「兵庫県の斎藤知事のニュースが連日のように流れるようになりました」
「私でも知っていますので、全国的に有名になっていると思います」
「『週刊文春』と『週刊新潮』が斎藤知事についての特集記事を書いたのが8月1日号ですからね」
「1か月以上続いているということですね」
「NHKの全国ニュースで連日取り上げられている状況です」
「大谷選手並みですね」
「こらこら、比較対照するものが違うでしょ」
「冗談はさておき、死んだ方がいるみたいですね」
「死をもって抗議するということで文書を遺した局長がいたのです」
「日本的と言えば日本的ですが、そこまで追い詰められたのですね」
「当然、パワハラ、つまりパワーハラスメントということが話題になります」
「聞くところによりますと、2か月半の間に2人の職員が自殺したそうですね」
「そういうこともあり、週刊誌の格好の材料になっています。ただこのブログでは、三面記事的に面白おかしく事態を論ずるつもりはありません。なぜ、こういう事態がこの日本の地方政治で起きたのか、という視点で考えていきたいと思います」
「問題の本質に迫ることができればと思います。ここからが本論です ↓表紙画像提供は「Yahoo!ニュース-Yahoo! JAPAN」です」
前知事は維新の政策にことごとく反対していた
渦中である兵庫県の斎藤氏が知事として当選したのが2021年です。その前が五期20年にわたる井戸敏三氏の長期政権だったのです。井戸氏が知事に就任したのが2001年ですが、2004年に神戸淡路大震災がありました。その復興に要した資金16兆3千億円のうち1兆3千億を県債で賄います。一気に借金を背負った格好となりますが、行財政改革を実行して2018年度に「収支均衡」を達成します。1兆3千億のうち1兆円を14年間で返済した計算になります。
2010年には井戸氏が中心となって関西広域連合を発足させ、初代会長に就任します。その翌年の東日本大震災では支援する府県を割り当てるという「カウンターパート」方式を導入して復興を援助しています。
井戸氏と維新との対立軸を見ますと、橋本徹大阪府知事(当時)が提唱した大阪国際空港の廃港案や大阪都構想に反対し、さらに維新が進めた統合型カジノ構想にも反対しています。維新からすれば、「目の上のたんこぶ」という思いだったと思います。
(「毎日新聞」)
維新の推薦に自民が相乗りをして斎藤知事が誕生する
財政再建もまだ道半ばでしたので、その井戸氏はその後任として元副知事の金沢和夫氏を後継指名します。もともと井戸県政に対して良き思いを抱いていませんでしたので、この期をチャンスと考えたのが維新です。
斎藤氏を知事に推薦したのは、維新の元代表の松井氏です。松井氏が大阪府知事時代、斎藤氏は財政課長でかつての部下でした。そんなこともあり、維新は2021年の県知事選挙で自民とともに斎藤氏を推薦します。松井氏はその時の代表でもあり、選挙演説に立つなど関わります。松井氏と自民党の旧安倍派とはパイプがつながっていました。そんなことからその推薦に自民党も相乗りをして、自民党本部からも河野大臣や高市大臣など多くの国会議員が応援に駆けつけています。
若くて爽やかな外観の斎藤氏が県民の支持を得て知事の座を射止めたのです。それは維新が議会与党になった瞬間だったのです。前任者が後継指名をした者を無視して、官僚としてのキャリアはあるものの、組織者としての実績はまったくゼロの斎藤氏を担ぎ上げます。そこには、兵庫を抑え、勢力を拡大したいという維新の思惑があったのです。
(「日本経済新聞」)
混乱の根本的原因は、中央集権国家にあり
混乱の根本的原因は、中央集権国家にあります。日本はもともと地方分権国家として発展した国です。邦人という言葉や方言が遺っていますし、各地には郷土料理、郷土芸能、郷土の祭りがあります。地方分権国家であった時代の証拠ですが、そのような律令制の時代が天武・持統期から江戸時代まで約1100年続きます。
日本のかたちは、聖徳太子、天智天皇、天武天皇までの約100年の間に作られています。聖徳太子が打ち立てた天皇を中心に国がまとまっていくという考え方を制度として定着させようとしたのが天智天皇です。彼はその手本を中国に求めます。天皇を皇帝のようにして、権限を集めることにより国内をまとめることを考えます。ところが、それに対して豪族たちが反発し、多くの反乱計画が発覚します。天智天皇は身の危険を感じ、都を難波から大和に移します。大和は盆地のため守りやすいからです。
「公地公民」の方針が豪族たちの反発を招いたのです。豪族たちからすれば、自分たちの領地をすべて没収されるということです。現代流に言うと、社会主義的な政策を日本に持ち込もうとしたのです。そういったことに対する反対勢力を上手く結集して権力を握ったのが天武天皇です(壬申の乱)。「公地公民」の方針は撤回し、豪族の領有を認め、その豪族と朝廷は委任関係を結ぶという方式を採り入れます。これが律令制です。天皇をシラス者とし、各地をウシハクする豪族との委任契約関係を結びます。その標(しるし)が各地に遺る神社です。
日本は中国のような太平原の国ではなく、山脈、盆地、半島有りの複雑な地形です。島の数だけで1万4千あります。これを中央集権的に治めるよりも、地方分権で治める方が合理的だと考えたのです。これが日本のもともとの「かたち」ですが、明治時代になって中央集権国家となり、現在に至っています。だから、地方の首長なのに、中央から官僚が天下ってくることが起きるのです。県知事については、地元の県議を1期、市議なら2期以上勤めた者という条件を付けたらどうかと思っています。被選挙権との絡みで難しい部分がありますが、そうすれば今回のような方が知事になることはないと思います。
(「中学受験ナビ-マイナビ」)
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