「かつての時代は登校拒否と言っていたのですが、近年は不登校と言っています。統計的に一番多い学年は、どこか分かりますか?」
「小学校よりも中学校だということが経験的に分かりますが、中一プロブレムという言葉があるし、友人関係、勉強面でつまづきやすい中1、中2ですか?」
「文科省の統計調査(2018年度調査)によると小1から中3まで、学年が上がるにつれて増加し、中3が最多です。そこから、高1になると、かなり減って、高校は学年が上がるにつれて減るという感じになっています」
「高校は義務教育ではありませんし、留年もありますからね」
「入学したものの馴染めず、通信や専門学校への転学も多いです」
「原因として多いものは何ですか?」
「人間自体複雑な生き物なので、実際には様々な原因が入り混じっているとは思うのですが、文科省の統計で多い順に、家庭生活、友人関係、学業不振の順番です。この順番は、小中ともに変わっていません」
「不登校の定義は何なのですか? 全く学校に行っていない子ということですか?」
「文科省の定義によると、年間30日以上学校に通っておらず、一定期間(1週間以上)連続して学校に行っていない場合を不登校としています」
「ただ、中には「きわどい」のもありますよね」
「「きわどい」と言うのは?」
「保健室登校、校長室登校、給食登校といったものです」
「それらは教室外登校、部分登校と言われていて、不登校とはみなされていないのです。それ以外に仮面登校というのもあります」
「ハロウィンじゃあるまいし、それは何ですか」
「登校して基本的に教室で過ごしているけれど、授業に殆ど参加しようとしないというものです」
「それは、教師の指導力の問題もあるのではないでしょうか。とにかく、いろいろな類型が出てくるということは、余り良いことではないんでしょ」
「ただ、根っこの部分には、単純な真理が隠れているような気がします」
「ここからが本論です ↓」
少子化が進行する中での不登校児童・生徒の増大
本来、人間は学びの要求をもっています。そこには、自分自身を常に高めたい、昨日より今日、今日より明日という人間の純粋な気持ちが潜んでいます。ところが、この世に生まれてわずかな年月しか経っていないのに、学びの舎に通うことを拒否する児童・生徒が増えているという。一体何が起きているのでしょうか?
ところで、日本財団が学校に馴染んでいないと思われる子どもたちの実態について調査を実施しました。
調査は、2018年10月に中学生年齢の12歳~15歳合計6,500人を対象にインターネットで行いました。その結果、「年間30日以上欠席の不登校である中学生」は約10万人、「不登校傾向にあると思われる中学生」は10.2%の約33万人に上ることがわかりました。
不登校の中学生約10万人は文部科学省が各学校、教育委員会からの回答を基に集計して、毎年実施している調査でも明らかとなっていますが、「不登校傾向にあると思われる中学生」の数はその3倍にも上ることが初めて明らかになったのです。
不登校の一番の原因は、教員の質の低下にあり
1年間に合計30日以上、学校を休んだことがある/休んでいる生徒の「行きたくない理由」 を見てみましょう(26項目から選択・複数回答可)。下の表は、上位4つを統計上の数字とともに示したものです。
学校に行こうとすると体調が悪くなる | 52.9% |
友達とうまくいかない | 46.1% |
学校に行く意味が分からない | 42.9% |
先生と上手くいかない、頼れない | 38.0% |
日本財団の統計と文科省の統計には「ズレ」があります。文科省の統計によると、家庭問題が一番の原因とされたのですが、上の項目や数字の中に家庭に起因するものはありません。
そのような「差異」が何故生まれたのかということですが、日本財団の分析によると、「文科省の統計は『学級担任など当該児童生徒の状況を最も把握することができる教職員』が、『保護者の意見を踏まえ、スクールカウンセラー等の専門家を交えたアセスメント(同意)を行った上で』報告しているからではないかと分析しています。
つまり、文科省の統計数字は「教師、学校長」、場合によっては教育委員会というフイルターを通ったため、生徒の本心が反映していない可能性があるということです。そもそも、家庭生活を文科省は第一原因に挙げていますが、家にいてつまらなければ、学校に来ようと思うのではないでしょうか。保健室登校、校長室登校、仮面登校が増えているということは、単純に考えれば学校が拒絶されているのではなく、教師を拒否しているのではないでしょうか。
弱い立場の子供たちが、声を上げることが出来ず、静かに抵抗している数が不登校の数ということです。とにかく、学校を「負」のイメージとして捉えている子供たちが増えていることは確かなのです。
なお、日本財団における不登校の定義を満たす中学生の数は99,850人で、文科省の統計データ(119,687人)と若干の差はあるものの大きな違いはありませんでした。
教員の質の低下を反映する指標がわいせつ教員の数
処分を受けた教員数は、13年度以降200人超が続いており、18年度は過去最多の282人だった。簡単な表にまとめてみました。
【わいせつ事件で処分された教員数】
2000年 | 141人 |
2005年 | 142人 |
2010年 | 170人 |
2015年 | 224人 |
2018年 | 292人 |
“
わいせつ教員の数と不登校の数は正比例します。要するに、戦後の安易な教員養成政策によって、教員の質の低下を招き、その象徴的事例が教員のわいせつ事件の数として表れているのです。
文科省は「児童生徒とSNSでの私的なやりとりを禁じるなど、予防的な取り組みを進めたい」(JIJI.COM/2020.12.22配信)としていますが、そういう対症療法的な発想で問題を解決しようとするのではなく、教員養成そのものの在り方を根本的に考えないといけない時期にきていることは確かです。
読んでいただき、ありがとうございました。
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