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伊東市長、議会解散の暴挙 ―― 地方政治の矛盾と制度的限界 / 首長と議会の関係はどうあるべきか

女性

「議会を解散してしまいましたね」

「今、話題の方ですね」

女性

「静岡県は前の知事の時に物議を醸しだして、今回は伊東市でひと騒動と、大変ですね」

「ただ、今回のケースは類い稀だと思います。学歴詐称でしょ。政治的な問題ではありません」

女性

「パワハラも同じだと思います。学歴詐称の方が実害がない分、マシだと思う人もいるのではないでしょうか?」

「いずれにしても、レベルが低い問題であることは確かです」

女性

「一番迷惑なのは伊東市の市議さんたちでしょうね。市議選を戦わなければいけないのですから」

「市議報酬はそんなに高い訳ではありません。そのため、選挙に費やすお金も限られています。特に無所属議員は大変でしょうね」

女性

「解散しないで普通に辞職すれば良いのにと思いますけど……。どうして解散したのですか?」

「市長でいられる期間が長くなれば、それだけ給与がもらえるでしょ。ただ、それだけだと思います」

女性

「ここからが本論です ↓ 表紙写真は「MSN」提供です」

 伊東市長選にみる有権者の選択

今年の5月に争われた市長選は、自公が推薦する現職の小野氏と対立候補の田久保氏の対決となりました。小野氏は地元伊東市の出身で静岡県立焼津水産高校卒業。伊東市内の水産加工会社社員を経て、株式会社丸達水産を設立した後、市議を3期務めています。田久保氏は千葉県船橋市出身で、市議を2期務め、市立図書館建設反対、伊豆高原のメガソーラー導入反対を公約にして当選した方です。相手が高卒なので、別に学歴詐称する必要もなかったと思われます。

二人の選挙公約を見ました。小野氏の公約(↓)は「未来を拓く」から始まって「子どもにやさしい」「子育て中のパパママ応援」と、中身のない政策の羅列ですが、田久保氏の選挙公約には「新図書館建設中止」「地域医療・市民病院への支援体制強化」「不登校対策・学校統廃合――保護者と地域の意見を尊重」というように具体的に書かれていました。先入観なしで、普通に選挙公約のちらしを読んだ方は、田久保氏に票を入れると思います。

首長選挙は現職が絶対的に有利とされている上に、現職の小野氏を自民と公明、さらには連合が推薦するという盤石とも思えるような態勢で選挙戦に臨んだと思われます。ところが結果は、田久保氏の14,684票に対して、現職の小野氏は12,902票でした。投票率が前回よりも5.26ポイント上がって49.65%でした。現職に対する批判票がかなりあり、それが田久保氏に流れたと思われます。伊東市は市議選の後、たぶん新市長の選挙という流れになると思いますが、候補者は従来の政策に対する総括を市民との対話を重ねる中で行って欲しいと思います。今回小野氏が出した中身のない争点隠しの選挙公約は、市民をバカにしていると思います。猛省をする必要があるでしょう。

 

 首長と議会の対立が生む制度的矛盾

今回の伊東市の例のように、地方議会と首長が対立するということが頻繁に起きるようになりました。昨年は、兵庫県の斎藤知事のパワハラ問題が世間を騒がせました。県議会は全会一致で斎藤知事に対して不信任を突きつけ、本人は辞職をして出直し選挙で当選したのです。議会側も再選できるとは思ってもみなかったでしょうが、結局、その後も両者の関係はぎくしゃくしています。

日本の首長の約7割が中央官庁からの天下りです。キャリア官僚は上命下達の世界で過ごしていましたので、その感覚で地方の職員や議員と接するのでしょう。上手くいかなくなるのは、そのためではないかと思います。そして、制度的には地方政治に大統領制を導入していることが問題です。つまり地方では議員選挙と首長選挙の2種類の選挙を行っていますが、これ自体の問題があるのです。

大統領制ではなく、地方こそ議院内閣制にすべきなのです。そうすれば、首長選挙をしなくても済みます。首長は総理大臣のように、議会が選出すれば良いのです。そうすれば、今回のように議会と首長が対立することもなくなります。本来、地方政治は執行部と立法部がスクラムを組んで住民の福利向上のために働くのが本来のあり方です。大統領制になっているため、無用な対立が生じてしまうのです。これから伊東市は市議選に突入しますが、選挙費用として約4,500億円かかると言われています。もったいないと誰もが思うのではないでしょうか。

(「朝日新聞」)

 「大統領制」導入の経緯

そもそも何故、地方政治に大統領制を導入したのでしょうか。これは明治の中央集権時代の制度に「選挙」を後付けしたからです。江戸時代は全国は約300の藩に分かれていました。明治時代に廃藩置県が行われ、現在の47道都府県のかたちがそこでつくられます。

そして、知藩事(後の知事)を中央から任命したのです。現在は、天下りの候補者を選ぶ時でさえ、なるべく地元出身者をという考えが強いのですが、当時は逆でした。地元の人間でない者を知藩事として赴任させたのです。何のしがらみがない人間の方が、中央からの指令を忠実に実行するだろうという考えがあったからです。

戦後は新憲法のもと、知事を住民が直接選ぶ仕組みが導入されました。議会との関係が問題となりますが、その関係については大統領制と議院内閣制の2つの仕組みを採り入れるという中途半端な制度設計がなされました。今回、議会が不信任決議を上げて、首長がそれに対抗して議会を解散しましたが、これは議院内閣制の仕組みです。このように、地方政治の仕組みは「屋上屋を重ねた」状態にあります。組織的にすっきりした形にする時機に来ていることは確かです。

(「選挙ドットコム」)

 ドイツの州制度にみる地方自治のあり方

日本と対照的に、ドイツの地方自治は州(ラント)の独立性が非常に高い仕組みとなっています。ドイツ基本法(憲法)は「連邦制」を採用し、連邦政府と州政府は対等の立場で分権されています。教育、警察、文化政策など多くの分野で州に大きな権限が委ねられており、連邦政府でさえ容易に介入できません。

また、地方選挙の仕組みも日本と異なります。州議会は比例代表制を基本とし、多党制の中で連立を組んで首相(ミニスター・プレジデント)を選出します。つまり「議院内閣制」が地方レベルで実現しているのです。首相は議会に支えられて行政を運営し、議会との二元的な対立が構造的に生じにくいのが特徴です。そのため、政策決定は対話と合意形成を重視し、議会と首長が対立して足を引っ張り合う日本の構造とは大きく異なります。日本もこのような議院内閣制を採り入れれば、無意味な対立もなくなります。

(「歴史ワールド」)

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