「『地方消滅 2』(中公新書)という本が最近出ましたので、早速買ってきました」
「いつ出版されたのですか?」
「人口戦略会議の編著で、今年の11月25日付で出版となっています」
「つい、最近なんですね」
「その冒頭に、こう書かれています。現在の基調が変わらない限り、2100年には6300万人になるとしています」
「約半分になっちゃうのですね。その方が、ゆったり暮らして良いと思う人もいるかもしれませんよ」
「それは素人考えだと思っています。今の生活レベルを維持できなくなる可能性がありますし、侵略される危険性もあります」
「AIとか、様々な技術を使ってもダメですか?」
「そういった機械類をメンテナンスし、さらに進化させるのは人間の力です。とにかく、様々な分野に於いて人間の能力を高め、その人員を増やすことを考える必要があります」
「必要な人員が確保できないとどうなるのですか?」
「国力は弱くなり、国際的な地位は低下して、アジアの「小国」として生きていくことになるでしょう」
「そうならないように、何とかしなければいけないということですね」
「そういった思いで書かれた本ですが、解決策が分からず、迷走状態になっています」
「難しい問題ですからね。ここからが、本論です ↓ 表紙写真は「愛媛新聞ONLINE」提供です
政府の人口減対策は、10年前から動き始めた
今から10年前の2014年5月に日本創成会議が発表した論文が、当時大きな反響を呼びました。このままでは896の自治体が消滅するという内容だったのです。その内容を基にして出版された本が『地方消滅』だったのです。上の会話で男の人が買った本は、その第2弾ということです。だから、数字の2が表題に付いているのです。
先の本によって、多くの人が日本はこのままでは、本格的に人口減社会に突入してしまうという危機感を持ったことは確かだと思います。当時は安倍政権でしたが、地方創生を掲げ、内閣に地方創生担当大臣が新設されました。実はその初代担当大臣が石破茂氏だったのです。
そのように担当大臣まで設けて、地方創生交付金を活用して、中心市街地に起業拠点を整備する等、様々な手を打ってきたはずでした。ところが、少子化はむしろ加速し、出生率は1.26となり、これも10年前と比べて悪化、2022年度の出生数はついに80万人を切ってしまいました。今年の11月8日の地方創生の閣僚会議の初会合の中で石破首相は「何がうまくいかいかなかったのか反省しないと、これから先の展望はない」と語ったそうです。彼が言う通り、まず原因を探究するところから始める必要があるのです。
(「首相官邸」/2014)
『地方消滅 2』―— 原因について何も語られていない
『地方消滅 2』には、人口減の現状分析を細かく載せています。特に、若年女性人口の動向については、現状のデータと将来(2050年)のデータまで細かく出しています。ただ、肝心の原因究明について、まったくと言って良いほど何も語られていません。というか、人口戦略会議の方たちも、根本的な原因が分かっていないのだと思っています。
日本人は原因を探り当てるのが下手な民族です。これは農耕民族のDNAを受け継いでいるからです。大陸の狩猟民族は定住せず(定住できず)、獲物がどこにあるかを絶えず考えながらという生活を何万年も続けました。全体を俯瞰して物事を長期的なスパンで考える習慣に染みついています。日本人は、その真逆の生活を何万年も続けてきました。目先の現象を見て、それに対処すれば何とかなってきたのです。食が必要であれば、川や海、森や林には、何らかの食料がありますし、大地に種を撒けば作物は実ります。縄文の後期から定住生活が始まっていたと近年言われるようになりました。原因を探り当てるためには、俯瞰的に物事を見ないと分からないのです。
今の政治家たちの言動と発想を見れば分かりますが、とにかく目先の問題に飛びつきます。「103万円の壁」と言われると、それを上げれば良いという考えに捉われます。控除額は一度に上げるものではないし、控除額を引き上げれば上げる程、高額所得者ほど減税効果が高くなり、貧富の格差が拡大します。経済効果も薄れます。全体を見て判断する力が弱いことが、この事例だけ見ただけで分かります。
(「メルカリ-merkari」)
人口減は構造的な問題として捉える必要あり
人口減は構造的な問題として捉える必要があります。例えて言えば、マンションが地盤ごと傾いているのです。住民は不安になりますが、転居するにしても多額な費用がかかる上に、適当な住居が周りにありません。管理会社は、傾きは止まらず、これからも少しずつ傾いていくと言います。ただ、完全に倒れることはないだろうから、少し管理費を下げるので、頑張って生活を続けて下さいと言います。出来るなら、新居をこのマンションで初めて欲しいと言っています。子供が産まれればお手当も出しますと言っていますが、若い人達は不安感があり、なかなか結婚に踏み切れません。今の日本は、こんな感じです。
この状況を見て、何をしなければいけないのかということです。日本創成会議は、将来どの角度まで傾くだろうか、という論議をしています。そして、傾いた上で、そこに住んでいる住民たちが快適に過ごすためには、どのようなことを今から準備すれば良いのかを考えています。
各部屋のスペース変更をする場合には、管理会社が補助金を出します。男女のマッチングが大事なので、そういった機会を持ってもらうためにアプリまで開発をしてくれました。こうなったら管理費も半額にしようかということを社長が言い出しているとのこと。至れり尽くせりで本当にありがたい話がいくつも出てくるような時代です。それで、傾きはどうなったのかというと、それについては何の原因究明もなされていないし、それを元に戻すことはもう無理と思ってしまっています。
次回は原因と根本的治療について語りたいと思います。
(「note」)
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