「前回のブログで、アメリカ人からすれば、日本人も中国人、韓国人も違いは分からないと言われましたよね。確かに、そうだと思いました」
「我々が思っている以上に、アメリカは日本を客観視していると思います。心理学で言うところの「投影」が働いてしまっていて、アメリカを誤解しているような気がしています」
「「投影」というのは、自分が相手を思っているように、相手も自分を思っているはずだという心理状況ですか?」
「そうですね。安保条約を結んでくれたから、アメリカは日本のことを守ってくれるはずといった誤解が蔓延している気がします」
「安保条約が結ばれた経緯を知らないからではないでしょうか?」
「そうだと思います。すでに70年以上経っているということもありますし、結ばれた事情が正確に国民に伝わっていないと思われます」
「どうして、そのように思うのですか?」
「政治家や識者の発言、さらには教科書の記述などを総合的に判断して、そう思っています」
「教科書は何て書いているのですか?」
「山川の日本史教科書の記述を紹介します――「平和条約の調印と同じ日、日米安保条約が調印され、独立後も日本国内にアメリカ軍が極東の平和と安全のために駐留を続け、日本の防衛に寄与することとされた」。問題なのは、後半の記述です」
「「日本の防衛に寄与」という点ですね」
「そうですね。トランプさんなら、寄与するかどうかは状況次第と言うでしょうね」
「バイデン大統領は、どうですか?」
「彼は明言せずに、言葉を濁して終わると思います」
「ここからが本論です ↓ 表紙写真は「言論NPO」提供です」
エコノミック・アニマルと言われた時代
高度経済成長の時代に、当時の日本人は「エコノミック・アニマル」と言われました。元外交官の多賀敏行氏が「『エコノミック・アニマル』は褒め言葉だった」(新潮新書、2004)という本を出していますが、褒め言葉であろうと否とに関わらず、世界の人から経済のこと、つまり金儲けに敏感な種族と見られていたということです。
高度経済成長が1973年のオイルショックまで続きます。倍々ゲームで経済が成長し、1980年代は多国籍化が進んだ時代です。企業は競って海外進出します。ただ、それはあくまでも民間企業の動きなので、国民の生活面、文化面から歴史を見ることとします。
1990年度の『通商白書』には、当時の日本の下水道普及率、公園の1人当たりの面積のアメリカ、西ドイツとの比較が掲載されています。それを見ると、下水道普及率はアメリカ、西ドイツの約半分、公園の1人当たりの面積はアメリカの半分、西ドイツの1/3です。そして、労働分配率を調べると、1975年辺りから1990年にかけてコンスタントに減っています。つまり、労働者に賃金として分配していた割合が減らされていたということです。これらを総合すると、当時の政府は国民よりも企業に顔を向けていたことが分かります。国の支援を受けるようなかたちで企業は海外進出していったのです。
(「Adobe Stock」)
「日本脅威論」が湧きあがった時代
1980年代後半から、欧米で日本脅威論が持ち上がります。1989年の『ビジネス・ウィーク』に世論調査の結果が出ていますが、アメリカ人の実に68%が日本の経済的脅威を感じていたことが分かります。ソ連の軍事的脅威がそれよりはるかに少ない22.9%です。実際に、そのしばらく後にソ連は崩壊していくのですが、「核」よりも日本経済の「襲撃」を恐れていたのです。
トランプ元大統領はビジネス面で頭角を現した人ですが、彼は現在78歳なので、日本脅威論の頃は50歳代半ばの働き盛りの頃です。日本製鉄が昨年12月にアメリカ有数の鉄鋼メーカー・USスチールの買収計画を発表した途端にトランプ氏が即座に「私だったら絶対に阻止してみせる」と言いました。
日本製鉄の橋本英二社長は「アメリカにとってのマイナスは私の頭では考えつかない」と1月の記者会見で発言しましたが、日本企業による大型買収と聞いて、かつての時代の日本脅威論が頭をよぎった故の反応だったと思っています。一種の条件反射的な反対だったのです。
(「トウシル」)
「もしトラ」に備えて、彼の心情を読む必要あり
「もしトラ」も大いにあるとのことで、今のうちから日本も準備しなくてはいけないのではないかという意見が出始めました。彼の発想はビジネスマンであり、「アメリカンファースト」が基本的立場です。「アメリカンファースト」なので、在日米軍を引き揚げる旨の発言を1期目の時にしたことがありますが、今の世界情勢を考えると、それは言えないと思っているはずです。
何のための在日米軍なのか。トランプ氏は、中東を睨みながら中国と日本の監視のために必要と考えているでしょう。安倍元首相との個人的交流もあり、かつて程ではないにしろ、日本に対しても多少は警戒感を持って接すると思います。
ただ、何と言っても中国に対して一番の警戒感を持って臨むと思われます。それがアメリカの国益に適うと考えるからです。彼が問題意識を持っているメキシコとの国境線からの違法移民の流入。最近は、中国人の違法移民が多く、年間3万人とのことです。軍事的にも南シナ海で台湾、フィリピン、日本に対して威圧的な態度をとっています。ウクライナは出来ればNATO加盟のヨーロッパ諸国で何とか対応して欲しい。対中国で精一杯と思っているでしょう。
(「Yahoo!ニュース-Yahoo! JAPAN」)
読んでいただきありがとうございました。
よろしければ「ブログ村」のクリックをお願いします。
↓