「中学受験者のパーセンテージが上がっているそうです」
「上の子が4年生ですので、悩んでいます」
「近くの公立中学では駄目なんですか?」
「それも選択肢の1つです。そこも含めて親子で検討中です」
「準備はしているのですか?」
「学力が必要ですので、塾に通っています」
「統計によると、母親の意向が子供の進路に強い影響を与えるようです」
「私は特に子供に何か言った覚えがありませんけど……」
「日頃の親御さんの言動を、子どもたちはそれなりに敏感に受け止めているのだと思います。ご主人は、どうなんですか?」
「ウチの人は無関心ですね。公立で良いんじゃあないの。すべて自然にというタイプです」
「であれば、お子さんの進路を巡ってケンカになることはなさそうですね」
「お金がからみ始めると、何か言ってくるかもしれません」
「例えば……」
「学費がかかる分、あなたのお小遣いを減らしますという話をしたら、ケンカになるかもしれません」
「なるほど。ここからが本論です ↓ 表紙写真は「BSCウォータースポーツセンター」提供です」」
中学受験率―—首都圏23.3%、関西圏10.6%
データを調べてみると、2014年から2023年まで受験者数は年々増加しています。過去最高の受験者数を記録したのが1991年の51,000人、2007年の50,500人ですが、その数字を上回ったのが2022年の51,100人、2023年の52,600人です。そして、今年度の中学入試は、さらにそれより増えるだろうと言われています。(下のグラフ参照)
少子化が進行しているのに、なぜ中学受験者が増えるのか。誰もが疑問に思うことです。危機感を持っている私立学校が様々な対応をしているからです。1つは、「受験科目数減少作戦」です。1科目受験を実施している学校が増えています。受験モードに入るのに出遅れた子供をターゲットにしようと考えたのでしょう。昨年は50校以上で実施をして、今年は女子校を中心にさらに増えるだろうと言われています。
2つ目は「受験会場出張作戦」です。都内の私立中学が地方に受験会場を設ける、あるいは地方の私学が首都圏に会場を設けたりしています。合格した場合は、併設の学生寮から通うことになります。寮費がかかりますが、そういった需要を見込んでいるのです。
(「NHK」)
「ゆとり教育」が中学受験を増やした
「ゆとり教育」は、文科省が旗振り役となって、1980年頃から2010年代の始め頃まで実施されてきました。詰め込み教育の批判と教員の週休2日制を同時に解決しようというスケベ心から「ゆとり教育」というプランが出てきたのですが、中身は学校5日制に合わせて授業時数を減らしただけのことです。「ゆとり」の看板を掲げれば、「ゆとり」が生まれるほど、現実社会は甘くはありません。
文明社会が進展すればするほど、科学は進歩し、技術は高度化します。当然、それに合わせて学問も高度化するのは当たり前のことなのに、文科省は真逆のことを行います。時代に逆行した考えだということで、私立の多くはその学校独自の判断で教育課程を編成します。学校5日制を導入したのは、小学校69.2%、中学校42.3%、高校58.9%でした。私立中学では、6日制の方が多かったのです。
「ゆとり」に対する批判が私立中人気に繋がり、受験者が1980年代の初頭から増えることになります。5日制の問題もさることながら、公立中学校では校内暴力やいじめが社会問題となった時期もあり、そういったことに対する不信感と大学進学に対する不安感もあり、私立受験者が増え始めたのです。
(「note」)
日本の研究力低下――「ゆとり教育」の影響か
「ネイチャー」と言えば、世界で最も権威がある科学雑誌です。昨秋、その公式ウエブサイトに「日本の研究力はもはや世界レベルにない」との記事を掲載したのです。文科省の科学技術・学術政策研究所が今月の9日に発表した「科学技術指標2024」は「ネイチャー」の見解を裏付けるようなデータが発表されたのです。
一番重要なのが論文の質です。中には、単なる実績作りのために、かたちだけ発表する人もいるからです。その質をどうやって見分けるのかということですが、引用される数でおよその質が分かります。優秀な論文ほど読まれるし、引用されるからです。日本の場合、2000~02年の平均引用数は世界で4番目(中国8位/韓国14位)でしたが、2020~22年になると13位に急落します。中国は1位、韓国は9位に躍進し、日本はアジアで3番目の国になります。
研究者は研究費が少ないから研究業績が上がらないということをよく言います。確かに、アメリカ、中国は多くの研究費が与えられています。例えば、イギリはスは日本の半分くらいの研究費ですが、2000~02年は2位で、2020~22年は3位です。研究費だけの問題ではなく、ゆとり教育の世代が研究職に入り始めたことが一番大きな原因ではないでしょうか。
(「毎日新聞」)
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