「18歳の自衛官候補生が自動小銃で上官と隊員を殺してしまいましたね」
「最近は衝撃的な事件が多いのですが、これも驚きましたね」
「上官に対して何らかの恨みがあったので撃ったというところまでは分かりますが、25歳の隊員は間にいて邪魔だったから撃ったと言っていますよね」
「そういう理由で人を撃ちますかね。驚きです」
「何が原因なのですか?」
「彼がどのような家庭で育ち、学校教育をどのように受け、自衛隊にどうして入ろうと思ったのか、その辺りを調べないと分からないですね」
「週刊誌が書くでしょうね。18歳なので、多少配慮をして書かないといけないでしょうね」
「週刊誌は家庭環境を中心に書くでしょうね。本来は、学校と家庭の両面からのアプローチが必要です」
「自衛隊内部の教育のあり方については、いかがですか?」
「実際にこういう大変な事件が起きた訳ですから、カリキュラムの見直しをする必要があるかもしれません」
「4月に入ったばかりなのに、実弾を撃たせているので、それには驚きました」
「そういうことを含めて、総点検をするでしょうね。私はこの事件を聞いて『ケーキの切れない非行少年たち』の本を本棚から引っ張り出しました」
「最近、ナイフを持って人を切りに学校に入った少年はいましたけど……。何か思うところがあったのですか?」
「断片的な情報しか入ってきていませんが、18歳の彼は素行が悪いと言われ、コミュニケーションが苦手だったそうですね。そして、25歳の隊員を撃ったのは自分の都合です。素行の悪さ、コミュニケーション下手、自分勝手で思い付きで行動、これら3点は非行少年に共通することなんです」
「ここからが本論です ↓ 表紙写真は「gooニュース」提供です」
アイデンティティが確立されていないのでは
現代日本のような自由な社会では、アイデンティティを確立させることが一番重要です。LGBT法でアイデンティティを使うのではなく、普段の学校教育の中で子供たちを指導する一つの方向性ということで普及をして欲しいと思っています。
お金さえあれば快適に暮らせる社会。日本は戦争もなく、子供たちにとって天国のような社会。そのように大人たちは思っているかもしれない。ただ、それは大いなる勘違いです。そのような大人目線ではなく、子供の目線から今の社会を見ると、誘惑物が多すぎて戸惑うことが多く、方向を定めて落ち着いて生きていくことが出来にくい、息苦しい社会となっています。
自由が多いと何故息苦しいのか。それは方向が定まりにくいからです。自由というのは諸刃の刃で、選択肢が多ければ、必然的に迷いが多くなります。一つに絞ることが出来なければ、常に迷い、時には苦しみます。迷わないためには、アイデンティティを確立させることが学校教育では大事です。そういった作業をせずに、勉強だけ教えて済ませているのではないでしょうか。
(「地理おた部~高校地理お助け部~」)
「仕事に熱意」日本5%——米ギャラップ調査
今日(2023.6.15)の『日経』に「仕事に熱意」日本5%という衝撃的な見出しで、アメリカのギャラップの「職場環境調査」を掲載していました。仕事への熱意や職場への愛着を示す社員の割合が5%(2022年)でした。この数字は、調査した145か国中イタリアと並んで最下位です。4年連続で世界最低水準が続いています。
ちなみに世界平均が23%なので、平均と比べても相当の差があると言えます。現象があるところに原因があります。何なのか。これはアイデンティティを確立するための教育を行っていないからです。
学校は社会で生きるための知識とその子に相応しい進路を指し示してあげることが必要です。教えて、育てて、羽ばたかせることが必要ですが、教えて終わっています。卒業をして、大学に合格したので行くけれど、何でその大学、その学部かということを突き詰めて考えずに進学しただけ。その延長で就活して、良さそうと思ったところに偶々入社している。そんな感じではないでしょうか。これで仕事に熱意など入る訳がありません。殆ど、偶然的な人生を歩んでいるからです。
(「日本経済新聞」)
アイデンティティを確立した人間は熱意をもって働く
今現在放映しているNHKの朝ドラ「らんまん」は植物学者の牧野富太郎博士の半生をモデルにしたドラマです。日本で初めて植物学を打ち立てた人ですが、生まれついての植物好きです。
彼は峰屋という老舗の造り酒屋の後継ぎ息子です。時代は明治の始めの頃、家業を継ぐのが当たり前という時代です。ところが、本人は植物しか関心を持ちません。植物が好きで上京したものの、何か社会の中で生きていく術もありませんし、本人の学歴は小学校中退です。現代であれば、そこでアウトです。ところが、本人の熱意で自分の道を切り開いていきます。
偶然が重なって東大の植物教室に出入りが許されるようになります。そして、あるきっかけで自分の進むべき道が見つかります。寿衛子さん(後の奥さん)との話の中で彼はそれを発見します。心理学的に言うと、それがアイデンティティの確立ということです。その時の主人公の喜ぶ顔が画面一杯映されていました。オーバーではなく、アイデンティティの確立と言うのは、その位の喜びと確信に満ちたものです。そういう経験を本来は学校生活の中で子供たちに経験させないといけないのです。
その後は、植物標本の分類と植物雑誌を創刊するために昼夜を問わず働き続けます。植物学という名前すら未成熟な時代に、彼は昼夜を厭わず働き続けます。アイデンティティが確立すれば、あのように人は働くことができるのです。そういう生き物なのです。
学校は勉強だけ教えて終わっています。だから、「5%」という数字になってしまうのです。発砲をした自衛官の候補生も、きちんとアイデンティティが確立されず自衛隊に入所したと思います。何のためにそこにいるのかが分からないと、少しの困難に遭遇しただけで予測不可能な行動に走る人がいるのです。
今回の事件は学校教育の問題として捉えるべきだと思っています。
(「徳島新聞」)
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