「3回ばかり不登校のことを話題にして話をしてきました。解決の方向性も提示できたと思っています」
「一言で言えば、中央から地方へ権限を移すということですよね」
「そうですね。教育は現場があります。子供たちがいる現場を中心にして、すべてをそこから考えるということでしょうね」
「要するに、中央から地方へということだと思いました。 そのように、発想を切り替える必要があるということですね」
「そうですね。そしてこれからは、学校とは何なのか、ということが強く問われる時代だと思います」
「勉強をして、友達と楽しく過ごす場というのが、私の捉え方です」
「これからの時代は、それだけではダメだと思っています。これからは子供たちのアイデンティティを確立するということを教える側は意識しなければいけないと思っています」
「アイデンティティという言葉をよく聞きますが、自己肯定感のような意味ですか?」
「日本語に直すと自我同一性ですが、今は原語でそのまま使うのが一般的です。意味としては、自他ともに認める本人の特性です」
「進路指導とは違うのですか?」
「具体的には、そうなると思います。ただ従来の進路指導は、本人の特性というより、志望する学校と偏差値に基づいて行われる場合が殆んどだと思います」
「私の時は、そうでしたね。というか、私自身、高校生の時でも将来何をやるのかな、という感じでしたから」
「そういうことがないような指導がこれからは求められるということです」
「その辺りは本論で詳しくお願いします。ここからが本論です ↓ 表紙写真は「不登校支援センター」提供です」
アイデンティティを確立してエネルギーをもらう
2人の会話にあるように、アイデンティティという言葉は現在は普通に使われるようになっています。会社自体を世間にアピールするためのコーポレート・アイデンティティ(CI)、スクール・アイデンティティといった使われ方もします。個人においても、組織においても、アイデンティティを確立することの重要性は変わりはありません。不登校のことを追い掛けてきましたので、個人のアイデンティティに絞って話を進めたいと思います。
「自分は何者なのか」「自分は一体、何をしにこの世の中に出てきたのか」「自分はどこから来てどこへ行けば良いのか」など、誰もが思った疑問ではないでしょうか。多くの生き物の中で、人間だけが持つ疑問です。我々は、過去と未来を現在に繋げながら、さらに空間を飛び越えて思考することが出来るからです。
人間は考える動物ゆえに抱く疑問です。シンプルなように思えて、真面目に取り組もうとすると結構厄介な問題です。ただ、真剣に取り組み、本人がその回答に納得すれば、それにエネルギーをもらって前を向いて生きていけるというものです。
(「地理おた部~高校地理お助け部」)
自分を客観的に見るために必要な概念―— アイデンティティ
アイデンティティという概念を提唱したのは20世紀のアメリカの心理学者のエリクソン(1902-94)です。彼は特に現代青年にとって、アイデンティティの確立が重要課題だと考えました。何故でしょうか。
現代社会が自由で満たされているからです。一昔前の身分制社会であれば、生まれによってある程度の人生コースが定まります。日本の現代社会には、無数の職業があります。一説には約2万の職種があると言われています。その中から適職を選ぶのは至難の業です。何故なら、人は自分のことが分からない動物だからです。
人間の目は外を見るために出来ています。自分以外のものはよく見えるし、分かるのですが、自分を客観的に捉えるのが苦手です。どうすれば、正確に自己を把握できるのか。その問題意識から考え出した概念がアイデンティティだったのです。
(「改革志向のおっさんブログ」)
日本の若者は他国と比べて、アイデンティティが確立していない
アイデンティティが確立しないと、どうなるのか。羅針盤を持たないで、人生という大海原に航海に出るようなものです。羅針盤を持っていないので、常に不安がつきまとい、自分の進路に確信が持てません。そうなると、周りからの変な誘惑に乗って道を踏み外したり、引き籠ったりします。特殊詐欺の実行役のメンバーは、アイデンティティが確立していないのでしょう。自分なりの目標が定まっていないので、横道に逸れてしまうのです。
こども家庭庁が「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」を昨年度実施しました。SNSで結果を見ることが出来ます。関心がある方は見て欲しいと思いますが、調査は日本、アメリカ、ドイツ、フランス、スウェーデン(計5か国)の13~29歳の若者を対象にしたアンケートを集約したものです。報告書は200ページ位ありますが、その中で気になる状況を報告します。
「人生の価値」、「他者との温かい信頼関係」、「周りの人に認められている」「自分の人生に意味がある」、「大きな悩みごとはない」等といった問いに対して、日本の若者の回答は5か国中、最低です。何故なのか、一言で言えばアイデンティティの確立がなされていないからです。本来、学校教育の中でアイデンティティの確立がされなければいけないのに、日本の学校教育にはそのような位置づけがありません。
何故なのか。その辺りのことについて、次回のブログで説明したいと思います。
(「日本経済新聞」)
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