
「家で飼っていたアゲハの幼虫が蛹(さなぎ)になって、今日の明け方蝶々になって飛んでいきました」

「去年も、そんなことを言ってましたよね。幼虫を飼うのが好きなんですね」

「好きというか、みかんの木に産み付けられた卵が成虫になって飛び立つ間に、結構な割合で鳥に食べられます。かわいそうなので、家で飼ってあげているのです」

「そうなんですね。だけど不思議ですよね。青虫が蝶になるなんて……」

「卵からかえった時は黒いのですが、何回も脱皮を重ねて青虫になります。子供には、あなたも脱皮をして大きくなるのよ、今までの自分を捨てて成長してね、と言っています」

「さりげなく教育をされていますね」

「自然から学ぶことが無くなってきていますので、よい機会かなと思っています」

「ダーウィンも言っています。「強い種が生き残るのではなく、変化する種が生き残る」と」

「なるほど、含蓄のある言葉ですね。私にもあてはまるアドバイスになっています」

「私も含めて、すべての人にあてはまるアドバイスかもしれません。入社した方々に、伝えてあげて下さい」

「そうですね。タイミングとしては良い時機だと思います。ここからが本論です↓ 表紙写真は「ビットセンス」提供です」
高就職率の裏に潜む「早期離職」の現実
文部科学省と厚生労働省は、2025年3月に卒業した大学生の4月1日時点での就職率が98.0%だったと発表しました。この調査は1997年から継続されており、昨年の99.1%に次ぐ高水準です。しかし、その一方で見過ごせないのが「早期離職率」の高さです。
厚労省のデータによると、2021年卒の大学生の入社3年以内の離職率は34.9%で、前年より2.6ポイント上昇しています。実に新卒社員の3人に1人が、3年以内に退職している計算です。この傾向は1995年以降、ほぼ一貫して続いています。
その背景には「就職活動の早期化」によるミスマッチがあります。企業側の都合で内定時期が前倒しされ、学生は十分な企業研究や自己分析ができないまま内定を受け入れてしまいます。一度内定を得たことで緊張感が薄れ、妥協的な選択をしてしまう学生も少なくありません。こうした構造が、結果として早期離職を招いているのです。
(「カイラボ」)
売り手市場の落とし穴と就職活動の本質
新卒者の「ファーストキャリア」が早期退職で始まるのは望ましいことではありません。その原因については、企業側に7割、学生側に3割の責任があると考えます。経団連がかつて定めた就職活動スケジュールは、広報活動が3月1日、選考活動は6月1日、内定は10月1日以降でしたが、現実にはこのルールはあってないような状態だと言われています。特に人材獲得競争の激化により、「早い者勝ち」的な採用が常態化するようになりました。
しかし、問題は企業だけではありません。大学や学生側の姿勢も問われるべきです。一見、就職戦線は「売り手市場」とされていますが、全体的な傾向に過ぎません。実際に複数の内定を得ている学生は全体の2割程度とされ、その多くは自分の強みや志向を的確に理解している学生です。
就活は「お見合い」に例えられます。企業と学生が互いの特徴や目的を理解し、マッチングを図る過程です。にもかかわらず、早期化と情報不足が早期離職を生み出しているのが現状です。
採用基準に求められる「論理的思考力」
企業が新卒採用を行うにあたり、注視すべき能力は「勉強の頭の良さ」ではなく、「仕事の頭の良さ」です。後者には、コミュニケーション能力と論理的思考力が含まれます。記憶力と努力で成績を上げる受験勉強とは異なり、仕事では相手の関心に応じた会話や、複雑な問題を整理して解決に導く力が求められます。実際に、コミュニケーション能力が高い学生は20人に1人程度だとも言われています。
加えて、日本の大学入試は記憶重視の傾向が強く、論理的思考力の評価が十分に行われていません。そのため、「有名大学卒=優秀な人材」とは限らず、企業が求める人材とのミスマッチが起きてしまいます。
海外では、オックスフォード大学やケンブリッジ大学のように、模範解答がない問題を通じて思考力を見る試験が導入されています。たとえば「ロックバンドをどう売り出すか」や「人間に目が2つある理由」など、正解が一つではない問いを通じて、論理構築力を試します。この世界は因果関係で成り立っています。将棋のように最初の指し手を決めて、論理の「駒」を一つひとつ着実に動かします。現代社会や企業活動では、前例のない問題への対応が日常茶飯事です。だからこそ、採用する企業も、そうした能力を見抜く工夫を日頃から重ねる必要があるのです。
(「Mission Driven Brand」)
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