「アフガン政権が崩壊しましたね」
「国際政治問題に関心があるのですか?」
「そういう大げさな問題意識ではなく、女性の就労を基本的に認めなくなるだろうということをニュースで言っていたものですから、何か可哀そうだなと思って……」
「女性は素顔を見せない、男はヒゲを生やすというルールが復活しそうというニュースが流れていましたね」
「どっちにしろ、自由が制約されることは確かです。ただ、疑問に思うのは、そういった自由束縛を是とするタリバン勢力が生きながらえて、しかもあっという間に政権を奪取したことです」
「非合法な組織が生き残れるためには、残虐性というのは結構大事な要素なのです」
「残虐だったから、生き残ったということですか?」
「そうですね。非合法でなおかつ組織が民主的であれば、それはすぐに潰れます」
「どうして、残虐性があると存続できるのですか?」
「民主主義社会であれば、暴力性や残虐性があることは致命的に支持者を減らして滅亡の道に至りますが、弱肉強食の無法社会がテリトリーであれば、力が強い勢力が生き残ります。周りの民衆も、逆らうと脅され、殺されると思えば渋々従うでしょ」
「アフガニスタンはまさに弱肉強食の無法社会だったので、タリバンが生き残り、政権を奪還したということですね」
「ただ、ここからが彼らにとって勝負だと思います。政権をとった後も同じような考えでいれば、国は荒廃し、周辺諸国から攻められて終わります。ここで、切り替える必要がありますが、それができるかどうかですね。誰が指導者になるか分かりませんが、その辺りをきっちり理解し、周りの国と外交交渉が上手く出来るかどうかですね」
「その辺りに注目して、事態の推移を見守りたいと思います。ここからが本論です ↓」
アフガニスタンにタリバン政権が樹立
タリバンというのは、「学生」という意味です。1980年代にソ連がアフガニスタンに侵攻します。多くの難民が発生し、周辺諸国に逃げますが、パキスタンに逃げ込んだうちの若い男子の一派がタリバンとなります。
若者はいつの時代も純粋であるが故に過激になりがちです。アフガニスタンのタリバンも例外ではありませんでした。ソ連がアフガニスタンから撤退し、内戦状態になった頃にパキスタンからタリバンたちが送り込まれます。パキスタンはイスラム教の国です。イスラム教の繋がりを生かして、アフガニスタンに親パキスタンの国を作りたかったのです。
(「朝日新聞デジタル」)
目的がかなってアフガニスタンにタリバン政権が樹立します。その中心となった人物がムハンマド・オルマ師です。そして、2001年9月11日にアメリカで同時多発テロが起きます。アメリカはタリバンを攻撃し、同年12月に政権が崩壊して首謀者とされるビンラディンはアメリカ軍の空襲にあって命を落とします。それから約20年。再びタリバンは復活したのです。
「無法社会」では力ある者、より残虐性がある者が勝利をする
憲法を制定し、それに基づいた民選議会を設立し、そこで制定された法律に基づいて国を治めるというのが民主主義国家の考えです。選挙があるので、政党が結成され、お互いに政策論争をします。その前提に於いて、国民にある程度のレベルの教育が提供されている必要があります。字を読んだり、書いたり、意味が分からなければ、政策を理解できませんし、選挙権が与えられたとしても、誰に投票して良いか分からないからです。
日本の維新政府はその辺りのことをよく理解していたので、廃藩置県が行われた1871(明治4)年に真っ先に文部省を創設し、翌年には学制を発布して国の教育方針を打ち立てました。憲法が制定されたのは1889年ですから、その18年後です。そして、翌年に民選議会が開かれます。
アフガニスタンのタリバン政権が崩壊した後にアメリカの駐留が始まりました。そのタイミングでアフガニスタン政府は、日本がかつて行ったようなことをすべきだったのです。国土復興も大事ですが、それより重要なことは、学校を建てて教育を普及させて、識字率を高めることだったのです。20年の間にアメリカ軍の力を頼って力でタリバンを抑えつけていただけでした。
そのため、アメリカが撤退したため、アフガニスタン内においてまた再び力対力の対決が始まったのです。より残虐性が高い勢力が勝つことになります。タリバンが政権を奪取したのは、ある意味必然的だったのです。
(「ABEMA」)
アフガニスタンの今後――大同団結か内戦か
アフガニスタンの今後ということで、識者の中には、国際テロ組織「アルカイーダ」や、過激派組織「イスラム国(IS)」などを受け入れて、テロの温床になることを心配していますが、実際にはそうなってしまうでしょう。そして、場合によっては、アフガニスタンの地で主導権争いを繰り広げて内戦状態になる可能性もあります。ただ、同じイスラム教を信仰する仲間ということで、大同団結する可能性もあります。
仮に大同団結をしたならば、目は必然的に外に向かうことになります。アフガニスタンと中国によるジェノサイドが行われているという噂が絶えない新疆ウイグル自治区とは国境を接している間柄です。
中国共産党政府は宗教はアヘンで有害という立場です。一方、イスラム教は実践的な宗教であり多くの義務が課せられますが、その分信者同士の結びつきは大変強いものがあります。彼らは、血の繋がりがなくても「わが兄弟」「息子よ」と普通に呼びかけます。
そして、イスラム世界を統治するのは、イスラム法です。近代ヨーロッパで編み出された考え方の一つに法治主義がありますが、その法は人間が作った法です。そういったものに、彼らは余り価値を認めません。神、つまりアッラーが人間に示された生き方こそ絶対であり、正しいと考えます。神、家族、両親、妻、息子・娘、他人との関係などが事細かく規定されていて、信徒にそれを守ることが義務づけられています。そういった教えを親から子、子から孫へ何百年と熱心に伝えてきたのです。字を覚える、他の知識を得ることよりも、何よりもとにかくすべてのことに優先してイスラムの教えを守ってきたのです。イスラム原理主義というのは、それらを厳格に守り抜いて、後世に伝えようという考えです。
彼らの持っている思想的硬直性と残虐性の根底には、イスラムの教えがあるという皮肉な図式があります。そして、今、同じく思想的硬直性と残虐性を併せ持った共産主義国家と対峙しようとしています。両者が協調していけるのかどうなのか、それこそ神のみぞ知ることなのかもしれません。
読んでいただき、ありがとうございました。
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