「今日から、また週3回(火木土)のペースで再開したいと思いますが、いかがですか。右目の調子は」
「お陰様で、痛みは無くなりました。視力は半分くらい戻った感じですかね。ところで今日は、イデオロギーを話題にしたいと思います」
「えっ、何か難しそうな話ですね。それは英語ですか?」
「イデオロギーの出自はドイツ語です。マルクスとエンゲルスが著した『ドイツ・イデオロギー』がありますが、マルクス主義思想とともに、「イデオロギー」という言葉が日本に入ってきました」
「イデオロギーを漢字に置き換えるとしたらどうなるのでしょうか?」
「「観念形態」、「思考形態」といったところではないでしょうか。ただ、訳語が確立している訳ではありません」
「思想とは違うのですか?」
「思想と訳されることもあるようですが、イデオロギーは一定の考えを志向しますが、思想はそれをさらに体系だったものだというのが私の理解です」
「そのイデオロギーについて、どういう問題意識を持っていらっしゃるのですか?」
「イデオロギーが氾濫しているように見えます。それが氾濫状態になると、正常な思考が出来なくなります。そういう意味で、少し危険な状態にあるのではないかと思っています」
「イデオロギーの響きが余り良くないのは、そんなところから来ているのでしょうね」
「イデオロギーと思想は紙一重の違いだと思いますが、私の中のイメージは、イデオロギーは軽くて敵対的なのに対して思想は重くて中立的というものです」
「何となく、意味が分かってきましたが、社会の具体的な場面を用いて説明して頂けると助かります」
「最近の事例で言えば、宗教イデオロギーと左翼イデオロギーですね」
「ここからが本論です ↓ なお、表紙は「もれっちのネクタイ日和」です」
イデオロギーというのは思い込み
作家の司馬遼太郎氏は「コップの中だけで旋回し続けるのがイデオロギー」と言います。作家ならではの感性豊かな表現だと思いますが、言い得て妙です。要するに、コップだけの閉ざされた空間、つまりその限られた世界にだけ通用する論理だと言っているのです。だから、外側からコップの中を見ている人は、「何を言っているのか?」、「何をやっているのか?」と呆れているということなのです。
彼は、こういう例を紹介しています。かつての時代に中国と日本に「五臓六腑の図」が出回っており、人体の中はそのようになっていると説明されていたそうです。現代と違って解剖が自由に出来ない時代です。江戸中期の漢方医の山脇東洋は幕府の許可を得て、死刑になった囚人を解剖して「五臓六腑の図」と見比べたそうです。そこで彼は図が間違っていることに気付きます。一方、明の医者は皇帝にお願いして、やはり同じく死刑囚の解剖をして「五臓六腑の図」と見比べたそうです。そこで一言、「死刑囚の内臓が間違っている」と。そして、死刑囚は悪事を働いた人、悪事を働くと内臓の配置が変化するという論理を展開したのです。
イデオロギーの住人になると、現実が分からなくなるという例です。
(「五臓六腑解剖図/ 国立科学博物館所蔵」)
日本人は「イデオロギーの住人」になりやすい
中国の医師が「イデオロギーの住人」という話ですが、傾向的には日本人の方がイデオロギーの影響を受けやすいと思われます。何故なのか。農耕民族であるがためです。一所懸命という言葉があります。武士をはじめ日本の民衆に代々受け継がれてきた教えと言えます。先祖代々受け継いだ土地を命を懸けて守り、それを子孫に遺すという意味です。そこに家族と一族の幸せと繁栄があるので、余分なことを考えずただひたすら土地を守り通せという教えです。この教えが、多くの日本人の身体の中に先祖からのDNAを通して染みわたっています。
「一所」だけを見つめて過ごします。余計なことを考えて、酒や博打といったものに手を出すと家の財産を食いつぶすことになります。言いつけをひたすら守るだけの生活。近視眼になりがちですが、それでも得ることの方が大きいと先人たちは考えたのです。
弱点は、俯瞰的にモノを見るのが苦手という点です。一方向だけを見て判断しがちだからです。オレオレ詐欺が減らない、統一教会の献金被害が出るというのは、根底にそういったことがあるからです。
(「mura_bitのブログ」)
イデオロギーが日本列島にばら撒かれている
ソ連邦が崩壊し、東ヨーロッパがそこから離反する動きが出てきたのが1990年頃です。いわゆる、冷戦終結となりました。グローバル時代、ボーダレスの時代が来たので、各国は手を繋ごうという主張も出て来ました。これでようやくイデオロギーの時代が終わったと思いきや、あにはからんやということを思い知らされる日々となっています。
ロシアや中国、北朝鮮、日本の反日政党や特定の宗教団体がイデオロギーを流しています。例えば、ロシアがウクライナ侵攻の口実に使ったイデオロギーは「反ナチ(ナチズム)」です。そして、この戦争を裏で仕掛けているのがアメリカだというものです。
アメリカ帝国主義というイデオロギーを使うのが、中国や北朝鮮、日本の共産党です。アメリカの世界制覇の野望というシナリオがあり、それに立ち向かう正義の戦いに向けての備えが必要という理屈を振りかざします。
情報戦の時代になり、イデオロギーを武器として使い始めているのです。コップの例え話を思い出して欲しいのですが、イデオロギーというのは、相手を狭い空間に押し込めることなのです。それが上手くいけば、洗脳状態なので、すべて思うがままに操ることができます。統一教会の元信者の方が1冊3千万の本を買わされたという話を聞いて、どうしてそんな高価なものを買ってしまうのだろうと思うかもしれませんが、コップの中の狭い空間に入り込んでしまったため視野が狭まり、きちんと判断出来なくなってしまうのです。そういう意味では、オレオレ詐欺も同じです。
そのコップの中から、どうやって抜け出すのか。第三者の助けを借りるのです。自力で脱することは無理だと考えた方が良いでしょう。自分に自信がある人に限って、泥沼に入る傾向があるのです。
(「表現者のイデオロギーポジションマップ/藤田新」)
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