「東京の地価やマンションが高騰しています。子供たちが大きくなったので、もう少し広い家を探しているのですが、都心の物件は手が出ないねと夫と話をしています」
「金利もこれから上がりそうですからね。不動産を買う側からすれば逆風になります」
「それで実は私の友達がベトナムにいて、半分冗談だと思うけど、ベトナムにもグレードの高いマンションが建ち始めたから、あなたもどうって言うのよ」
「日本の不動産会社が建てたタワーマンションもあるそうですね」
「そうなんです。プールやトレーニングジム付きの分譲マンションもあるとのことです。価格も5千万、6千万クラスだそうです」
「今はベトナムに進出している日本企業も増えましたからね。かつての自転車がやたらと多く走る、喧騒と騒音の面影はもうないのでしょうね」
「ベトナムに行かれたのは、いつ頃ですか?」
「かれこれ10年以上前だと思います。ベトナムの人たちは純朴な人が多いという印象を持ちました。行く前は、共産党国家なので、どうかなと思ったのですが、そういう雰囲気は全くありませんでした」
「ベトナムの人は歴史的に苦難の道を歩いてきたので、人間が磨かれているのかもしれません」
「それで思い出しました。ベトナムの人たちは中国のことを好きではないことが、言葉の端々から分かります」
「中国とは有史以来、2千年のライバル関係ですからね。ベトナムは10世紀頃まで中国に支配をされていたそうです」
「その辺りは、本論で語りたいと思います。 表紙写真はベトナムの夜景、「You Tube/ゆ-に-/YUUNI」提供です」
ベトナムと信頼関係を築いてきた
2020年、菅総理が就任して最初の訪問先に選んだのがベトナムでした。その3年前の2017年には、天皇、皇后両陛下が訪問をしています。安倍元総理がその翌年の2018年に訪問をし、当時のチャン国家主席と首脳会談をしています。そして、その際に共同声明が出されています。
その内容は多岐にわたりますが、重要なのは「自由で開かれたインド太平洋戦略」構想を両国が共有した点です。中国を念頭に置いた構想ですが、日本にとってベトナムおよびASEANを重要なパートナーとして考えていることが確認されました。
安全保障の面において、日本とベトナムは利害が一致したということです。ベトナムは中国と約2千年の長きにわたる攻防の歴史を有しています。そして、この50年の間に中国とは3回も戦火を交えています。そういった経験を学ぶこともできるのです。
(「VIETJOベトナムニュース」)
ベトナムに助けてもらった歴史あり
日本では元寇として有名ですが、ベトナムも当時の中国の元と戦っています。文永の役(1274)と弘安の役(1281)、2度にわたる戦いがありました。台風の襲来もあって何とか防ぐことができたのですが、実は元は3度目の日本侵略を計画していたのです。なぜ、それが実現しなかったのか。ベトナムとの戦いに力を注ぎ、大打撃を受けたため、日本侵略計画は幻となってしまったのです。
また、日露戦争の時にバルチック艦隊が日本海に向かう途中、ベトナム中部のカムラン湾に寄港した際に、食料、燃料などの補給行為をサボタージュしたり、燃料の石炭に泥を混ぜるなど抵抗活動をしてくれたのです。
近年では国連改革案として日本がドイツ、インド、ブラジルと共同でG4決議案ということで安全保障理事会の常任理事国を11か国、非常任理事国を14か国にすることを提案したことがありました。その時に中国が反日キャンペーンを展開しつつ、その改革案に反対した際もベトナムは最後まで日本支持を表明してくれたのです。
そういった信頼関係もあってか、在留外国人の中で、昨年韓国を抜いて、ベトナム人が中国人に次いで多くなっています。法務省のデータ(2022年)によると、中国(761,563人)、ベトナム(489,312人)、韓国(411,312人)の順になっています。
(「三笠塾」)
政情不安要因もある
共産党一党支配の国ということで、中国とベトナムを同じように見ている人も多いと思われます。一党支配という点では同じですが、集団指導体制をとっていますし、国民には選挙権が与えられ、民選の議会もあります。そして、最近のデータによると、国会議員の候補者の約35%が女性ですし、18%が少数民族出身者とのことです。そして、その国会は案件によっては、政府提案を否決することもあります。
アメリカとベトナムはかつては戦争をした仲ですが、戦争終結から20年後の1995年に国交を結んでいます。習近平指導部が拡張政策を鮮明にし始めると、アメリカはベトナム重視の立場を取るようになります。2018年には、アメリカ空母「カール・ビンソン」、20年には「セオドア・ルーズベルト」がベトナムに寄港しています。
日本もこの間、ベトナムと関係を深めてきました。2千社を超す日本企業が現地へ進出していますし、2人の会話にもあるように、日本企業との共同出資会社によるマンション開発も行われています。
ベトナムの政情において不安要因は、2年連続で国家主席が解任されたことです。国のトップは書記長のグエン・フー・チョン氏です。書記長の任期は5年で2期までと定めがあったのですが、特例を設けて3期目に入っています。そして、反汚職を掲げながら、国家主席や党幹部を相次いで更迭しています。どこかの国と似ているので、その動向を注視する必要があるのかもしれません。
(「TBS NEWS DIG-TBSテレビ」)
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