「出生率が過去最低の1.20に下落したそうですね」
「まあ、ある意味では納得の数字なのかもしれませんね」
「どうしてですか?」
「対策が対策になっていませんし、そもそも政府もマスコミも、かつては人口増を抑えろと今から50年位前は言っていたんですよ。第一回人口会議が1974年に東京で開かれています。ご存じですか?」
「いえ、そういうことは知りませんでした。第一回があったということは、第二回もあったということですか?」
「第二回目からは、アジア人口会議になりました。そのうち知らない間に無くなりました」
「人口抑止から転換したのは、いつですか?」
「1990年に1.57ショックがあり、それをきっかけに少子化対策に乗り出します」
「ということは、少子化対策が叫ばれて、まだ30年位ということですね」
「抑止で動いていた流れを止めるために相当なエネルギーがかかります。それから少子化対策に向けて動き始めたというイメージでしょうか」
「中国と似ていますね。一人っ子政策をやめたからと言って、急に子供が増える訳ではありませんものね。少子化の問題はただでさえ難しい問題ですからね」
「そうですね、様々な問題が複合的に絡み合って生じている問題ですので、何か一つの対策を立てれば解決に向かうという訳ではありません」
「ただ、解決の糸口となることがあると思います。それをどのように考えておられますか?」
「鍵を握るのは地方再生だと思っています。地方再生と地方分権、そして少子化対策はすべてセットで考えないと上手くいかないでしょうね」
「その連立方程式を解くということでしょうか?」
「複雑に絡まった問題は、解決の糸口を見つけてから総合的な対策を立てるという発想で進めることです」
「ここからが本論です ↓ 表紙イラストは「www.ac-illust.com」提供です
」
俯瞰力のない国民であることの自覚を
人は自分の弱点を自覚することによって、自分の特徴を掴み、そこから努力して一段高いステージに自分を引き上げることができます。
農耕民族である日本人の最大の弱点は、俯瞰力が弱いということです。農耕民族は狩猟民族のように周りを見渡して生活する必要はなく、常に自分のテリトリーだけを見つめていれば食料を手に入れることができました。そういった基本的な生活行動の違いがDNAに刻み込まれ、それが俯瞰力の違い(弱さ)となって現れています。
そのため過去、何回も失敗を繰り返しています。俯瞰力がないため、他人の意見に左右されやすく、常に右往左往します。特殊詐欺に引っ掛かりやすいというのも、実はそういうところから来ています。人が良いという問題だけではないのです。
例えば、今話題になっている少子化ですが、つい50年前は、2040年頃には1億4千万まで人口が増えて大変だと言っていたのです――「われわれは、人口増加の勢いを阻止するための節度ある、しかも効果的な対策が必要である」、「”子供は二人まで”という国民的合意を得るよう努力すべきである」。第1回人口会議(1974)での発言です。子供は黙っていても増えるし、大きくなるという乱暴な発想が蔓延っていた時代です。ここに来て、国も政治家もマスコミも、ようやく「少子化」モードに入ったのです。
(「Yahoo!ニュース-Yahoo! JAPAN」)
少子化対策は地方再生とセットで考える
男性の育休を増やせとか、男性優遇社会を解消せよ、子供手当てを増やせ、経済を活性化させろなど、思い付くままに少子化解消のプランを世人は言っていますが、問題はそれ程単純なものではなく、3次元連立方程式を解くつもりで臨まないと解決できません。下のグラフを見ても分かるように、予算を増やしても関係なく少子化が進展しています。
感覚的に少子化を捉えるのではなく、歴史的、社会的、教育的な観点から少子化の原因についてアプローチをする必要があります。まず、歴史的に見ると、都市化の進展・地方の衰退と出生率の低下がほぼ同時進行形で起きています。
地方から都市への大きな流れが高度経済成長期を境に起こります。働く場所や進学先を求めての移動が起き始めます。地元の中核都市にその受け皿があれば、「小さな移動」で終わったのでしょうが、そこが整備されていない自治体は人口流出が起きました。偏差値の高い大学や大企業は大都市に集中し、卒業してそのまま都市部の企業に就職するというコースが出来てしまったのです。
(「産経新聞:産経ニュース」)
子供たちを地域に根付かせるための努力が必要
東京都の出生率は0.99。都市部に多く人が集まったからといって、そこで男女の出会いが保障されている訳ではありません。日本の場合は、婚外子が他国と比べて極端に低く(0.2%)、婚姻数を伸ばさない限り子供は増えません。
そして、その婚姻ですが、日本はお見合い文化の国として長き時を刻んだ国なので、地域に根を下ろして生活する人がどの程度いるかという状況にほぼ比例します。自治体によっては、それこそ「ゆりかごから墓場まで」地元で生活をしてもらうため、保育園から大学、そして働く場所までを整備した所もあると思います。
日本人の意識としては、国民というより、「邦人」という意識の方が強いと思います。その意識に立脚した故郷づくりを子供たちを巻き込んで計画的に行うべきだと思います。地域の状況によっては、小学生に英語を教えるより、地場産業のことや方言を教えることを優先するくらいの柔軟さがあって良いと思います。日本の中で出生率が一番高いのが沖縄ですが、小学校のうちから方言教育をしています。そういう地道な努力が若者を故郷に惹きつける力になるのです。地元に愛着を持たせるような教育を意識的に行う時代です。
(「沖縄市文化協会」)
読んでいただきありがとうございました。
よろしければ「ブログ村」のクリックをお願いします。
↓