「502080問題」というのは、50歳代の親が、ひきこもりの子供と介護が必要な親を抱えてしまっているという問題です。不登校、引きこもり、ニートの問題について対応している関東自立就労センターのホームページの情報によると、
1.不登校から引きこもり、
2.社会に出て自信を喪失しての引きこもりというおよそ2パターンあるとのこと。
そして、不登校の1割は家庭内暴力の問題を抱えているとのことです。
不登校や引きこもりは、個人的に起きる問題ですが、その社会背景が必ずあります。原因があったとしても、それを受け止める「土壌」がなければ現象は起きないからです。社会背景であるならば、その原因を突き止めれば、無くすことが出来ます。
まず不登校ですが、文科省の定義は「年間30日以上欠席している生徒」を不登校としていますが、日本財団が「不登校傾向にある子どもの実態調査」(2018.12.)を行っています。
どういう場合を「不登校傾向」としているかと言いますと、「年間の欠席日数が30日未満の生徒」、「保健室や校長室、相談室登校の生徒」、「遅刻、早退が1か月に5回以上の生徒」、「授業不参加型の生徒(教室にはいるが授業を聞かない)」です。文科省の定義によれば、不登校の数は10万人ですが、日本財団の基準に従って人数を弾き出しますと全部で43万人とのこと。数も問題ですが、その割合が増える傾向にある中で、文科省は2018年に任務放棄をします。
『不登校新聞』によると、文科省は2003年から2016年8月まで、4通の通知を出しており、それは「学校復帰」を目標として対応する旨の内容であったとのことです。ところが、2018年7月に、学校復帰を目標とした従来の不登校対応を180度見直す方針を出したのです。
どういうことか。2016年に「教育機会確保法」を成立させ、学校外のフリースクール、教育支援センター、ホームスクールなどの「多様で適切な学習活動」の重要性を指摘し、それを支援する方針が盛り込まれたのです。要するに、これは文科省の勝手な判断による公教育の内容変更と看做(みな)すことができます。
OECD(経済協力開発機構)というのは、簡単に言えば先進国クラブですが、そこが昨年の9月10日に2016年に加盟各国が小学校から大学の教育機関に対して行った公的支出のGDP(国内総生産)に占める割合を発表しています。日本は2.9%(OECD平均は4.0%)で、加盟35か国のうち3年連続の最下位でした。
公教育を立て直すために、教員養成を根本から見直す、現場は人手が足りなくてブラック化しているので、クラス2人担任制の導入、アシスタント・ティチャーやスクールカウンセラー、さらにはスポーツ指導員の採用などお金をかけなければいけないのに、それについては全く何もせず、子供たちが逃げ込むルートだけを充実させようとしています。
不登校児童・生徒の無理な通学はかえって状況を悪化させる懸念があるため、子供たちの「休養の必要性」を認めたとのことですが、公立の学校現場というのは、そんな地獄のようなところなのでしょうか。確かに、私立中学の受験生は少子化の時代にも関わらず増えています。あれは、公立学校から避難してきているのでしょうか。
確かに、2018年度にわいせつ行為やセクハラにより懲戒や訓戒などの処分を受けた公立学校の教員が282人に上ります。調査を開始した1977年度以降で最多となったとのこと。確かに、最近は3面記事に教員がよく登場するようになったと思います。ただ、これは公立学校の教員養成のシステムが悪いからなので、今のシステムを変えて、人員を現場に増やさない限り、改善は見込めないと思います。
現に、私立学校の教員でハレンチ事件を起こす者は殆どいません。
文部科学省によると、2018年度の小中学生の不登校者数は約14万6000人、過去最高を更新しました。余りにも多いので、今後は学校に登校しなくても、学校長が出席扱いとすることもあり得るとしています。ますます、不登校が増え、それに比例して引きこもりも増えるでしょう。
その子供たちを支えながら、年老いた親の面倒を見なければいけないという方も、確実に増えていくと思われます。それが「502080問題」です。解決の糸口は公立の小学校教育の立て直しからです。
フリースクールや支援センターの充実に反対している訳ではありません。それはそれとして重要だと思いますが、順番を間違えていると思っているだけです。
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