「地域の特色を生かした学校教育をどのようにつくっていくのか、ここにきてようやく具体的な動きがいろいろ出てくるようになりました」
「中央集権の教育態勢では、駄目だといつもおっしゃっていましたものね」
「日本が工業社会であれば、昔ながらの一斉授業、マスプロ教育で良いのですが、そういう時代ではありません」
「自民党も1クラスあたりの人数を減らすべきだということで動き始めましたよね」
「コロナということもありますし、そもそもOECDの中で比較しても日本の教育条件は最低レベルです」
「保育は言うけれど、教育は言わないでは駄目ですよね」
「与党が言わない時は、野党が言えばいいのですが、彼らは政権を弱体化することしか頭にないようです」
「一番最初の話に戻りますが、地域の特色を生かした学校づくりをする場合は、どのような手続きをすればよいのですか?」
「学校教育法施行規則の第55条の2に、小学校において地域の実態に照らして、特別の教育課程を編成しても構わないという規定があります」
「それを使うのですね」
「もちろん文科省の許可が要りますけどね」
公立学校での先取り教育の実践
本来、教育課程編成権は地方に戻すのが自然の姿ですし、21世紀の時代はそうあるべきです。ただ、それを嘆いていても生産的ではないので、現行法で利用できるものは積極的に利用すべきだと思っています。学校教育法施行規則の規定を利用して、英語の先取り教育やイマージョン教育の実践を行っている学校や地域があります。
例えば、金沢市は前者についての先進的な市だと思います。教育委員会が主体となって英語の先取り教育を推進しています。それを紹介します。
1996(平成8)年度から小学校に英語学習を導入し、2002(平成14)からは3年生以上の「総合学習」の時間に小学校英語教育ということで週1時間実施しています。そして、小学校の6年生に中学1年生の英語教科書を渡しての先取り教育を実施しています。そのため、中学1年生には2年生、中学2年生には3年生の英語教科書を渡しているとのことです。
中学3年生はどうするのか、という素朴な疑問をもちましたが、それについては何も書かれていませんでした。申し訳ありませんが、興味・関心がある方は、金沢市教育委員会に直接問い合わせをしてみて下さい。
イマ―ジョン教育
イマージョン(Immersion)の意味は「浸(ひた)すこと」です。イマージョン教育を直訳すると、浸す教育となるのですが、イマ―ジョン教育というのは、英語など日本語以外の言葉で、数学や理科といった一般教科を学ぶことを言います。カナダが発祥元です。日本ではほとんど馴染みがなかったのですが、大陸では国境を接して多くの国どうしが共存していますので、海外では半世紀以上の歴史があります。ちなみに、アメリカでは1970年代からスペイン語のイマージョン教育が始まり、以降、10以上の言語のイマージョン教育が実施されています。
日本では、私立小学校を中心に導入され、現在では全国で10数校が採用しているのではないかと言われていますが、私立はどちらかというと英語の学力を考えてのこと、公立は地域に外国籍の子供が増えたことによる対応という面が強いのです。
文科省の調査によると、外国籍の子供が2012年度以降増え続けています。現在、全国で3万人弱の外国籍の子供がいると思われます。そのうち、日本語での授業を受けることが難しい子供が2万6千人(2018年度統計)いるとのこと。さらに、日本人の子供の中には、保護者の海外在住期間が長く、そのため日本語での授業についていけない子供たちが7600人います(2018年度統計)。その子たちをいきなり日本の小学校に入れても無理があります。かと言って、何もしない訳にはいきません。彼らの教育を受ける権利を保障するために、イマ―ジョン教育ということが言われ始めているのです。
愛知県の豊橋市の八町小学校の教育実践レポートが『日経』に掲載されていました。「イマ―ジョン教育じわり 海外出身者増加 自然な理解促す」(『日経』2019.12.17日付)によりますと、その学校では3年生の児童27人のうち17人が算数を英語で受けているとのことです。海外在住の経験がある教員と外国語指導助手(ALT)の2人で協力して授業を行います。このようなことを始めたのは、市内に外資系メーカーの日本法人などがあり、地元産業界からの要望があったことがきっかけだったようです。
埼玉県には、構造改革特区制度を利用して独自の教育を行っている自治体が9市もある
埼玉県の志木市は「ハタザクラプラン教育特区」ということで、小学校1年~3年生までを対象に少人数学級編成を実施しています。平均25人程度の編成とし、3年生でも28人程度が基本とのこと。子供の数は当然変動しますので、それに合わせて県が採用・配置する以外に非常勤講師を採用、きめ細かな教育を実施しています。2019年度から、「複数・少人数指導体制」を実施するために、市費で教員を雇い、国が定める基準以上の条件によってきめ細かな教育を行おうとしています。このように少人数教育を推進しているところは、他には、行田(ぎょうだ)市があります。
また、同じく埼玉県の戸田市は、外国人が2903人(平成15年3月1日現在)、その子どもで義務教育就学児は141人と増加傾向にあります。そのような中、「在住外国人に暮らしやすいまち」をまちづくりのテーマの一つに掲げて、国際交流や外国人に対する日本語指導教室、市内在住の外国人を講師に英語で戸田市を案内する国際ボランティア養成講座等、市民、行政、関係機関が連携してまちづくりに取り組んでいます。
学校教育では、平成11年には全中学校に英語指導助手(ALT)を配置し、平成14年度からは小学校にもALTを派遣し、国際理解教育を進めています。
「教師の力量がすべて」
加藤学園はイマ―ジョン教育を実践していますが、上手くいくかどうか、加藤学園 佐藤誠一副校長は「教師の力量がすべて」(『日経』2019.12.17日付)と言っておられます。形だけ真似をしても上手くいかないということでしょう。
中国の諺に「千里の馬は数多けれど、伯楽世になし」と言います。伯楽、つまり名馬を見極めたり、名馬を育てる人材はなかなかいないということを言っています。教員は勉強を教えるのが仕事だと思われているので、教員養成について安易な発想しか出てこないし、わいせつ教員が増えるのです。勉強を教えることは、二の次だと思っています。教員に求められる一番重要な能力は、児童・生徒の個性と能力がどこにあるのかを見抜き、それを伸ばすために親と本人に対して適切な指導ができることです。それが出来るような教員は、授業もそつなくこなすものです。
読んでいただき、ありがとうございました。
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