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高校の文・理コース分けは時代に合わない ―— 文理分けによって80%の子供が数学を放棄している / AI社会に必要な人材を育成できなくなる

女性

「俯瞰力という話が前回ありましたが、意味的に少し分かりにくいと思いました」

「成る程。英訳を紹介します。英語では、birds eye view という表現をします。鳥のように高くから眺めれば、違ったものが見えると言っています」

女性

「ただ、本来はポジションを変えなくても、俯瞰的に見ることが出来るようにならなくてはいけないのですよね」

「そうですね」

女性

「俯瞰力というのは、訓練によって身に付くものなのですか?」

「教育プログラム(教育課程)の中で習得できると思っています。ただ、日本の高校や大学の専門の問題があると思っています」

女性

「専門の問題というのは?」

「高校2年くらいから、文系、理系に分けて、受験教育をしますよね。個人的には、あれが問題だと思っています」

女性

「文系、理系分けという考えは、日本だけだと聞いたことがあります」

「一種の「促成栽培」的な発想です。必要な分野の科目の単位だけを取得させて、早く社会で活躍してもらおうという考えがそこにあります」

女性

「そろそろ転換する必要がありますか?」

「現代のように変化が激しい時代ですから、学びに偏りがあれば、競争から放逐される恐れがあります」

女性

「日本の競争力が落ちているのは、そんなことも関係があるのでしょうか?」

「ないとは言えないと思います。マークシート入試、文理の偏ったカリキュラム。そんな時代ではないと思います」

女性

「ここからが本論です ↓」

 文系、理系分けは、もう止める時代

専門分野を大学入試の前から絞り込むのは、長い目で見ればあまり良いことではありません。ただでさえ俯瞰力のなさを欠点として有している国民です。文理に関係なく、様々な学問分野に親しむだけでも視野は広がると思います。

そもそも文理分けという発想は日本だけのものです。欧米には、そういった発想はありません。学問というのは、根本の部分ですべて繋がっていると考えているからです。大学で情報科学を専攻しながら、日本の中世を詳しく勉強したいという人がいても良いし、その学びが新しい発想に繋がるかもしれません。

かつての時代であれば、若かりし頃に学んだ知識や技術で人生を乗り越えることができたのかもしれません。これからは、そういう訳にはいきません。社会がどのように変化しても対応できるよう、若き頃にできるだけ広い分野の学問体系に触れておく必要があるのです。

 

 人材育成の間違いが「デジタル赤字」を生んでいる

世界の時価総額上位から日本企業の名前が消えて数年が経ちます。原因は明らかです。富を創造する高度人材を育成できなくなったからです。工業社会と高度情報社会とでは、人材育成のあり方が当然違います。工業社会であれば、規格品をいかに正確に大量に作るかが勝負の時代です。人材を促成栽培で育てることも可能だったでしょう。

工業社会であれば、底辺を広げることを考えれば良いのですが、高度情報社会は頂点を高くすることを考える必要があります。何故なのか。「ITの世界では強者が市場を独占する」(ハル・バリアン『「ネットワーク経済」の法則』)からです。特許によって抑えられてしまうからです。実際にITの世界は特定のグローバル企業によって独占状態です。

ようやくここに来て、「デジタル赤字」が話題になってきました。昨日のNHK「クローズアップ現代」「デジタル赤字」の問題でした。昨年の日本の「デジタル赤字」の額は約5兆円です。観光立国ということで稼いだ3.5兆円が吹っ飛ぶ赤字額です。「デジタル赤字」というのは、日本人がグーグルやマイクロソフトといった海外のIT企業に支払っているサービス料金です。一歩先を超されたために、このような赤字が生まれているのです。この辺りも、日本の指導者の俯瞰力のなさの所以です。指導者は次の時代がどういう時代なのかを読んで国民に問題提起する、そして場合によっては制度設計をする必要があるのですが、そういう能力をもった指導者が日本にいなくなったということです。

(「朝日新聞デジタル」)

 文理分けによって80%の子供が数学を放棄している

国際学力テストの数学の成績とその国の経済成長率や労働生産性は正の相関関係にあることが統計上明らかなのに、日本だけがその「法則」に当てはまっていませんでした。PISAのテスト(下のグラフ参照)で日本の子供たちの数学の成績は常にトップクラスです。ところが、経済成長率や労働生産性が低いのは何故なのか、という問題提起が出されています。

その答えは意外なものでした。要するに、PISAの対象者は中3ですが、その対象者の8割位の子供たちがその後、数学の勉強をしなくなるからです。高校3年生全体に占める理系コースの比率は約2割です。数Ⅲの選択者もその位です。これでは、小学校で算数を6年間、中学から数学を3年間教えた意味がありません理系女子が少ないという問題ではなく、男女を含めた全体的な問題です。

これからの時代はAI(人工知能)の時代です。AIを使いこなすだけではなく、AIを進化させ、実用化させるという社会的課題がありますAIの理解に必要な微分が数Ⅲの範囲であることを考えると、文系を選択した時点で時代に乗り遅れる可能性も出てきます。制度的な構築によって、それを防ぐことが出来る問題です。早急に取り掛かる必要があると思います。

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