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USスチール買収問題 (2) ―― 中国の世界鉄鋼業界への参入をアシストしたのが日本 / 経済安保ではなく、安保同盟に絡む問題

女性

「この間、USスチールの問題を扱っていますが、マスコミとは違う角度からの論評で興味深かったという感想が寄せられています」

「それは有難いですね。そう言えば、日本製鉄側の反応が早速ありましたね」

女性

「日本製鉄の橋本会長が記者会見でバイデン大統領を法的に訴えると言っていますが、どうなんですか?」

「前回のブログに書きましたように、これは経済問題ではなく、政治問題なので、大統領と対等に話し合えるレベルの政治家に頼むしかない問題です」

女性

「法的な訴えをしても駄目なんですか?」

「橋本会長は何か勘違いなさっているのです。法的には可能ですが、そんなことをしたらUSスチールとの合併が益々遠のきます」

女性

「意地でも合併させないぞ、ということになっちゃうのですか?」

「あなたが大統領ならどう感じますか。喧嘩腰で大統領の命令は違法だと訴えられれば、負ける訳にはいかないと思うでしょ?」

女性

「確かにそうですね」

「相手のプライドを立てを立てることが必要です。話をまとめたいなら、トップレベルの会談の中で話題にしてもらって、向こうが吞みやすい条件をそこで提示するしか方法がないと思います。実際に新日本製鉄が具体的に提示している条件は、USスチールにかなり配慮したものになっています」

女性

「USスチールという名前も経営陣もほぼそのままですものね。当事者が合意したので、第三者がダメというのは、何かおかしいと思ったのですが、大統領を純粋な第三者と考えてはいけないということですね」

「今回の問題について、アメリカは国益ということを言っているので、国益に絡むような問題に対して大統領令を出せるのは当然だと思います。それに対して、日本側が国益に適う合併話だということを総理大臣が説明に行くしかいないと思います」

女性

「そこで条件をお互い確認するということですね」

「アメリカは新日鉄の条件は途中で変更されるかもしれない。信用できないと言っています。トップが入った条件であれば、相手も信用せざるを得ないでしょう。合理主義の国なので、理にかなった対応をすべきだと思います」

女性

「成る程、それでは続きを本論で ↓ 表紙写真は「ハフポスト」提供です」

 USスチールという「アメリカの顔」を日本に買収させない

日本製鉄がUSスチールの買収計画を発表したのが2023年の12月です。それからわずか1年で両者の合意が成立します。お互いにとってもメリットになるし、中国の製鉄業に対抗する日米の核にもなると思ったでしょう。客観的には、その判断は正しいと思いますし、これに対してまさか大統領が介入してくるとは、夢にも思わなかったでしょう。

USスチールの買収にバイデン大統領とトランプ次期大統領の2人が反応したのは、アメリカそのものが買われてしまうという精神的嫌悪感からくる拒絶だと思われます。というのは、USスチールの創業が1901年で、今から120年以上も前です。アメリカ人なら、誰もが知っている企業、アメリカのシンボルのような企業なのです。

2022年の粗鋼生産はアメリカ第2位のシェアを誇り、かつてはアメリカの鉄鋼生産の約2/3を占めるほどの影響力を持っていました。中国が国を挙げて鉄鋼業に力を入れたことと、国内での競争が激化する中でひと時の勢いを失くしていたことは事実です。ただ、それでも世界的な企業であることに変わりがありません。「国家は鉄なり」の時代を生きてきた「2人の大統領」は、何も身売りするのではなく、自分たちの力で逞しく立ち上がって欲しいという思いがあるのでしょう。

(「朝日新聞デジタル」)

 中国の世界鉄鋼業界への参入をアシストしたのが日本

現在の鉄鋼業界は中国勢が席巻しています。世界のベスト10の鉄鋼企業のうち6社が中国です。しかもその中国企業は、日本製鉄が育てたようなものです。1972年の日中国交正常化を機に日中の技術交流が進みます。1977年新日鉄稲山会長が日中長期貿易委員会の会長として訪中した際に、製鉄所建設の依頼を中国から受けます。

翌1978年10月に鄧小平が来日し、君津製作所を視察します。鄧小平は改革開放を打ち出した方ですが、彼は中国にしては珍しく合理主義的な考え方の持ち主です。工場を見学する等、鉄鋼業に関心を見せます。その鄧小平の依頼に応じて日本の技術者たちが、中国に鉄鋼づくりのノウハウを教えるために海を渡ったのです。

それから8年後の1985年に最新鋭の近代的設備を導入した「上海宝山製鉄所」が完成し、第1高炉の火入れが行われました。それから約40年後の現在、日本が育てた中国の鉄鋼産業が世界を席巻し、日本もアメリカもその激しい競争の中でもがいている状況です。そういった歴史的な事情について「2人の大統領」は当然知っていると思います。「中国の鉄鋼業を育てて、アメリカ鉄鋼業を吸い取ろうとしている」会社に見えてしまうのでしょう。

(「ライブドアニュース-livedoor」)

 経済安保ではなく、安保同盟に絡む問題

アメリカを同盟国と捉えています。日米安保条約に基づく日米同盟が根拠だと思いますが、半分同盟、半分監視の意識でアメリカはいると思います日米安保の締結は1951年です。サンフランシスコで講和会議を開き、そこで講和条約とほぼ同時に日米安保条約を締結します。当時の全権は吉田茂です。彼の話によれば、講和条約のサインをし終わると、次はこちらですということで別の部屋に案内されて、そこで日米安保のサインをしたとのことです。

真珠湾への奇襲攻撃で始まり、2発の原爆で終わった戦争から、まだ6年位しか経っていないのに2つの重要な条約を締結します常識では考えられないような早さですが、極東アジア情勢が大きく変わったからです。1949年の中国革命と1950年の朝鮮戦争です。急変するアジア情勢に対応するために日本のアメリカ駐留軍を同盟軍にして半永久的な監視体制がとれることを考えます

一種のウルトラCですが、頭が柔軟であることが分かります。建前より実を取りに行ったのです。講和を結んだだけでは、駐留軍は撤退しなければなりません。間断なくそのまま軍務を継続するために、日本と軍事同盟を結びます。軍事同盟というのは、敵が攻めてきた時に共同で防御しましょうという約束を交わすことですが、世界の中にアメリカを攻撃するような国はありません。敢えて言えば、一番危ないのが日本かもしれません。その日本と結ぶことにより自国の安全と日本も含めた東アジアの監視を担うことが出来ると考えたのです。現在もそのポジションは変わっていません。日本が考えているような同盟ではないことを認識した上で、今回の買収問題を考える必要があるのです。

(「朝日新聞デジタル」)

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