「今日も円安問題をお願いしたいと思います」
「最近は経済問題に関心があるようですね」
「ダンナに内緒で密かに株を買ったのです。大した金額ではないですよ。10万円くらいの投資です」
「いかがですか。利益は出ていますか?」
「思ったようには上がってくれないもんですね。知り合いに勧められてインターネットで口座を開設したんです。為替相場と株価は当然関係ありますよね」
「もちろんあります。決定的な要素ではありませんが、大事な要素です」
「具体的にお聞きしますが、円安に振れ始めた時に株価がかなり下がりましたよね。ここ1週間くらいも円安が続いているのですが、株価は逆に上昇しています。昨日は少し下げましたけど……。どういうふうに解釈すれば良いですか?」
「要するに、質問の趣旨は、1か月位前は円安と株安だったのに、ここ最近は円安と株高になっている。何故か、ということですね」
「そうです。悪い円安という言い方をされていたこともありましたよね」
「私は基本的に「悪い」「良い」という形容詞を付けるのは反対です。物の本質が分からなくなってしまいがちだからです。良くするか、悪くするかは、対応の問題だと思っているからです」
「ということは、ある人にとって悪い円安でも、別の人には良い円安ということがあり得るということですね」
「良いことを言いますね。まさに、その通りです。対応次第ということです」
「それなのに、どうしてマスコミなんかは悪い円安という言い方をしたのですか?」
「急激に円安に向かったからですよ。要するに、多くの人が対応できないような急激な変化だったということです」
「おだやかな海だったのに、急に高波が押し寄せてくるようなイメージですか?」
「そうですね。そのイメージで良いと思います」
「ここからが本論です ↓」
「有事の買い」――株式相場の格言
日本の株式を支えているのは外国からの資金です。全体の約3/4が外国人投資家からのものです。円安ということは、相対的に海外の通貨が高くなっているということですので、外国人投資家からすれば、株式を買いやすい環境ということです。
ウクライナ情勢が心配ですが、停戦交渉が継続して行われていること、あと1か月位で終息に動くのではないかという希望的観測もあり、日々の戦況の変化が株価に反映しなくなっています。そして、「有事の買い」という株式相場の格言もあります。これは、有事の時に底値をつけるので、買うチャンスと捉えるということです。
(「日本経済新聞」)
群雄割拠の時代―― 国防、企業の国内回帰、そして人材育成が重要
2人の会話にあるように、単純に「悪い円安」というのがある訳ではありません。波に悪い波、良い波がないのと同じ理屈です。大事なことは、円安環境をどう捉え、経済活動にプラスにするためにはどうするかを考えることです。企業家、輸入業者、輸出業者など様々な業種の方がいます。当然、その立場によって円安の捉え方は違いますが、日本の国としてどのように考えることが全体的にプラスになるのか、その視点から見る必要があると思います。
ウクライナへのロシアの侵略により、世界の流れが変わる可能性があります。曲がりなりにも平和を求めていた時代から、戦乱と群雄割拠の時代に入りつつあるのかもしれません。であれば、日本としては、国内を固めることを考える必要があります。戦略的には3つです。国防、企業の国内回帰、そして人材育成の3つです。
この3つは、それぞれ有機的に関連していることとして捉える必要があります。つまり、3つが揃って国力が高まり、海外からの資金も流入しやすくなり、投資環境も改善されていくということです。
国防については、すでに3月17日に「ウクライナの状況から日本の防衛を考える」と題して発信していますので、そちらを参照して下さい。人材育成については、機会を改めて論じたいと思います。ここでは、企業(事業所)の国内回帰について項目を改めて述べたいと思います。
(「ダイヤモンド・オンライン」)
円安基調―― 国内回帰の時代
日本の企業の海外進出と、1980年代半ば以降進んだ急激な円高とは相関関係があります。当時は円高不況ということが言われました。円高というのは、円の価値が高くなることなので、日本の経済力が強くなった一つの証なので喜ぶべきことなのですが、当時は招かざることという捉え方が強かったのです。
それは当時の日本が輸出立国だったことと関係があります。どのような理由で高度経済成長を達成出来たのかということですが、安い原料を輸入して、高度に訓練された労働者によってそれを製品に加工し、多くの付加価値をつけたものを輸出したのです。その差益が大きかったので経済成長できたというのがカラクリです。ところが円高になるということは、日本の製品が相対的に高くなるということで売れなくなり企業の業績が悪化します。
円高によって低成長時代が到来します。実はその頃に中国との国交が回復します。1978年に日中平和友好条約が結ばれ、日中友好の証としてパンダが上野動物園にやってきます。中国へのイメージが一気に変わり、友好ムードが高まります。国内は円高と公害問題、中国との国交が回復し、広大な中国市場と安い労働力を求めて、日本企業は競うようにして中国に進出していきます。そのことが、中国を経済強国にし、やがては日本を脅かす存在になるとは、当時の政治家や経済人は夢にも思わなかったと思います。
今は、かつてとは違い円安基調となっています。ミャンマー、ロシアの政権が独裁化したため、やむなく現地から撤退する企業も出て来ました。独裁政権の怖さです。中国もそういった危険性が高い国です。習近平氏への権力集中が進んでいます。日本は地方の衰退と少子化で悩み、賃金は国際的には決して高くはありません。企業にとって今回の円安は、国内に回帰し日本市場で新たな飛躍を期すチャンスと捉えるのも良いかもしれません。
(「国土交通省」)
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