(この文章は3/27日に書きました)
目次
SDGsとは?
「コンパクトシティ」、「スマートシティ」の将来像
最近は「コンパクトシティ」とか「スマートシティ」というカタカナ言葉をよく目にするようになりました。カタカナ言葉を使って、インフラ整備をすれば、勝手に人が集まってきて、何かそれですべて上手くいくという錯覚をもっているようなところがあります。人間は一人で生きている訳ではなく、感情をもつ複雑な動物です。それを踏まえた街づくりをする必要があります。人間という視点が足りません。そのため、地に足が着いていない印象を持ちます。
実は、「コンパクトシティ」とか「スマートシティ」のような発想で今から50年前位から開発されたのが、「ニュータウン」構想です。団地族という言葉も生まれ、当時は最先端の核家族型のライフスタイルとして、脚光を浴びたものでした。
その代表的な「ニュータウン」の一つに多摩ニュータウンがあります。多摩市、八王子市、稲城市、町田市をまたいだ、およそ3000haという広大な敷地に集合団地が立ち並んでいます。この多摩ニュータウンへの入居は1971(昭和46)年から始まっています。仕事は都心、住居は郊外という、当時の人たちのあこがれの的となり、首都圏のベッドタウンとして大きく発展をしたのです。
「産経」は「50年で様相は一変」として、「全域の人口は令和元年度で前年比0.07%減の22万3948人。65歳以上の高齢化率は前年比0.5%増の24.4%で、東京都の平均22.6%を上回る。団地ごと高齢化したニュータウンは、いわば日本の縮図」(2020.3.23日付)と報じています。私自身、実際にこの多摩ニュータウンに住んでいますので、様子はよく分かります。多摩センターや南大沢といった駅周辺は賑わっていますが、団地内の商店街は半分位はシャッターで閉じてしまっているような状況で、余り活気が無くなっています。このような住宅団地は全国に3000位あり、その約半数は三大都市圏に立地しています。
住みたい街ランキング、何かあれば激しく上下動する
「日経」が「『住みたい街』の条件とは」(2020.3.26日付)の記事を掲載しています。記事が書かれた一番の動機は、「住みたい街ランキング」でタワーマンションが林立する武蔵小杉が、昨年の9位から20位に大きくランキングを下げたことにあると思っています。
ランキングの下降に大きく影響をしたのは、2019年10月の台風によってある1棟のタワーマンションが浸水被害を受け、長期間にわたって停電・断水ということがあったためです。ただ、その前段階として「同ランキングで武蔵小杉は16年に4位だったが、18年には6位、19年に9位と少しずつ順位を下げていた」ということと、人口増で通勤ラッシュが激しくなったことや、待機児童問題の深刻化ということがあったのです。
そのような激しいランキングの移動ということを考えると、都市住民は極めて移り気だということです。もともと、利便性だけを求めて、移民感覚でどこかから移り住んできた住民なので、何かそれを否定するようなことが起こると、根なし草の本性が出てしまうということなのでしょう。
街づくりとは、文化をつくって、人をつくること。そしてそれを応援する企業を探すこと
全国共通の街づくりというのは、ありません。なぜならば、それぞれの地方の伝統と文化、住民の地域への愛着度が違うからです。人間と同じで、それぞれ地方の持っている顔が違いますので、その地方の実情に合わせたグランドデザインを描く必要があるのです。
SDGsが掲げる持続発展都市を実現するためには、何か新しい施設を作るとか、インフラ整備をして利便性を高めること以上に、その地方の伝統や文化を掘り起こし、教育を立て直して、それを定着させる活動を行政が音頭を取って行うことです。
そもそも地方都市の問題は人口減少や高齢化の進展など、ほぼそういった問題を共通して抱えています。となれば、財政問題が大きなネックになります。必然的に、企業の誘致そして協力ということを考える必要があるのではないでしょうか。
日本の場合は、大企業の本社は東京、大阪といった大都市に置くのが一つの常識みたいになっていますが、世界をみると大企業でも驚くほど田舎に本社を置いている場合もあるのです。例えば、世界屈指のスポーツ用品メーカーのアディダスの本社は人口約2万3千人のヘルツォーゲンアウラッハにあります。アディダスの掲げる「ワーク・ライフ・インテグレーション」(WLI)という考え方に基づいて、広大な本社の敷地には、テニスやバスケ、サッカー、ボルダリング場から白砂を敷き詰めたビーチバレー場まであり、まるでスポーツ公園という感じとのこと。
(アディダス本社)
インテグレーションというのは、融合の意味です。仕事と私生活を融合するような働き方スタイルを推進しています。実は、アディダスのライバルであるプーマもこの小さな田舎街に本社を構えているのです。こういった企業文化と地方文化がマッチングできれば、共存共栄の関係を維持できれば、持続発展することも可能です 。
(プーマ本社)
「故郷に錦を飾る」という言葉があります。地域復興を一つの恩返しと考えて、自分の生まれ故郷で起業をするとか、支店を出す、本社機能を移すなど考えていただきたいと思います。テレワークの時代です。都心でなければいけないという必然性もなくなりつつあると思います。
要は、物事をどのように考えるかということだと思います。地方にいけば土地も安く、生活もしやすいでしょう。地方には歴史に裏打ちされた伝統、行事、価値観というものが必ずあります。そういうものを依拠した企業活動をすれば、「おらがまちの企業」として住民に愛されることでしょう。そうなれば、企業にとっても街にとっても、目に見えない大きな支えの中で発展することもできると思います。
それは、SDGsが掲げる持続可能な発展都市のあり様(よう)にかなうのではないかと思います。
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