「最近、人手が足りないという声を良く耳にするようになりました」
「ヒトデは海にいますよ」
「あのね……」
「ゴメン、ゴメン。それで思い出したのだけど、アルムナイという言葉がコンサルタント業界で流行っているそうですが、知っていますか?」
「いえ、初めて聞く言葉ですね」
「卒業生という意味なんですけどね、途中退職した人に声を掛けて、また会社の業務に戻ってもらおうということを、始めているそうです」
「ウチの会社は定年退職した人に声を掛けて、嘱託で残ってもらったりしていますけど……。それとは、違うのですか?」
「嘱託ではなく、正規軍として戻ってもらおうということです」
「ただ、一度理由があって辞めてしまった人が舞い戻ってきてくれるのですか?」
「それが結構いるみたいですよ。SNSでの情報なんですが、コンサル大手のKPMGコンサルティング(東京/社員数約1700人)では21年9月のアルムナイのコミュニティーの立ち上げ以降、既に約30人を再雇用したと言っています」
「需要があるということですね。それだけ深刻ということでしょうか。今日のニュースで全国的に教員不足と言っていましたね」
「教員も、保育士も不足気味だと思います」
「両方とも、労働環境が厳しいというイメージがあるので、そうなると若い人は敬遠しますよね」
「他の業種であれば退職した人にもうひと頑張りしてもらっても良いですが、教育関係はね」
「相手が子どもですからね。体力を結構使いますからね。ここからが本論です ↓」
諮問行政、終焉の時代
教員確保策を議論するために中教審の特別部会が昨日26日に開かれたそうです。はっきり言って、教員不足を招いた責任の一端は、教員養成の戦略をシステム的に作ることが出来なかった中教審にもあります。そして、文科省は少子化を見込んで、財務省と一体になって教育関係の人件費の抑制に動いていました。どの面下げてと思っています。
何か問題があると、文科省が中教審に諮問をして、そこから回答をもらうという方式を、そろそろ止める時期です。
何故か。ピントがずれた回答が多いからです。どうしてピントがずれるのか? 中教審の委員の殆どは、現場を直接知らない大学の教員ばかりだからです。建築士は現場を把握して設計図を引きます。だから、その土地に合った建物の設計図を書くことができるのです。諮問行政というのは、建築学を教えている大学の教員が、現場を見ないで設計図を引くようなものです。必ずズレます。同じ理屈です。
(「PressPhot」)
自治体に権限を与えて、教員を発掘させるしかない
教員の採用は自治体単位で行っています。教員がどの程度不足しているのかは、当然自治体によって違います。新聞記事(『日経』2023.6.22)によると、都内の公立小学校では2023年4月7日時点での教員の欠員数は約80人とのこと。この数字は、前年同期と比べ30人増とのことです。
全国的に集計すると1218人です。欠員が出ているので、それを管理職や講師を雇って埋め合わせをしていると思いますが、まず、この手当をする必要があるということで、自治体は動いていると思います。
緊急避難的な措置と長期的に考えなければいけないこと、分けて考える必要があります。前者としては、自治体に教員免許失効者に対して、復権の権限を与えて、現場復帰をしてもらう。教員免許をもって他の仕事をしている人に、現場に入ってもらうということだと思います。そして本来なら、教員免許保持者をデータ化してあれば、本人にアプローチして希望を聞くということも出来ると思います。採用の募集をかけて、応募した人から選考すれば良いというお役所的な発想から抜け出す時期です。
(「読売新聞オンライン」)
長期的に考えなければいけないこと
教員のなり手不足は、ミクロの問題として捉えるのではなく、公教育全体を立て直すという制度設計の中で考える必要があります。
公立小・中学校の不登校児が24.5万人です。最近の特徴は、小学校1,2年生で増えていることです。不登校の原因で一番多いのが、先生のことが怖いなど、教員との人間関係を理由に挙げる子が一番多い(29.7%)のです。これだけ高いパーセンテージということは、教員養成も教員研修も上手くいっていないということです。教員と子どもの間に溝が出来てしまっています。
今の日本の公教育は、私立学校がかろうじて支えているようなものです。公立学校は文科省と中教審が一体となって担ってきましたが、この体たらく。構造的な問題があることは明白です。教育行政を一括で、現場を離れた行政官と大学の教育学者で管理するシステムそのものを考え直す時代です。各県の教育委員会に任せれば良いと思っています。
(「朝日新聞デジタル」)
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