「私の住んでいる近くの自治体で、大規模な学校統廃合計画を立てていることを最近知って、腰を抜かしたところです」
「そんなに驚いたのですか?」
「驚いたのを通り越して、腰を抜かしました。まさか、東京都の町田市で小中学校の統廃合計画が出てくるとは夢にも思いませんでした」
「統廃合というのは、過疎化で人口減少が進んで、児童・生徒がいなくなって止む無く学校をまとめるというイメージでいたのですけど、人口が減っているのですか?」
「統計調査を調べてみたら、この5年間で世帯数は5248世帯増えていて、人口は823人減っています。」
「町田市の総人口は何人ですか?」
「約43万人なので、823人減というのは殆ど横ばいです。世帯数が増えているので、逆に、今後人口が増える可能性もあります」
「どういう理由で、学校の統廃合計画が出てきたのですか?」
「町田市の教育委員会が出してきたのですが、殆ど思い込みの上に立った計画です」
「思い込みというのは?」
「この20年で30%人口が減るだろうという思い込みです」
「要するに、減るかどうか分からないのに、あたかも減ることを想定して計画が立てられたということですね」
「人口減社会ということが言われて、何となく日本は人口減少が進むと思い込まされているのかもしれませんが、努力次第で人口は増えます。ただ、努力しなければ、体力が衰え、会社も努力しなければ倒産するように、地域も手を抜けば人口が減ります。昨年は、子育て支援を拡充して人口を増やした市町村が約300もありますし、山梨県昭和町は、公共交通機関網が不充分ながらも様々な努力の中で1971年以来人口増を維持、昨年も7.2%増を達成しています」
「努力もしないで、減ることを前提にした統廃合計画なので、「NO」と言っているのですね。 ここからが本論です ↓」
目次
統廃合を行えば、必ず人口は減る
学校統廃合を行えば、必ず人口は減ります。もう、それは実証的に明らかです。一番分かりやすい例は、沖縄県です。沖縄県は戦時中、唯一本土決戦があった地であり、本土復帰が遅れ、米軍基地が集中している地域です。そんなこともあり、反中央的な雰囲気が多分に残っている自治体です。そのため、政府文部省から下りてきた学校統廃合の方針が、素直に自治体に下りなかったのです。
今から考えれば、それが幸いしました。学校が残り、人口減を免れることができたからです。ところが、沖縄県の中で学校統廃合を「真面目」に行ったところがあります。国頭郡です。ここは言われた通りに「真面目」に学校を減らして、人口を減らした自治体です。統廃合すれば、その費用の多くを国からの助成金によって賄えるし、施設も新しくなりますよ、という甘言に乗ったのでしょう。戦後から16校の小学校を減らしました。凄まじい数です。そのため、人口が半分以上減りました。それでも、歯止めがかかっていません。ちなみに、那覇市は2校、石垣市2校、沖縄市1校です。他の自治体と比べると、その多さが際立って多いのが分かると思います。その結果、どうなったのか。下のグラフの示す通りです。
(「地域人口関連統計図表の収納庫」)
人口が増える3つの条件
統廃合を行うと、どうして人口が減るのでしょうか。人口増のメカニズムを理解すれば、その理由が分かります。沖縄県の今年の人口は2%の自然増です。どうして人口が増えるのか。それは人口が増える3つの条件がすべて揃っているからです。その3つは、文化と人間関係と自然です。そして、それらを繋ぐアイデンティティがあることです。
沖縄県のアイデンティティは観光であり、自然の豊かさでしょうか。沖縄県は方言教育を学校で行っています。方言を使った作文コンクールなどを行って、沖縄文化を遺そうという努力をしています。地域で行われる祭りや行事を大切にしているため、人と人との繋がりが強くなります。そのように、そこに住んでいる人たちが故郷(ふるさと)意識を持つような雰囲気が沖縄にあります。
学校、特に小学校は、子供たちや親がそこで人間関係を結びます。その人間関係は、子供たちが卒業した後も続きます。成人をした後は、卒業生はOBということで学校を支え、地域を支える力になります。統廃合で学校がなくなった地域は衰退をし始めます。地域の「核」が無くなるからです。そういうことを感覚的に知っていた沖縄県の人たちは、学校統廃合の話が行政から舞い込んできた時に、反対をしたのです。
統廃合によって、別々で生活していた集団が行政の都合で混ざります。子供も親も今まで作ってきた人間関係があります。上手くいかなくなることが多いと思います。そうすると、統合された学校に対する愛校精神がなかなか育たない、不登校やいじめが増え、地域も活性化しないという事態になります。そうなると、地域や学校への愛着が無くなり、何かのきっかけで地域を離れて戻らないということになります。人口減の始まりです。不登校やいじめの増大の原因の一端は、統廃合だと思っています。
(「Yahoo ニュース」)
(NHK.JP)
文科省が適正と言っている「12-18学級」は、今から63年前にマンモス学校を作らないためにつくられた規定
文科省が適正規模と言っている「12-18学級」というのは、学校教育法施行規則の第4条に規定されている規準です。ただ、これはベビーブームの時代の1958年、今から63年前、つまり2世代前に作られた「遺物」です。これを学校統廃合の根拠としているのですが、もともとこの規定は全体で19学級を超えてしまうようなマンモス学校を作らないためにつくられた規定なのです。つまり、同法4条の「適正」の意味は、学年ごとにクラス数は違っても構わないが、全体の学級数が多いのは良くない、せいぜい12~18クラスが「適正」と言っているに過ぎないのです。つまり、教育効果があるとか、ないとかの「適正」ではないし、これを統廃合の根拠とするのは、立法の経緯を間違えていると言わざるを得ません。
その辺りは、少し考えれば分かると思いますが、集団の中で能力を発揮する子もいれば、個別対応で能力を開花させる子もいます。人は千差万別、万人に共通の「適正」などありません。そこが人間が機械と違うところです。法律に書いてあると、それがあたかも正しい言葉のように思えてしまいますが、一種の錯覚です。
第四次産業革命の時代―― 学校統廃合は完全に時代錯誤
第四次産業革命の時代に入ったと言われています。今まで以上に人間の能力開発が重要な時代になってきます。一人の天才が国を変え、世界を変えるからです。財政の都合で統廃合を進めていた時代でしたが、これからは発想を逆転させる必要があります。つまり、「人間の能力開発のためならば、湯水の如くお金を使うべし」です。カネは極端な話、機械で印刷できますが、人間の能力はそういう訳にはいきません。カネで能力を育てることが出来るならば安いものという発想が必要です。
中国のファーウェイが日本の優秀な新入社員に対して40万円の初任給を出すと公言して話題になったことがありますが、世界で勝ち抜くためには人間力だと思っているのです。カネより人間です。人間がいる限り学校を残す。一人でも学区にいれば、その子のために教育をするという時代です。学校統廃合をいまだに考えている自治体がいくつかありますが、完全に時代錯誤です。早く頭を切り替える必要があります。人間の頭もコンピューターと同じです。意識して、新しいバージョンに更新する必要があります。
(「大興電子通信株式会社」)
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