(この文章は3/5に書きました)
自治体は国の下請け機関ではないはず、独自の行政判断を
小中高の一斉休校については、日本では賛否が分かれています。反対意見は、「場当たり的」、「共働きの家庭にとってはつらい決定」、「影響が大きい割には、効果が少ないだろう」、「子どもの教育のことについて、何も考えていない」などです。
大災害があった場合は仕方がないと思いますが、突如全国一斉休校というのは、どう考えても、余りにも乱暴です。大人は、誰もが予定に基づいて動いています。公立学校には、給食の納入業者がいます。私立の学校には、購買部や食堂がありますので、さまざまな物品や食料品を納入している業者がいます。仕入れの都合や人員の配置など、多大な影響を与えます。全国の給食関係の食品廃棄は、相当な量になると思います。
本来は安倍首相の「要請」を受けて、各自治体は現状を踏まえて具体的にどうするかを国や文科省と細部において調整するべきだったのです。中には、金沢市のように自己の信念を貫いた首長がおられました。また、栃木県茂木町は小中の臨時休校を撤回しました。学校に代わって、学童保育で児童を受け入れるというのもおかしな話ということが撤回の理由とのことです。こういった少数の例外を除いて、殆どの自治体は要請を国の命令と解釈して、そのまま教育委員会から公立学校に「休校」要請したのです。自治体は国の下請け機関ではない、というプライドのようなものはないのでしょうか。
憲法に地方自治の章が設けられ、地方分権一括法が2000年4月から施行されています。憲法の地方自治の捉え方は、あくまでも国の補完的な役割という位置付けだと思います。それは例えば、「法律の範囲内で条例を制定…」(第94条)の文言に表れています。
ところが、「地方分権一括法」の制定により、「国から地方公共団体又は都道府県から市町村への事務・権限の移譲や、地方公共団体への義務付け・枠付けの緩和等」(百科事典マイペディアの解説より)が図られることになりました。そもそも、「地方分権一括法」の正式名称は「地方分権の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」です。ちなみに、教育課程編成権を地方に移譲する話がこの時にあったのですが、当時の文部省が抵抗して実現しませんでした。ですから、この法律によって、国と地方は教育分野を除いて、法的には対等な関係となったのです。
教育は本来、個別具体的なものです。すべての子供の個性に応じた教育を、その地域の実情に合わせて推進する責務が地方の自治体にあります。子供は集団の中で育つものです。集団から切り離す措置をした場合は、何らかの手当をする必要があります。
中国では医療や教育などにインターネットを利用する動きが急速に広まっています。中国では、コロナウイルスによる影響のため、新学期の開始が遅れたり、休校のままであったりということですが、現在1.8憶人の児童がオンラインによる授業を受けているそうです。そのシステムの運用が2月17日から中国全土で始まっていて、12の教科を無料で学習できるそうです。そのような教育環境の整備検討を考える時期だと思います。
時代は価値創造の時代へ/戦後の大愚策である学校統廃合を直ちにやめて、教育のデジタル化を推進すべし
令和の時代となっても、まだ工業生産社会の頃の発想で教育を考えている人たちがいます。データを分析すると、GDP(国内総生産)の中の製造業が占める割合は、約20%ですし、労働者の割合は16%です。もう製造業は、経済の中心ではないのです。日本はモノづくりで経済大国の地位を掴んだ栄光を忘れることができず、その幻影をいまだに抱いて物事を発想しています。
その発想の延長線上にあるのが、一斉授業と学校統廃合です。どちらも、工業社会時代の「遺物」です。データや知識、アイディアが価値をもつ時代です。個人の能力を育て、発揮できるような教育環境を整える必要があります。工業団地に人を詰め込むような発想で大規模な学校をつくる時代ではありません。
学校統廃合の文科省が言っている基準は「12~18クラス」(「学校教育法施行規則」)ですが、教育学的に何の根拠もありません。経費削減だけを考えて、「12-18」の数字を金科玉条のように掲げ、小規模校を絶命させ、地域を崩壊させる政策です。
小学校は100人位の規模にするというのが、先進国クラブであるOECDの常識です。ましてや、不登校、保健室登校、校長室登校、いじめ、教員のハレンチ事件などを考えれば、規模を縮小した方が、子供の実態に合わせたきめ細かい教育ができると思います。今回のようなウイルス騒ぎが今後あったとしても、規模が小さい方が、対応も素早くできますし、通学も楽な生徒が多くなるでしょう。
文部省の時代から、戦後一貫して学校統廃合が行われてきました。ただ、自治体によって、その受け止め方には温度差がありました。積極的に受け入れ、小学校を廃校処分にした地方ほど人口減が進んでいます。
沖縄県は大都市以外では唯一人口が増えている県ですが、沖縄県は「反中央」という気風もあって、総じて学校統廃合に抵抗してきた県です。そういう自治体だからこそ、地域の中に教育が根付き、伝統と文化が残り、人口も増えたと思っています。
大阪市は現在、学校統廃合と都構想ということで、学校をなくしたり、従来の地区割りを大幅に変更しようとしたりしています。そういうことをすると、地域から文化がなくなり、人が離れることになりますし、そういう時代ではありません。関係者の冷静な対応を期待します。
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