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『古事記と日本のかたち』(3) ―—『古事記』の物語の中で豪族と縁を結ぶ / 日本のアイデンティティに則った国づくりを

女性

「今回が3回目となります。引き続き著書の中身の紹介をしたいと思います」

「一応、今回で取り敢えず締めたいと思っています」

女性

「機会があればどこかで紹介することにしたいと思います。それで今回は、地方分権とアイデンティティを話題にしたいと思います」

「律令制度は天武・持統期に成立をしたというのが定説です。ただ、その制度は唐の制度を模倣し、中央集権国家の礎(いしずえ)を築いたという捉え方を歴史関連学会はしていますが、間違っていると思います」

女性

「どの点が間違っているのでしょうか?」

「中央集権国家ではなく、むしろ地方分権国家を天武天皇は目指したのです」

女性

「壬申の乱で勝利した大海人皇子が天武天皇として即位しますよね。巨大な権力を手に入れたことは確かだと思います」

「巨大な権力を手に入れたことは確かですが、その権力を国内安定の組織づくりとそれを文書として遺す編纂事業、つまり記紀編纂のために使ったのです」

女性

「国内安定のための組織が律令制度ということですか?」

「そうですね。それについては前回のブログで説明したと思いますが、地方をどのように治めるのかという問題が残っています」

女性

「中央から派遣された役人によって治めたのでしょうか?」

「中央集権国家ということであれば、そういうことになります。ただ、それであれば派遣する役人をどのように採用し、養成するかという問題があります」

女性

「中国は科挙によって選抜して、彼らを地方に派遣したのですよね」

「日本にはそういったことをした形跡がないのです」

女性

「その辺りは、本論でお願いします ↓」

 『古事記』の物語の中で豪族と縁を結ぶ

地方をどのように治めるか。為政者にとって最も頭を悩ませる問題だと思います。特に古代は警察も刑務所もない時代です。力があるものが勝つという時代です。どうしても力に頼る統治を考えがちになります。

ところが天武天皇は地方の豪族たちの力を利用することを考えます。まず彼が考えたことは、天皇家と豪族たちの縁(えにし)を結ぶことでした。どのように結ぶのか。天皇家の祖神と豪族たちの祖神との物語を作ることを考えます。それが『古事記』だったのです。

例えば、『古事記』の中で比較的有名な場面があります。アマテラスとスサノオが対決する場面、天の岩屋戸の場面、天孫降臨の場面です。ここでは天皇家の祖神と豪族たちの祖神の縁を結ぶ場面でもあります。例えば、天の石屋戸の場面では石屋戸の前で祝詞を奏上したのは中臣(後の藤原氏)氏の祖神の天児屋命(あめのこやのみこと)ですし、占いをしたのが忌部氏の祖神の布刀玉命(ふとだまのみこと)です。

また、神武天皇東征の場面でも、21の氏族との繋がりを披歴しています。このように地方の有力豪族との繋がりに気を配った記述が多いのが『古事記』の特徴なのです。数字を紹介しますと、「日本書紀は50しかないのに、古事記は177ある」(直木孝次郎)のは、そのような意図があるからです。

(「奈良県公式ホームページ」より)

 権威を高めるため神と縁結びをする

豪族との縁結びをすれば、それで天皇の地位は安泰かというと、まだ不充分だと考えます。「母屋」を乗っ取られないようにする必要があります。実際に、蘇我氏はスキあらば天皇に成り代わって日本を治めようと考えたフシがあります。

天皇が他の豪族とは違うことを示すことが必要です。そうすれば、豪族との縁が有効に作用します。どうしたのか。権威を付けるために、神と繋いで、どの豪族よりも長い家系であることを示す必要があったのです。

神と繋がりを持たせるために神武天皇を導き出します。ニニギの命(みこと)が十柱の神をお供に天孫降臨、つまり地上世界に降りてきます。そのニニギのひ孫がカムヤマト、後の神武天皇です。なぜ、そのようにしたのか。ニニギの妻が山の神の娘であり、彼女は燃え盛る御殿の中で3人の子供を産みます。ここで火の神と縁を結んでいます。さらに3人の子供のうちの一人が海の神の娘と結婚をし、その孫がカムヤマトなので、それにより、海、山、火の神の血統を受け継いだことになります

そして他の豪族よりも長い家系であることを確定するために、欠史八代と呼ばれる架空の天皇を家系図に入れたのです。こういったことはすべて天皇の権威を高め、他の豪族に皇統を奪われないための措置だったのです。

(「神宮の博物館-伊勢神宮」)

 日本のアイデンティティ

アイデンティティというのは、自他ともに認めるその人の特徴です。国柄という言葉もあるように、国にもアイデンティティがあります。そのアイデンティティを踏まえた国づくりをしなければ、国は弱体化します。企業にも、アイデンティティがあります。コーポレート・アイデンティティと言います。高級家具をウリにしていた企業が、お手軽路線に切り替えた途端に行き詰りました。当たり前です。高級家具を売るから、それを支持し支えようとしていたのですから、真逆の方針が出れば、その人たちは去っていきます。国も同じです。その国柄に共感するから、その国にいるのです。

今日のニュースで消滅可能性自治体のことを放送していました。円安が進行しているというニュースもありました。これらを俯瞰すると、日本の弱体化が進行していることが分かります。何故なのか。アイデンティティを無視した態勢になっているからです。アイデンティティを無視して上手くいく訳がありません。それは人も同じです。一時的に上手くいったとしても、必ず行き詰ります。

天武天皇は山あり、川あり、半島や島あり、広大な海に囲まれた複雑なこの国を一律に治めることは難しいと考えました。日本は小さな国というのは、事実誤認です。海洋面積まで入れれば世界の10指に入る大きくて地理的に複雑な国です。だから彼は地方分権体制を敷いたのですその体制が基本的に江戸時代まで1100年間続きます。

明治政府はその歴史を無視して中央集権国家を目指しますが、結果は見ての通りです。大日本帝国はわずか80年足らずで瓦解しました。現代政治は、そういった歴史の反省の上に立って行われる必要があるのです。地方に権限をきちんと付与しなければ、弱体化は進むことになります。

(「honkawa2.sakura.ne.jp」)

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