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USスチール買収問題の根底にあるもの ―— 「最も信頼できる同盟国」になっていない / 歴史の総括が終わっていない

「USスチールの買収問題を解きほぐせば、アメリカの日本に対する不信感がどの程度なのかが分かります」

女性

「何か凄いことを言われますね。そもそも、USスチールの買収問題って何ですか?」

「日本製鉄がアメリカのUSスチールという製鉄会社を買収しようとしたところ、アメリカ政府が待ったをかけた事案です」

女性

「そのUSスチールという会社は、どういう会社ですか?」

「1901年に設立され、当初はアメリカの鉄鋼生産の約2/3を生産し、20世紀のアメリカの工業化を支えてきたとも言える代表的企業です」

女性

「買収ということは身売りのようなものだと思いますけど、企業の業績が良くなかったのですか?」

「時代を支える産業が重厚長大から軽薄短小に移り変わるにつれて、その地位は下がり規模は縮小していきました。1953年のピーク時の生産量が3580万トンだったのですが、2022年には1120万トンだったのです」

女性

「1/3になってしまったのですね。なのに、どうしてその買収に対して政府がストップをかける必要があるのですか?」

「普通では、あり得ないことです。M&Aに向けて適正な手続きが取られていれば、後は当事者の問題として処理されるはずなんです」

女性

「そうはなっていないところに、何かあると思われたのですね」

「そうですね。この問題は現在は保留になっています。次期大統領に決めてもらおうというところで止まっています」

女性

「ここからが本論です ↓」

 世界の鉄鋼業界は中国がリードしている

世界の鉄鋼業界の状況を調べてみました。世界第1位は中国のChina Baowu Group、2位はルクセンブルクのArcelorMittal。3位が中国のAnsteel Group、4位が日本製鉄、5位が中国のShagang Groupというように上位5社のうち3社が中国企業ですし、トップ10の中に半分の5社が中国企業です。日本製鉄がもしUSスチールと合併できれば、3位に上昇することができます。

そしてUSスチール側も日本製鉄との合併を望んでいますUSスチールは「私たちは、日本製鉄による買収は全ての関係者に最善の恩恵をもたらすと信じている。アメリカにも恩恵をもたらし、国内製鉄産業の競争を促進する一方で、当社の世界的なプレゼンスを強化することになる」との声明も発表しています

ところが、アメリカ政府や共和党関係者、アメリカの産業別組合であるUSWなど、こぞって反対しているような状況です。反対の理由として、経済安全保障を挙げているのが共通していますが、それに対してジャーナリストの中岡望氏は「最も信頼できる同盟国であり、一緒に中国を封じ込めようとする国の企業による買収に反対するのは驚きである」(「かつて世界最大の製鉄会社だったUSスチールが日本製鉄へ身売りした理由、凋落するアメリカの製鉄業界」)とSNSで発信しています

(「時事通信」)

 「最も信頼できる同盟国」になっていない

中岡氏は「最も信頼できる同盟国」と言っていますが、まだアメリカは日本を完全に信頼している訳ではないと思っています。アメリカは太平洋を挟んで、日本をどのように見ているのか。アメリカと日本の交流史はまだ170年くらいのものです。

彼らが見てきた日本は、極端から極端に替わり得る国民性だということです。明治維新期に攘夷と言っていたのに、あっという間に文明開化になりました。鬼畜米英と言って戦争を仕掛けてきたのに、戦後はギブミー・チョコレートになり親米になりました。このわずか170年のスパンで見ても、2回も大きく変わってしまった国民性。信じなさいと言うのが無理なのかもしれません。

アメリカ占領軍の力で現在の憲法を制定させて、平和国家への歩みを強制的に始めさせたものの、油断をすれば、かつての軍国主義日本に舞い戻るかもしれない。そんな心配を多少はしていると思われます。完全に味方になった訳ではない。たまたま事の成り行き上軍事同盟を結んでいますが、日本も含めて極東アジアに対する抑止力のための在日米軍という捉え方だと思っています。日米地位協定もそういう観点から読めば納得できると思いますし、USスチール買収問題もその延長線上で見ていく必要があるのです。新総裁になった石破氏が防衛強化のためアメリカに自衛隊と言っていますが、アメリカが認める訳がありません。そんなことが分からないヒトが次の総理大臣になるということです。

(「adobe stock」)

 アメリカが警戒を解くことができない最大の理由―—歴史の総括が終わっていない

何を警戒しているのでしょうか。再び、「真珠湾攻撃」(下の写真)がないようにしているのです。日本人の誰もが、ある訳がないと言うかもしれませんが、それはあくまでも我々日本人の感覚です。彼らはスキを見せれば、仇討ちのようにして、立ち上がるかもしれないと用心している部分があると思います。警戒しているのは、戦前の軍国主義を美化、復活して反米に向かう流れです。反米勢力は日本国内に一定程度いますが、大きな勢力にはなっていません。注視しているのは、軍国主義的な動きです。

明治維新から始まって、国民を軍国主義に駆り立てた一連の流れが美談として語られ始めています大東亜戦争という名称を『産経』が使い始めています。アリバイ作りのように大東亜会議を戦時中の1943年に開いたことがその根拠となっていますが、肝心の中国と朝鮮の参加がありませんでした欧米の植民地からの解放戦争という理屈ですが、隣国の朝鮮を植民地にしているので、説得性はありません

維新という言葉は後付けですし、もともとは中国語ですが、その政変によって薩長独裁政権が誕生します。明治の前半に起きた各地の武士の反乱は、政権を独り占めしたことに対する抵抗だったのです。他の藩の不平武士を抑えるために徴兵制を導入して、彼らを徴用しつつ、自分たちの政権を守り、国民の関心を逸らすために対ロシア防衛を口実に朝鮮半島に軍事侵略していったのです。

そしてその一方で元老院を創設します。薩摩4人、長州4人そして公家1人のわずか9人で構成するメンバー固定のシークレット・キャビネットです。死去によって空席が出来ても補充はしません。最後の一人になったのが公家の西園寺公望です。彼の死(1940年)とともに元老院は消滅しましたが、戦前の日本の独裁体制を支えたことは間違いありません。表面だけなぞったような歴史が語られています明治から敗戦まで独裁政権が暴走して、何百万という国民が犠牲になったという真の歴史が語られていません。アメリカや周辺国が警戒を解くことができない最大の理由がそこにあります。

(「東洋経済オンライン」)

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