「前回は、認知戦という話でした。全く知らなかったので、勉強になりました。ところで、情報戦との比較表を載せていましたが、今一歩違いが分からなかったのですが……」
「認知戦と情報戦の大きな違いは、ターゲットです。認知戦は出来るだけターゲットと内容を絞って発信します。情報戦はベクトルの方向は確かですが、範囲がアバウトです」
「情報戦は「前座」、認知戦はこれから本番という時に発するものというイメージでしょうか?」
「大体、そういう認識で良いと思います。ちなみに、プロパガンダは情報戦の範疇に入ります」
「要するに、何らかの目的行動がすでに決まっていて、それを有利に展開するために相手に対して行う言論攻撃なんですね」
「言論攻撃というか、行動と言論を合わせた攻撃です。ロシアがウクライナ侵攻に向けて認知戦を展開しています」
「素朴な疑問ですが、ウクライナはロシアに対して、そういった仕掛けを充分警戒していたのではないでしょうか?」
「警戒されていることは充分承知していますので、必ず「行動」から入ります」
「どうして、行動から入るのですか?」
「行動は必ず何らかの結果が生じ、全世界に対して実際に起きたということでアピールできます。そして、この結果に対して、このように解釈したということで、次の行動に移りやすいのです」
「その行動に続いて、言論攻撃が行われるということですね」
「そうですね。ウクライナ政府に対しては、東部の親ロシア派への攻撃をしたという非難メッセージが出され、ロシア内の国民に対しては、この攻撃は正義の戦いであることを言う必要があります。その際の理由が、「非軍事化」と「非ナチ化」です」
「ニュースではネオナチという言葉で紹介されていますけど……」
「「ネオ」というのは「新」という意味です。新ナチズムということになるでしょうか。ウクライナ政府は身に覚えがないのですが、政府内に意志統一がなされていないと対応が遅れることになります」
「要するに、かつてのドイツのナチズムが現代のウクライナで蘇って、ロシアの同胞を苦しめているというシナリオを発進したいということですね」
「そこまでのシナリオが出来てしまえば、後はウクライナで苦しんでいる同胞を助ける正義の戦いになります」
「大手をふって軍隊を動かすことが出来るということですね。ここからが本論です ↓」
認知戦は突然始まる
情報戦は日常普段的に行われていますが、認知戦は期間限定のものであり、突発的なものです。そこが大きな違いです。一種の人工的な災害みたいなものです。
自然災害はいつ起きるか分からないが、必ず来るものなので、それに対して備えが必要ということで訓練が欠かせません。
認知戦も人工的な災害であり、今の状況を考えると、そろそろ警戒レベルに入っても良い位の状況になっていますので、政府関係者はシュミレーションをした上で警戒態勢に入った方が良いと思います。
(「ニコニコ」)
中国からの認知戦の可能性が一番高い
一番可能性があるのが、尖閣諸島でしょう。
認知戦の最初は、何らかの被害を演出する必要があります。中国の漁船が沈没してしまった、というような先行事実を作ります。一番良いのは、日本の巡視船にぶつかってもらう場合ですが、相手がその「期待」に応えて行動してくれる訳ではありません。
日本の巡視船が中国漁船にぶつかることは、まずあり得ませんので、それを自作自演します。中国の漁船と日本の漁船に見立てた中国の船が衝突したという「事件」を尖閣諸島の近くで起こします。中国の漁船は大破して、乗組員は海に投げ出されます。
「日本の漁船」は、その乗組員たちを助けるのですが、中国の人たちを日本に連れて行く訳にはいかないと判断して、近くの尖閣に船を付けて、そこで中国人乗組員を降ろします。
その情報を受けた中国の海警局の船が、同胞を助けるために尖閣諸島に急行します。非常事態なので尖閣に向かうことを日本政府から公式に許可を得ます。許可を得る際に、日本政府は様々な条件を付けてくるでしようが、すべて快諾します。
(「NEWSポストセブン」)
尖閣侵入を実際にシュミレート
実際に尖閣の中国人乗組員を救助しますが、ここからが本領発揮となります。
海警局の船は、1隻では運べないため、もう1隻を尖閣に向かわせるとします。日本の領海に立ち入る行為なので、当然日本政府の承諾が必要です。日本政府は「人道」という言葉に弱いので、多分承諾するだろうという読みが中国側にあるはずです。
後から来た船に中国人の乗組員全員を乗せます。これで救助はすべて終わりますが、最初に尖閣に接岸した海警局の船は、そのままそこに留まります。日本政府は当然退去の話をするでしょう。中国は「全く居座るつもりはない」と言いながら、退去しようとせず時間稼ぎをします。
そのうち、尖閣の海警局の船の中で病人が出た、安静にしなければいけないので、もう一隻船と、緊急の場合に備えてヘリコプターを尖閣に着陸させるという話を持ってきます。人道的な問題が絡むので、なかなか「ノー」と言えないのですが、その隙を尽くようにして中国関係者の人たちが尖閣に降り立つようになります。そういった既成事実が積み重ねられていくことになります。
(「沖縄タイムズ」)
中国は尖閣は簡単に手に入ると思っているはず
これに合わせて、中国から認知戦のための情報が出てきます。「尖閣はもともと中国領」、「尖閣は帝国日本が中国から武力で奪い取ったもの」といったデマ情報を世界に向けて発信します。そして、日本国内のマスコミを使って、中国のプロパガンダを国内に向けて発信します。
それと並行して、尖閣に降り立ったヘリコプターが故障したとか、海警局の船が故障したとかいう口実を設けて、次々と中国の船が資材をもって尖閣に接岸します。そのうち、尖閣に構造物が設けられ、そこに中国関係者が居座るようになったらもうアウトだと思った方が良いでしょう。そこから、中国関係者を排除することは至難の業となります。相手は全面戦争止む無しの気持ちで向かってきますので、それに対抗できる位の国民世論を形成できるかということです。
常道からすると、中国は最初に台湾を取りに来ると思いますが、ウクライナの状況を見て方針を変えるのではないかと思っています。つまり、いきなり台湾ではなく、まず「小者」の尖閣を攻め落とす。アメリカがどう出るかが分かります。上手くいけば尖閣を足掛かりにして台湾攻略はやりやすくなります。仮に失敗しても大した痛手にはならず、台湾侵攻の際に教訓として生かすことも出来ます。認知戦の効果のフィードバックも含めて、一石二鳥どころか一石三鳥の効果があると思うかもしれません。
日本政府は、全くといって良いほど何も考えていないと思います。対策を具体的に練る段階です。
(「笹川平和財団」)
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