
「新入社員がドンドン辞めていく時代になりました」

「あなたの会社は、どうですか?」

「私の企業は中小なので、新入社員は毎年10人位です。だから少人数で和気あいあいとしています」

「何か会社として定着の工夫をしていますか?」

「私の会社ですか? 新人歓迎会は必ず年に1回しています。その他、職場での旅行会、家族を入れての運動会くらいですね。ただ、問題は会社側ではなく、送り出す側にあるのではないかと思っています」

「確かに、そうかもしれません。受け入れ側の企業は、前以上にかなり気を使って新入社員を迎え入れるようになったと思います」

「入ってくる社員の雰囲気がここ最近は変わってきています。大学教育も含めて、それまでの教育に問題があるのではないかと思いますけど……」

「籍だけ置いて通わない学生も多いと聞きます」

「それじゃあ、何のために入学したか分からないじゃあないですか」

「入学をしてきた学生を育てるという感覚が薄い大学が多いですね」

「大学は大規模なところが多いので、どうしても細やかなところまでは気が回らないとは思います。私の感覚では、勝手に入って、自分の取りたい単位を取って、きままな時間を過ごして、適当にバイトできた良い4年間でした」

「ただ、それではこれからの時代、若者は育たないのではないかと最近思うようになりました」

「ここからが本論です ↓ 写真は「しごとの道しるべ」の提供です」
大卒新入社員の34.9%が3年以内に離職する理由とは?
厚生労働省の調査によれば、大卒新入社員の34.9%が入社後3年以内に離職していることが判明しました。この数字は過去15年間で最大であり、多くの企業や教育機関にとって深刻な課題です。これに対し、一部の新聞では「学生は就活の質を高めよう」(「就活のリアル」『日経』2025.2.17日付)と提言していますが、本質的な問題は、若者のアイデンティティが十分に確立されていないことにあるのではないでしょうか。下のグラフを見て欲しいのですが、3/4の人がミスマッチに不安を持っています。これだけ多いということは、アイデンティティの問題と考えて良いと思います。
アイデンティティとは、自分が何者であり、どのような価値観や目標を持っているのかを理解することです。これが曖昧なまま社会に出ると、職場での人間関係や業務に対するモチベーションが低下し、結果として早期離職につながります。特に現代の若者は、多様な価値観や選択肢に囲まれて育ったため、自己理解を深める機会が不足している傾向にあります。また、就職活動そのものが形式的になりがちで、学生が本当に自分に合った仕事を見極める時間が限られていることも問題です。例えば、短期間での企業説明会や面接では、企業の文化や働き方を十分に理解することが難しく、結果として「思っていた仕事と違った」と感じるケースが多発しています。
このような状況を改善するためには、単に就職活動のスキルを磨くのではなく、学生自身が自分の価値観や適性を見極めるプロセスを支援することが必要です。大学やキャリアセンターは、学生が自己理解を深め、将来のキャリアに対する明確なビジョンを持てるよう、より充実したサポートを提供すべきでしょう。
(「ハフポスト」)
大学はアイデンティティの確立を支援すべき
就職活動の広報が毎年3月1日に解禁される中、各大学は学生と企業のミスマッチを防ぐための取り組みを強化しています。しかし、単に企業との接点を増やすだけでは根本的な解決にはなりません。重要なのは、学生が大学在学中に自分自身のアイデンティティを確立することであり、それが将来的な職業選択の基盤となります。
アイデンティティの未確立は、就職活動だけでなく、大学生活全般にも悪影響を及ぼします。例えば、大学入学後に不登校になる学生や、社会との接点を失ってひきこもり状態に陥る若者も少なくありません。こうした問題の背景には、自分が何をしたいのか、どのように社会と関わりたいのかを理解できていないことがあります。このため、大学は学業だけでなく、学生の自己理解と自己成長を促進するプログラムを提供するべきです。たとえば、キャリアガイダンスやカウンセリングを通じて、学生が自分の強みや価値観を見つける手助けをすることが考えられます。また、さまざまな分野のプロフェッショナルとの対話や職業体験を通じて、学生が将来のキャリアを具体的にイメージできるようにすることも有効です。
さらに、学生同士のコミュニケーションの場を増やすことも重要です。グループワークやディスカッションを取り入れることで、異なる価値観に触れる機会を提供し、自己理解を深めるきっかけを作ることができます。大学は単なる知識の提供者ではなく、学生が自分自身を発見し、社会で自信を持って生きていけるよう支援する場であるべきです。
(「地理おた部~高校地理お助け部~ライブ」)
大学教育の見直しが求められる時代
少子化や社会の変化に伴い、大学は今まさに「淘汰の時代」を迎えています。この厳しい競争を生き残るためには、各大学が教育の質を向上させ、学生にとって魅力的な学びの場を提供する必要があります。そのためには、従来の講義中心の授業から脱却し、より実践的で多様な学習機会を導入することが不可欠です。
まず、学生の声を反映させるために、アンケート調査を積極的に活用すべきです。学生が「役に立たない」と感じる講義を見直し、社会で求められるスキルや知識を身につけられるカリキュラムに再編成することが求められます。原書購読も良いのですが、それを1年間続けるのではなく、バリエーションを持たせた講義の工夫をさせるような態勢づくり、さらに、他学部の授業を自由に選択できる制度を導入することで、学生はより幅広い視野を持つことができます。
また、学生が孤立しないための工夫も重要です。例えば、帰属クラスを設けて担当教員を配置し、定期的にオリエンテーションやグループ活動を実施することで、学生同士や教員との交流を促進します。これにより、学生は学業だけでなく、人間関係の中で成長する機会を得ることができます。
さらに、教育の現場を社会とより密接に結びつける取り組みも必要です。他大学の教員や企業の専門家を招いた対話型授業、企業や地域の職場見学、インターンシップの拡充などを通じて、学生は現実の社会に触れ、将来のキャリアに対する理解を深めることができます。このように、大学は学問だけを教えていれば良いとするのではなく、学生が社会で自立し、活躍できる力を育む場としての機能も考える時代です。門と守衛によって厳しく外部の人間を遮断するような大学が日本には多いのですが、市民が気軽に講座を聞くことができるような雰囲気を構築することも、これからの時代の大学に求められると思っています。(下のポスターで紹介しているシンポジウムは来月の3/6に行われます。会場の早稲田大学は、一般の市民が夜でも普通にキャンパスに入れる開放的な雰囲気があります)。それと同時に、大学教育を学生本位に変えていく、その努力が求められています。
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