(この記事は2/5日に書いています)
人間には、2つのスイッチがあります。丹田(お腹にあるツボ)と目です。丹田のスイッチを入れるためには、お辞儀(礼)をすれば入りますし、スイッチが入れば背筋が伸びて体軸が真っすぐになります。字を書くにしても、スポーツをするにしても、そこからがスタートです。その形をまず子供たちに教えて、鉛筆や道具の正しい持ち方を教えます。
スポーツをする場合も理屈は同じです。「礼に入り、礼に終わる」という武道の教えは、すべてのスポーツに通じる教えだと思います。礼をすれば、丹田にスイッチが入るからです。
実は昨年こんなことがありました。体育大会の競技の中に、「クラス対抗綱引き」という種目がありました。担当している中学3年生の選抜クラスの生徒たちに、勝ちたいかと聞いたところ、もちろんという返事。ただ、普通クラスは殆どの生徒が運動部所属ですが、選抜クラスは半分程度なので、体力的には不利です。言う通りにすれば勝てるからと言って、彼らはこちらが教えた通りに当日実行したところ、参加7クラスのトーナメント戦を戦い抜いて、なんと優勝してしまったのです。
彼らに教えたことは、綱を持つ前に、相手チームに向かって目を見開いて「よろしくお願いします」と大きな声であいさつをし、その時にできるだけ丁寧にお辞儀をしなさいということを伝えたのです。半信半疑の者がいたので、少し教室内で練習をしてから本番に臨みました。
ただ、それだけですが、その一連の行為の中で、全員の身体に目と丹田のスイッチが入ったのです。相手チームには、スイッチが入っていません。体力の差がありながらも、1回戦敗退の予想を覆して、優勝してしまったのです。
勉強もスポーツも理屈は同じです。目と丹田のスイッチを入れることを最初に行います。特に丹田のスイッチが重要です。お辞儀をするか、軽くその場で2.3回ジャンプすれば丹田に力が入ります。そうすれば体軸が真っすぐになります。その上で走ったりボールを打ったりしてフォームを作ります。勉強のフォームも同じです。
フォームを作らないで、いきなり勉強をさせたり、スポーツをさせたりすると、効率が悪くなるだけです。勉強の場合、姿勢が崩れて長時間の勉強に耐えられなくなり、後々伸びません。スポーツの場合は、一にもニにもフォームが大事なのは言うまでもないことです。我流では、いくら練習しても伸びません。
「読み書きそろばん」ということを言います。立って声を出して読めば、自然に丹田に力が入り、失敗すると恥をかくので目を見開きます。見る行為から視る行為に移ります。ここで自然に2つのスイッチが入るので、次に、正しい姿勢で集中して書くことができるようになるし、計算もできるようになるという教えだと思います。今は、そろばんの時代ではない、という人がいますが、最後は電卓でもコンピューターでも数学の試験でも何でも良いのです。音読が基本というのは、こういうことだと思います。
そしてその次は、生活のフォームを子供たちに身に付けさせる必要があります。学校は時間と日程で動きます。家庭もそれに合わせて生活のリズムを作ってあげて、その子の生活のフォームを身に付けさせる必要があります。そのフォームを作るのは、結構大変ですが、年齢が上がれば上がる程困難さが増します。早期教育と言って、フォームを作る前に本格的に勉強をさせようとするご家庭がありますが、スポーツと同じで、まずきちんとしたフォームを子供たちと話し合う中で作っていく必要があります。
かつての時代は、比較的力のある教員を低学年に配して、そのような指導を行っていたと思います。今は、その辺りの指導ができていないと思います。
テニスで例えると、フォームを作らずにボールを打たせても、フォームができていないので余り上達せず、対外試合に出ても勝つことも出来ず、そのうち自信喪失となりテニスを諦めるというパターンです。どんなに素質があったとしても、最初にフォームを作ってあげないと上手くはなりません。
フォームの乱れは、鉛筆の持ち方、字の書き方やその形、書く時の姿勢に出ます。テニスが上手いか、そうでないかは、その打つフォームを見ただけで、ある程度分かります。同じ理屈です。
力量ある教員を養成して、低学年に配することが重要です。大学入試改革よりも、優先すべきことです。
読んで頂きありがとうございました。