「クリスマスが終わると、いよいよ今年も残り少なくなったなと思い始めるから不思議です」
「こういう大詰めの時に、ぜひ頭の整理をして欲しいと思います」
「部屋の整理と大掃除が残っているのですけど……」
「それらと頭の整理は、両立することができます。整理整頓、掃除をしながら頭の中の整理をして下さい」
「頭をクリーンモードに、ということですか? 私は、ロボットではありませんからね」
「それは分かっていますが、今の日本の状況は、一人ひとりがそれぞれ勝手な方向を見て意見を言い合っているようなものです。これでは停滞が進行するだけです。それで、頭の中の整理と言ったのです」
「もう少し具体的に言っていただけると助かります」
「20世紀はモノの生産が拡大し、それが増えることと人間社会の幸せを正比例で考えた時代だったと思います。だから、資本と言われれば有形資本だったのですが、現在は無形資本が主流です」
「それはGAFAといわれるIT企業が巨大企業になったのを見れば分かります」
「とにかく凄いですよ。何しろ日本企業全体が保有する有形資本の総額(約5兆ドル)よりも、世界の大手10社のデジタル事業の価値(約6兆ドル)の方が大きいのですからね」
「デジタル事業の価値と言われてもピンとこないのですが、分かりやすく言ってもらえますか?」
「知識、情報、データが富の源泉になったということですね」
「さらに噛み砕いて説明して欲しいのですが……」
「それらを使って創造的な事業を考える時代なのです。例えば、カレーの好きな人に世界のカレー料理の作り方を紹介するサイトを提供するとか、人気アニメグッズを紹介、販売するサイトを立ち上げるとか、いくらでもできると思います」
女「なるほど、それであれば土地や工場、機械は余り必要ないですね」
「その代わり、従来のモノづくりの企業と比べると労働力を吸収する力はありません。その代わり、数は少なくても構わないのですが高いスキル、もしくは能力をもった人材が必要です」
「ということは、教育の在り方も変わらざるを得なくなりますね」
「そうですね。日本の場合は、底上げ的な発想で教育を考えていますが、多分それでは国際競争では勝てないと思っています」
「ここからが本論です ↓」
有形資本主義から無形資本主義の時代に
今まで、「経済のソフト化」とか「知価革命」という言葉で説明されてきましたが、多くの国民は実感として分かっていなかったし、理解しようとしていなかったのではないかと思います。それで、有形資本主義、無形資本主義という言葉を使えばインパクトがあるのではないかと思って使ってみました。但し、誰も今まで使っていませんので、ポピュラーな言葉ではありません。
時間は止まることなく永遠に流れ続けると思います。その時々の栄光は、一瞬のものなので、その達成に喜んでも良いのですが、そこで長居することは許されません。長居は無用という言葉があるように、そこでの立ち止まりは停滞と消失を意味するからです。ところが、現在の日本経済を全体的に俯瞰すると、立ち止まり感が非常に強いのです。
まず、多くの日本人に、時代が完全に変わったことを認識し、頭を切り替える努力をする必要があるということを言わなければいけません。
堺屋太一氏は自著の『時代が変わった』(講談社、2001年)の中で「時代は変わった。近代工業社会は終わり、新しい知価社会がはじまった。これまでの知識と経験、とりわけ近代工業社会は終わり、新しい知価社会がはじまった。これまでの知識と経験、とりわけ近代工業社会を築きあげた成功体験を忘れなければならない」(堺屋太一『時代が変わった』、講談社、2001年/407ページ)と言っています。
彼がこれを言ったのは約20年も前のことですが、彼の言葉は現代においても説得性を充分もっています。ということは、この20年殆ど何も進展していないということです。なぜそういうことになっているのか、問題意識をもってお読み下さい。
従来と同じモノサシで社会と個人を見ていたため、時代の波に乗れなかった
その具体例を探せば数多くありますが、1つだけ紹介します。通信規格5Gの商用サービスですが、日本は国際的に見て出遅れているのです。イギリスの調査会社オムディアが今年の6月に各国の5G市場に関する調査を公表しています。そのランキングを見ると、日本は13位です。ちなみに、1~10位の国は、以下の表の通りです(『日経』2020.7.15日付転載)。韓国が1位です。この国は、経済的に優位に立てば立つほど反日を強めてきます。それを防ぐためにも、経済的に優位なポジションを保つ必要があるのです。
【5Gの展開――ベスト10】
1 | 韓国 | 2 | クウェート | 3 | スイス | 4 | アメリカ | 5 | カタール |
6 | イギリス | 7 | フィンランド | 8 | 中国 | 9 | ドイツ | 10 | イタリア |
21世紀は人材に投資する時代
「日本企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた社員の再教育に乗り出す」(「投資、設備から人材へ」『日経』2020.9.11)という記事が載ったのが、今年の9月です。今後は、「飼い殺し」ということではなく、いかに人材を再教育によって価値を生み出す戦力として育てるかが、各企業の腕の見せ所になってくると思います。
三井住友海上 | 5500人の営業社員にデータ研修 |
日立製作所 | 16万人にDX研修を実施 |
米アマゾン | 2025年までに従業員10万人の再教育に7億ドルを投入 |
(『日経』同上記事より作成)
ただ、全体的に日本は海外に比べて遅れています。データで見ると、確かにそのことを確認できます。
企業が従業員に対して行う能力開発に関する費用が国内総生産(GDP)に占める割合を見てみることにします。2014年までの5年間平均のデータしかないのですが、日本はわずか0.1%ですが、アメリカ2.08%、フランスは1.78%です。
三井住友海上は、人材開発のプログラムを作成するにあたって複数の大学と連携・協力するそうです。かつての時代は産学協同を批判する風潮があったのですが、大学の研究・技術開発を実際の産業分野で生かすのは、本来の姿ではないかなと思います。今後は、そういった連携が増えてくると思います。
小学校でもプログラミング教育がいよいよ始まります。ただ、発想が底上げ的な発想です。公教育は文明の進歩に比例して、教育内容は難化する傾向となります。すべての国民に教育を受ける権利がありますが、同じ教育を受けさせるという意味ではありません。「能力」という言葉がついているからです。
エリート教育、もしくは飛び級といったものを導入する時期だと思います。囲碁、あるいは将棋の世界では、実力本位(能力本位)主義をとっています。鉄は熱いうちに打てと言います。若き有能者を発掘し、育てるシステムの開発が待たれています。
読んでいただき、ありがとうございました。
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