
「『財務省の秘密警察』という本が売れているというので、買って読んでみました」

「タイトルが面白いですね。本当に「秘密警察」という部署があるのですか?」

「いえ、そういう部署はありません。財務省の下部組織の国税庁が秘密警察のような役割を果たしているという意味です」

「国税庁の内部のことに詳しい方が書かれたのですか?」

「本の肩書紹介を見ると、著者の大村氏は国税局で国税調査官として10年間勤務して、その後、フリーライターとして活動されています」

「内容的には、暴露本ということでしょうか?」

「この本の端々から感じるのは、財務省に対する怒りです。多分、国税局で働きながら様々なものを見聞きして、様々な矛盾を感じられたのでしょう。それが元になって文章が組み立てられていますので、興味深く読ませて頂きました」

「日本の警察と税務署を舐めてはいけない、とよく言われます。税務署の元締めが国税局ですよね」

「彼に言わせれば、国税局は財務省の手足となって働く機関です。なので、総元締めは財務省になります」

「脱税を見逃さないために、日夜働いている方々とそれを指揮している省庁をなぜ批判するのか、よく分かりません」

「一言で言えば、公平ではないということです。本の中ではいくつかの事例を紹介しています。ネタバレにならない程度にご紹介をしたいと思います」

「ここからが本論です ↓ 表紙写真は「かや書房」提供です 」
朝日新聞はなぜ財務省の広告塔になったのか
本書の第4章は「なぜ朝日新聞は財務省の広告塔になったか」というテーマです。私は朝日新聞を購読していないため、その「異変」には気付きませんでした。しかし、かつて朝日は消費税導入に強く反対していたとのことです。日頃のスタンスを考えれば、確かに理解できる主張です。
消費税のような間接税は、資産の有無に関係なく一律に課されます。税制は本来、社会的強者から多くを徴収し、社会的弱者へと再配分する手段であるべきです。そうした公平性の観点から、消費税に反対することは、新聞が「公器」として果たすべき役割の一つと言えるでしょう。
ところが現在では、朝日新聞は消費税に対して積極的な賛成論を展開しています。筆者はそれを「財務省の軍門に下った」と表現しています。朝日新聞は資金管理の甘さを財務省に突かれ、ついには「悪魔に魂を売るようにして」強硬な消費税推進派へと変貌してしまったのです(『財務省の秘密警察』かや書房、2025年)。
(「楽天ブックスー楽天市場」)
財務省に立ち向かい、敗れた政治家たち
財務省と一括して呼ばれますが、実際に国家権力を握っているのは、同省に所属する約800人のキャリア官僚たちです。彼らは国家公務員上級試験を突破して入省した「エリート」とされますが、その存在には2つの大きな問題があります。
第一に、彼らは主権者である国民の審判を受けずに国家運営を担っているという点です。著書では、かつて財務省に真正面から対峙し「討ち死に」した橋本龍太郎元首相や、財務官僚と長年にわたり激しい対立を繰り広げた安倍晋三元首相が紹介されています。安倍氏ですら苦戦を強いられたことから、財務省がいかに手ごわい存在であるかがわかります。
第二に、「模範解答が存在する試験に受かっただけの人材」は、真の意味でのエリートではないということです。本来、エリートとは、正解のない問題に挑み、幅広い知識や思考力をもって解を導き出せる人物を指します。たとえばニュートンは、日常の自然現象から自然法則を見出しました。そうした能力を持つ人にこそ、国家運営を託すべきなのです。
(「You Tube」)
本物のエリートは試験では見つからない
答えがあらかじめ存在するような試験では、知識や解法を覚えることで高得点が可能です。偏差値が40に満たなかった人でも、本人のやる気とコツを掴めば、短期間の学習で大きくスコアを伸ばすことができるのはそのためです。中国の科挙制度は千年以上にわたり続けられましたが、本質的には記憶力を競う試験に過ぎませんでした。その経験が示すように、試験によって真のエリートを見つけ出すことはできません。エリートは育てるべきものであり、一度きりの試験で見つけようとする発想自体が間違っています。
例えるなら、詰将棋が得意な人の中からプロ棋士を選ぼうとするようなものです。詰将棋をいくら解いても、実戦で勝つプロにはなれません。同様に、球出しのボールを打つ練習ばかりしても、プロテニス選手にはなれないのです。
財務省のキャリア官僚たちは、いずれも退官後に大企業や関連団体に天下りしています。彼らは自らをエリートと信じ込んでいますが、実際にはその資質を持ち合わせていない場合が多いのです。組織のトップに必要なのは、正解のない問題に向き合い、それを解決する力量です。そのような人物を選ぶための仕組みが、いまの日本には欠けているのです。そういったことも「失われた30年」の原因になっているのです。
(「ABEMA TIMES」)
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