(この文章は3/20日に書きました)
オウム真理教の事件が起きた背景
新興宗教、共産主義運動――誰もが陥りやすいエアポケット
人は誰もが目標をもって生きていたいと思うものです。その気持ちは、若ければ若いほど、そして真面目に人生を考えている人ほど、その思いは強いのかもしれません。目標がなく、ただ単に生きている状態の虚無感に襲われることを、極度に恐れる人がいます。恐れる余り、目の前に偶々(たまたま)提示された目標に飛びついたり、偶然他人が誘ってくれたサークルに加入したりということがあります。
封建の時代であれば、こういう悩みはきっとなかったのではないかと思います。何故かと言えば、封建の身分制社会では生まれ落ちた瞬間から、ある程度その生き方は定められていたからです。 武士は死ぬまで武士として生き、農民は農民として一生過ごします。長男か次男かによって、当然生き方が違いますし、男か女かによっても全く違います。そして、高い身分であればある程、自由はありませんでした。結婚も家の都合で決められますので、個人の気持ちが入ることは殆どありません。だから、限られた世界の中での目標だったので、却って生きやすかったのではないかと思っています。
全くフリーランスに生きていいよ、と言われても、それを言われた瞬間から悩む人もいます。「人間は自由の刑に処せられている」と言ったのはフランスの実存主義者のサルトルです。 彼は人生を大海原に漕ぎ出た一艘(そう)のボートに例えました。周りには目標となるような大陸も島もありません。どっちに行って良いか分かりません。どっちに行ってもいいよ、と心の声を聞けば聞くほど、焦りと苦痛は増すばかりでしょう。
ただ、ボートの例で考えれば分かると思いますが、人生の目標がそんなに簡単に立てられる訳ではありません。但し、スポーツ、芸能、芸術関係は例外です。それらの分野は若い時代に勝負しなければいけないので、早く目標を立てる必要があります。芸能、芸術関係は才能に大きく左右される分野なので、早いうちの見極めをする必要があります。そうすると、周りにそういう友達がいると、自分だけが目標を立てないまま生きている感が強くなり、何かを目標にしなければいけないという強迫観念に襲われ、そのタイミングで宗教や思想関係に出会うと、そちらにのめり込む傾向があります。
組織(団体)に対して、個人がどう関わるか
宗教団体や思想団体に関わるきっかけは様々ですが、問題はその後です。ただ、この問題は、何も宗教団体や思想団体に限ることなく、あらゆる組織(職場)との関わり方に共通する問題かもしれません。
個人と組織(団体)。もしかしたら、人間にとって「一つの永遠のテーマ」かもしれません。基本的には、付かず離れずだと思います。太陽と地球の関係をイメージしていただくと良いかと思います。太陽と地球は絶妙なバランスをとった距離にあると聞いたことがあります。少し離れていても、近すぎても、今の様な緑あふれる地球とはならなかっただろうと言われています。そういう距離を組織(団体)に対して取れるか、それが一番の問題です。
特に、日本人の場合は西洋人に比べて、この処理の仕方が下手な人が多いと思います。日本人のDNAの中に「組織一体プログラム」の遺伝子が長い歴史の中で組み込まれてしまったからです。 一度関わってしまうと、自分と当該の組織(団体)が同一であるという思い込みモードが作動してしまうのです。職場の問題で自殺をしてしまうのが日本人に多いのは、そういったところに原因があります。そして、その深度は主に4つの指標によって判断できます(自己診断してみて下さい)。
1つは、その組織(団体)の目標です。それに対して、自分自身がどの程度共感しているかどうか、それによってその深度(のめり込み度)を判断できます。
2つ目は、人間関係です。自分の培ったすべての人間関係(そこには、家族、親族を入れます)を分母として、その組織(団体)の人間関係を分子として、その割合を求めます。それが80%以上であれば要注意です。
3つ目は、論理性です。人間は目標が掲げられ、それに対してどのように自分が関わっていくのかという段階において、理屈(論理)を必要とします。そのような論理性が精密であればある程、自分を納得させることが出来るからです。
4つ目は、才能や役割です。その組織(団体)の中で才能や役割が買われていることでポジションが与えられていれば、もう抜け出すことは難しくなります。
事件を風化させてはいけない――事件から何を教訓として学ぶのか
本日の『日本経済新聞』が「オウム消えぬ衝撃――地下鉄サリン事件25年」と題して1面ぶち抜きの特集記事を組んでいます。その中で「間違いないのは、私たちの社会の中から、私たちの社会を否定するものが生まれ、育ったという事実だ」と述べています。新聞社は公器として書きたくても書けない部分がありますが、ハルマゲドンや革命などといった空想的なことによって現実が変わることはありません。
書けない部分を代わって書いているのですが、現在においてもこの日本社会を根本からひっくり返そうと考えて活動している政党や団体があります。団体の中には、その出自を隠して活動している団体もあります。外国勢力と繋がっている団体もあります。この日本は地政学的には最重要地域にありますので、様々な国や団体がいろいろな思惑で動き回っています。そのことを意識する必要があります。
防衛意識を持つことです。エセ組織(団体)や反社会的組織(団体)の場合は、言葉巧みに自分たちの仲間に引き入れるために、最初は「夢の目標」を語ります。目標がなくて困っている人を勧誘するためには、魅力的な目標を提示する必要があるからです。本当に真剣に活動している組織(団体)は変な勧誘はしません。少なくとも、街角あたりでナンパ的な勧誘や集会に参加したついでに隣の人を誘うような勧誘はしません。
自分なりの高き志をもって下さい。志は個人個人が立てるものです。単なる目標とは違います。志の中には、世のため人のためという要素が入っています。吉田松陰は志を立てる時に、現在が平穏な時なのか、乱世なのかを見極めなさいと言っています。 いかがでしょうか。当然、乱世ですね。一旦緩急あればという状況なので、私よりも公を優先する生き方を考えます。そのためには、形(カネ、モノ)であらわれるようなものではなく、心なりと吉田松陰は言っています。
高き志を持てば、それがオーラとなって低レベルのウイルスから身を守ります。
読んで頂きありがとうございました