「岸田内閣は「デフレ脱却」を掲げましたが、そもそも現在の日本はデフレなんですか? 日々の買い物をしている私にとって、生鮮食料品はかなり値上がりしたという実感があります」
「要するに、デフレどころか、インフレが起きているのでは、という意見ですよね」
「だって、野菜や果物、値下がりしたものは何もないと思いますよ。家計簿つけているので、それは証明できます」
「政治家はデータを見てモノを言い、あなたは主婦の立場からモノを言うので、喰い違いが起こると思います」
「どちらが、正しいのですか?」
「2022年のデータを見る限りデフレだと思います」
「そうなんですか! ただ、世界的にはインフレですよね」
「日本だけがデフレで、他の国はインフレという珍現象が起きているのが実際なのです」
「俄かに信じられないような話ですが、それは確かなのですか?」
「疑う気持ちは分かります。私もそう思ってIMF(国際通貨基金)のCPIインフレ率のデータ(2022年)を調べました」
「どうでしたか?」
「IMF加盟192カ国のインフレ率ランキングというのがあって、実は日本は何と192位の最下位なのです (下の棒グラフ参照のこと)」
「そのデータを見て、岸田首相は「デフレ脱却」と言ったのですね。ここからが本論です ↓ 表紙写真は「mattoco Life」提供です」
デフレが何故ダメなのか?
岸田首相は所信表明演説で「経済」を連呼し、「デフレ脱却」を言いました。ただ、庶民感覚からすれば、デフレは大歓迎です。賃金が停滞していますが、物価も殆ど上がらず今まで通りの生活を維持していけば大丈夫という安心感があります。何で首相が力説するのか、よく分からないというのが庶民の感覚だと思います。
首相はマクロの視点から日本経済を見て、彼女はミクロの視点からモノの値段の推移を見ていたのです。見え方が違うのは、ある意味仕方がないのです。
問題なのは、デフレが何故ダメなのかということを岸田首相が一言も説明していないことです。そこが一番問題なのでしょう。結論から言いますと、2%がベストの数字なのです。2%からプラスに離れすぎても、逆にマイナスの方向で離れていても良くないのです。その2%はどこから来た数字なのかと言われそうですが、人類の経験則から来た数字なのです。
(2022年インフレ率/「東洋経済オンライン」)
なぜ日本だけがデフレが進むのか
CPIインフレ率が何故日本は、限りなくゼロに近いのか。2022年日本で値上がりした品目を値上がり率の高い順番に並べると、灯油、都市ガス、電気代、ガソリンです。日本政府はこれらを補助金によって抑え込みました。他国はエネルギー価格が高騰した分を国内価格に転嫁したのです。これがインフレとデフレの分かれ目だったのです。
ただ、自分で補助金を使って価格を抑え込んでデフレにしておいて、「デフレ脱却」と言いながら戻し減税をするというのもおかしな話です。一人で猿芝居をしているようなものです。
(「時事エクイティ」)
経済環境を整えてからバラ撒かないと全て無駄になる
デフレが何故起きているのかが分からず、ただ単にデフレだからということで財政出動しているように思われます。原因を確認しないまま、とにかくデフレなので、カネを市中に流そうとしているのが、今の状況です。
高校の政経で習った程度の経済知識しかないのかもしれません。確かに、日本経済が閉ざされている空間であれば、その方法が有効に作用することもあるでしょう。ところが現在はグローバル時代です。国内でばら撒いたカネが国境を越えていくことがあるのです。国内でばら撒く場合は、国内でほぼ消費されるであろうという条件をつくってからバラ撒くべきです。円安、低金利という経済環境でのバラ撒きは、砂漠で水を撒くようなものです。
そこで実際にデータを見てみました。アベノミクス第一の矢が異次元の金融緩和ということで、2012年から2021年3月末まで522兆円の資金を金融市場に流し込んできました。そのお金が一体どこへ流れていったのか。「ほぼ全額相当額が海外に流れ出たことは歴然としている」(田村秀男「日曜経済講座―元凶はデフレの本質無視にあり」『産経』2021.8.22日付)。下のグラフから、資産がその10年間で600兆円位増えているのが分かると思います。全部が全部とは言いませんが、デフレ対策として国内につぎ込んだお金と同額の資産が国境を越えてしまっていたということです。経済に国境はありません。カネは金利が高い方向に流れます。つまり、国内の経済活性化には、殆ど役立っていなかったということです。
アベノミクスの検証をきちんとせず、性懲りもなく同じようなことを今の内閣でやろうとしているのです。
(「時事エクイティ」)
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