「お子さんが通っている学校では、プールを使っての授業はあるのですか?」
「水泳の用意を持って登校することがありますので、行っていると思いますけど、何か……?」
「学校プール廃止の波がいろんな処から起きているのです」
「えっ、そうなんですか。死亡事故があったからですか?」
「いや、そうではなく、予算とか教員の負担の問題が大きいみたいです。設備の老朽化の問題もあるみたいです」
「老朽化したなら建替えれば良いし、少子化だからこそ予算を増やすべきだと思います。教員の負担といいますが、今まで出来ていたものがどうして出来ないのかと思いますけど……」
「あまり熱くならないように……」
「すいません。子供たちが楽しみにしているものですから、つい……。」
「私の時代は学校にプールが作られ始めた時代です。夏休みも町内ごとに日にちを割り当てられて入った経験があります」
「結構、恵まれていたのですね」
「今考えると、先生方や町内の役員の方々が面倒を見てくれたのだなと思っています」
「そういった気持ちも無くなりつつあるということでしょうか。ここからが本論です ↓ 表紙写真は「NHKニュース」提供です」
プール廃止の波が広がっている―― 全国の小中学校
新聞やSNSなどの情報によりますと、全国の小中学校でプール廃止の波が広がっているそうです。小中学校にプールがあって当たり前みたいな感覚を持っていますが、それらの多くは1960年代から70年代にかけて建てられたものです。1964年に東京オリンピックがあるということで1961年にスポーツ振興法が制定され、学校プールの建設に国の補助金がついたのです。そのような経緯なので、多くのプールが作られてから40~50年経っていて、老朽化が目立ち始めたのです。
2人の会話の中の彼女が言うように、だったら建替えれば良いと思うのですが、予算の問題と今後の指導の問題を併せ考えて、大規模改修や建て替えを断念する自治体が出始めたということです。
スポーツ庁の調査によれば、21年度時点でプールの保有率は小学校87%、中学校65%であり、18年度と比較するとそれぞれ1割くらい減っているそうです。
(「NHKニュース」)
プールの維持・管理には手間暇がかかる
日本の国の政治は常に行き当たりバッタリのところがあって、なぜ問題が出る前に処理をすることができないのかと思います。要するに、長期的展望がないことが一番の問題なのです。プールが建てられないので学習指導要領の水泳指導の項目を変更するという話も出ているそうですが、順番が逆だと思います。
ただ、プールを維持・管理することは思った以上に手間暇がかかるものです。ろ過機を使って水質を一定に保つ必要がありますし、塩素などの薬品による消毒も必要です。ランニングコストがかかります。水の入れ替えをすれば、標準的な25mプールで1回につき約20万円かかるそうです。入れ替えの際に水栓を開けっ放しにして3,4日忘れてしまっていたという「事件」もありました。教職員にとってプール管理は業務外という感覚が頭の片隅にあるのでしょう。
今回、調べて分かったのですが、シーズンオフでも消防水利の観点からプールの水は抜かないそうです。消防水利と言うのは「消防に活用する水の利用」という意味です。消防法第20条第1項に定められているのですが、災害や非常事態に生活用水として使用されることを想定しているのです。そのため、清掃などにより一時的でも水を抜くときは所管の消防署への連絡が必要だそうです。
(「sponichi.net」)
丁寧な議論が求められる
何度も言うようですが、条件が整わないからプールをつくらないし、授業を中止して、それを後追いして指導要領を変更するというのでは順番が逆です。日本のように、地方ごとに地理的な環境が違うような国では、結果においてバラつきが必ず出るので、後追いしても良い結論に達することが余り期待できないからです。
この際、水泳指導はどうあるべきなのかということを自治体ごとに議論すべきだと思います。というのは、必要性を何に、どのように感じているのかという度合いが地方・地域ごとに違うからです。水難事故防止の予防教育に重きを感じるところもあれば、泳力を少しでもつけたい考えるところもあるし、単に水に親しむことが重要と考えているところもあると思います。
その方向性に従って対応していくということでしょう。予算が少なければ国にお願いする。場合によっては公営プールを設置する、学校プールを地域開放して共同で使うようにするということでしょうか。いずれにしても、子供や親、さらには地域の人たちに納得が得られるような議論の進め方が求められます。
(参考記事:「学校プール廃止の波」『日経』2024.7.17日付)
(「播磨町」/学校プールの地域開放)
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