「岸田首相が次元の異なる少子化対策を出しました。次元の異なるというのは、どういう意味ですか?」
「今まで少子化対策を行ってきましたよね。エンゼルプランという名前だったと思います」
「何年前の話ですか?」
「ちょっと待ってね。今、調べるから。エンゼルプランが1994年、新エンゼルプランが1999年ですね」
「その時の効果はどうだったのですか?」
「殆んど効果がなかったので、それで今度は異次元ということで、予算も多くして、継続的に少子化対策をしようということだと思います」
「昨日(4/7)はこども未来戦略会議を開いたそうですね」
「メンバーを見ると、様々な方面の方を集めて意見を聞こうという姿勢が表れていますが、自治体関係者を何人か入れるべきでしょうね」
「それは、どういう意味ですか?」
「どこかの自治体で男女が実際に生活する訳ですが、そこに住環境、育児環境、教育環境さらには働く環境などが揃って始めて子供を育ててみようと人は考えるからです」
「だから、逆にそういうものが揃っていないところに、予算だけをバラ撒いても効果はないということですね」
「財源を議論したみたいですが、日銀の国債保有残高が過去最高を更新している状況なので、殆ど余分に使えるお金がないのです」
「有効的なお金の使い方を考えなければいけないということですね」
「だから、はっきり言って給食費の無償は殆ど意味がないので考える必要はないのです」
「ここからが本論です ↓ 表紙写真は「東洋経済オンライン」提供です」
なぜ、第三次ベビーブームが起きなかったのか
日本は戦後に2回のベビーブームを経験しています。第1回目は戦後すぐの時代です。第2回目は1970年代の前半です。そして、その後第3次ベビーブームが起きるのではといった観測がありましたが、結局起きませんでした。何故なのか。要するに、戦後すぐの時期から、官民で協力して人口抑止に動いたからです。
河合雅司氏が『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書.2015年)という書で、明治から現在まで日本が人口問題に対してどのように対応してきたのかということを実証的かつ詳細にその歴史を辿っています。その研究によりますと、戦後すぐの時期から官民あげて人口抑止に動いています。河合氏はそこにGHQの意図が働いていたのではないかと考えているようですが、確証はありません。
今でこそ何食わぬ顔で新聞社は少子化対策と言っていますが、実は今から40年位前は全く逆のことを言っていたのです。例えば、『読売新聞』は「危機感たりぬ日本 現状維持には一夫婦0.7人」(1979.7.5日付)という記事を載せています。「人口静止」を提案した大学教授もいたのです。今は、180度転換しようとしているのですが、戦後一貫して日本は「子どもいらない政策」を取り続けてきた国です。だから、国際的に見て、教育費や保育費が高いのです。乱暴な言葉で言えば、自分たちで勝手に作った子供なんだから、自分たちで金の面倒を見ろということだったのです。
ただ、その抑止が効きすぎてしまって思ったより早く少子化に進んでしまって、今は慌てているというのが実際のところです。そんなこともあり、第3次ベビーブームどころか、2000年の頃は少子化対策を考えるような状況だったのです。
(『毎日新聞』1974.4.16日付/[PDF]日本の人口問題)
「次元の異なる少子化対策」を発表
政府は3月31日に少子化対策の試案を発表しました。実は2004年の「少子化社会白書」に原因として晩婚化・未婚化の進展、経済的不安定な若者層の増大、育児や教育コストの負担増が挙げられており、対策として育児手当、保育サービス、育児休業の取得促進などが掲げられています。多少のつけ加えはありますが、内容的に現在と殆んど変わってません。
約20年前の対策で上手くいかなかったのは、財源確保が出来ず、その規模も小さなものだったという認識のように見受けられます。そのため、岸田首相自ら「こども未来戦略会議」の設置を表明した上で、「将来的な子育て予算倍増の大枠を示したい」と官邸記者団に述べています。
広く国民の理解を得て、財源を確保した上で、広く長い対策を行えば効果は上がると考えているようです。
(「日テレNEWS」)
自治体とタイアップして進めることが重要
日本の人口減対策で重要なことは、自治体の状況に合わせながら保育・子育て支援をすることです。というのは、保育や教育費は原則的に自治体負担で行われているからです。そのような状況の中で、国が自治体を乗り越えて手当てを支給した場合、整合性がとれなくなることも出て来ます。例えば、給食費の無償化が政策項目に出ていますが、都内の区によってはすでに実施している区もあります。
自治体財政に余裕があるところと、そうでないところがあります。中には、余裕がないために統廃合を計画しているところもあります。東京都は基本的に財政に余裕があります。そういう自治体に配布する予定だった教育予算を、余裕がない地方に回すという算段をする必要があるのです。形式的平等の原理ではなく、実質的平等の考え方を使う時です。
未来戦略会議に自治体関係者を呼んだ方が良いと言ったのは、そういうことなのです。
(「イラストAC」)
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