年なので70年間もの長い在位だったのです。その人柄と実績で国民に大変人気のある国王でした。その息子なので、国民の多くは期待したのでしょう。
ところが、今の国王の行状にタイ国民の多くが疑問をもち始めます。彼は68歳ですが、今まで3回結婚、現在の王妃は4人目というプレーボーイぶりです。昨年には、元陸軍看護師の女性に「チャオクンプラ(高貴なる配偶者)」を与えて側室としています。そのワチラロンコン国王ですが、普段はドイツに約20人の女性たちとホテル住まいをしているとのことです。そして、彼は王室財産管理局(CPB)による運用で国家基金としての位置づけだった王室資産を、国王の私有財産とし、600億ドル(約6兆円)という資産を確保したのです。やりたい放題という感じです。
タイの政治体制は、表向きは立憲君主制ですが、実際には王権軍事制です。軍部の力が強く、不敬罪というのがあり、王室に対する批判については、最高15年の懲役が科せられるとのことです。
今のタイで起きているデモは、反政府、王政改革を求めたものです。国王だから特別に何でも許されるという時代ではありません。国王を『憲法下』に戻すのが、王室に対する批判の目的とのことです。至極当たり前の要求だと思います。
タイの現在の王政を他山の石としたい
2014年5月のクーデターで現在のタイの軍事政権が誕生しました。そのため、欧米諸国がタイと距離を置き、代わって中国がタイとの関係の緊密化を図っています。デモが打ち続いているタイの状況を中国は注意深く見ていると思います。一方、米国も南シナ海など地政学的に重要なタイの内政状況を注視しています。カンボジアのように中国に極端に依存するようなことがないように警戒していると思います。
実は現在のタイの王朝の歴史は200年位です。一人の人間を組織または国の中心に据える。そうすると組織は安定します。ただ、それはあくまでも周りの信任・信用があることが前提です。日本の皇統は126代、約2000年の歴史があります。国民と共に歩むと、言葉では簡単に言えますが、制度としてどのように構築するか、天皇をどのように育てるか、いわゆる帝王学などの問題があり、それらを乗り越えて現在の皇室制度があります。
権威と権力を分離して国家の中心に据える、一つの系を守ることにより天皇家のしきたりや教えを次代に受け継ぐことが出来る。天皇として生きることは、私人としての生き方を捨てることでもあります。先人の苦労を全く理解しようとせず、単に男女平等という18世紀くらいに定まった原理を根拠に女系天皇容認発言をする政府関係者がいます。不勉強のそしりを免れません。
トヨタ、ホンダというように、創業者の姓を会社の名前としている例が多くあります。そのような会社は組織を安定的に維持するために、その血統を守っていこうと考えるものですし、そのための努力をしようとします。国も同じです。安易な方向で考えるのではなく、世界最古の日本の王朝を守り通すという気持ちをもつことが大事です。
女性天皇と女系天皇は違います。女系天皇を容認するということは、系が変わりますので天皇制が足元から揺らぎかねません。そうなれば、日本という国も揺らぐことになります。左翼陣営はそれを狙っていることは確かです。タイの現在の国王は、皇太子の時代からタイには住まないで、ヨーロッパで勝手気ままに暮らしていたようです。帝王学を全く受けていないのでしょう。自由気まま、個人の生活優先という考え方の人が国王になると、どうしても国は不安定になります。他山の石としたいものです。
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